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適性ゼロの魔法勇者

風見鳩

第12話 ハルの策士

 それからというものの、俺は普通に学園生活を過ごしていた。

 リリヤは『中級魔法全てを無読詠唱出来る一年生がいる』とのことで、『天才』として魔法学科内では超有名人になっていた。
 しかし、噂ってのはすぐに広まるもんだな……数日で上級生にも知れ渡るとは。


 それに、ユアンは相当な腕らしいこともわかった。

 そりゃそうか。
 リリヤが凄すぎて印象が薄れているものの、一年生の時点で中級魔法を超短読詠唱出来るなんて優秀なのだから。


 あと、よくユアンと一緒に行動している青髪の少女。
 あの子の名前は『ルミ』だそうだ。

 聞いたところによると、カルパスク家と同じくベルンヘルト家と親しい関係である『ルクネス』という一族の娘らしい。
 身体中に特徴的なタトゥーをしているのがその証だそうだ。

 ガドラでさえ知ってることらしいが、そんなことに微塵も興味が沸かなかった俺とリリヤは初耳だった。

 そしてルミも同じく中級魔法を超短読詠唱出来るほど、優秀な成績を残している。
 しかし、あまり表情を顔に出さないところはリリヤに似てるよな……。


 ああ、そうそうガドラについても少し。
 体格からわかっていたことだが……あいつも俺と同じく実践向きで、魔法面の成績は平均の下くらいだ。

 ルームメイトだというのにまだ口数は少ないが……まあいい奴だ。
 たまに滲み出る優しさから、そう断言できる。


 え、俺はどうなのかって?

 俺はいつも通りとだけ報告しておこう。
 リリヤくらいに有名な『適性ゼロ』って呼ばれてな。

 まあ何一つ短読詠唱が出来ない時点で、そう呼ばれても仕方がないだろう。

 ガドラは未だあまり絡んできてくれないが……俺たち四人は、本当になんの事件も起きず、平穏に学園生活を半年くらい普通に仲良く過ごしていたのだった。


 もし何かの事件が起こったとすれば、俺たち五人が仲良くし始めたあの出来事だろう。

 あれは、俺とリリヤが特訓を始めてから数日後のことだった。


 * * *


「授業簡単すぎ。もっと難しくしていいのに」

 と、ため息とともに一年生全員を敵に回すかのような発言をするのはリリヤ。
 今日の授業は全て終わりとなり、放課後となって二人で裏庭へ向かっているところだった。

「簡単とか言うけどな、リリヤ。お前ぐらいだったぞ、先生より速く魔法を撃てた奴は」

 今日の授業内容は『魔法をどれだけ速く撃てるか』だったのだが、毎日訓練している挙句に無読詠唱できるリリヤは他の奴らに比べて飛び抜けていたと言えよう。

 あ、いや、ユアンもなかなか速かったな……あとあの青髪の少女も。

「……もっと実践的な授業をしたい」

 お前は戦闘狂か。

「もっと実践的な授業をして、ハルを認めさせたい」
「…………」

 どうやら自分が戦いたいからという理由ではなかったらしい。

「……あのな、俺は自分を認めさせたくてこの学校に来たわけじゃないからな?」

 気持ちはすごく嬉しいが。
 別に俺としては、どう言われようが知ったことじゃないし。

「それより、今日も特訓するぞ」
「……うん」

 黒ローブを脱いでYシャツとズボンだけの格好になると、リリヤは頷く。

 ところで思っていたんだが……。

「お前、特訓している時もローブつけてるよな? 邪魔じゃないのか?」

 俺はどうも動きづらいので脱いでいるのに……そういえばリリヤが脱いだ姿を見たことがない。

「私も脱ぎたいのは山々なんだけど……」

 リリヤはバサリとローブを広げる。

 ローブの中は俺と同じ白いYシャツと、膝丈より短いスカート姿だ。

 その瞬間。

「あっ……!」

 なんという偶然か。

 リリヤがローブを広げた瞬間に一陣の風が吹き荒れたのだ。

 その風はリリヤのスカートを仰ぎ、思いっきり上へ持ち上げその下に履いている白い下着が露となる。


 その結果、まるでリリヤが俺に下着を見せつけているような構図が出来上がってしまった。

「……なるほどな、だからローブをつけたまま特訓するんだな」

 今、起こったことが起こらないように。

 リリヤは慌ててローブで身体を隠すと、頬を赤らめて俺の方を睨む。

「……ハルの策士」
「いや、何故そうなる」
「タイミングを合わせて私にローブを脱がせて、その瞬間に風を吹かせるとは……」
「俺は風の使いか何かかよ」

 まあ魔法を使えば出来なくはなさそうだが……生憎、俺は無読詠唱なんて出来ないからな。

「でも、見たでしょ?」
「……くだらないこと言ってないで、さっさと行くぞ」

 これ以上は何を言っても仕方ないと思ったので、リリヤの言葉を無視して行こうとする。

「──ま、待って!」

 そんな俺を引き止めたのはリリヤではなかった。

 いや最初はてっきりリリヤかと思って無視しようと考えたのだが、いつもより声質が違うことに違和感を覚えてリリヤではないと判断したわけだが。

 振り返ってみると、タトゥーをした青髪の少女が息を切らしていた。

「あれ、お前は確か……どうした?」

 確かユアンといつも一緒にいる子だ。
 今日はどうやらユアンはいないらしいが……。

 青髪の少女は振り絞るように、涙目になりながら俺たちに言った。

「ユアンを、助けて!」

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