クチナシ魔術師は詠わない
疑惑のシルバ
4クラス全員が教室に集まり、全ての視線が教卓にいる僕へ向けられていた。
教卓の上に置いてあるのは一つのローブ。4クラスの生徒のものであり、僕が何者かにぶつかった際に拾い上げたのだ。
「なんでこんなことをした」
しかし、人間というものは誤解を生む。
よって現在、僕はこの前から連続して悪戯している犯人とされている。
怒り、悲しみ、困惑……様々な視線が僕を見ているけど。
……まあ、怒ってるんだろうな、みんな。
「今までなんでこんなことをしてたって……訊いてんだよ!」
と、ローブを盗まれた男子とその他2、3人の男子が僕に詰め寄ってくる。
「ま、待ってください! シルバくんはそんなことをする人じゃありません!」
そんな連中に反論するのがラフィだ。
僕が無実だということを主張してくれる気持ちは嬉しいが……残念ながら、現状では何も解決しない。
「じゃあ、なんでこいつは俺のローブを持ってたんだ?」
「そ、それは」
「あの時、こいつが盗んでなかったって証明……お前に出来るのか?」
これは駄目だ。
あの時、僕は一人だった。ラフィやカイルが隣にいてくれたわけじゃない。
つまり、今の僕に証明できるものがないのだ。
「そんな証明、出来るわけねえだろ」
黙ってしまったラフィの代わりに、今度はカイルが反論してきた。
「もしシルバが俺とラフィの三人で廊下を歩いていた、というアリバイがあるとする。だが、これは俺ら三人だけの証明であり、三人ともグルになって口裏を合わせている可能性だってあるだろうが」
ああ、確かに。それなら証明なんてあったもんじゃない。
カイルはめんどくさそうに頭をかき、僕の前にいる連中に鋭い視線を向ける。
「ちなみに、それはお前らにも言えることだからな?」
「なに?」
「犯人をシルバになすりつけたいが為に、ローブをわざと盗ませた。で、協力者がこいつの前にローブを落とせば終わりだ」
「てめえ……わざと盗まさせるとか、ふざけてんのか!」
「ふざけてんのはそっちだろうが! そういうことを今、こいつに言ってるんだよ、てめえらは!」
ちょ、ちょっと。
ヒートアップしたカイルが机を蹴り倒す。
「証拠は他にもある! こいつだけ何もされてないこと、俺は知ってるんだよ!」
「わ、私も何もされていません! シルバくんだけじゃないです!」
「そんなくだらないことが証拠になるか!」
「じゃあ、どうしろっていうんだ! こんなんじゃ、いつまで経っても犯人なんて捕まらないだろ!」
容疑者であるはずの僕を置いて、口喧嘩が勃発する。
しかしこの状況は──どうもおかしい。
今までやってきた犯人の狙いが、僕に全てをなすりつける為だったとしよう。
でも、今までの行為の中で僕に出来そうにない……つまり目撃者がいるということがいくつもあった。その矛盾に気が付いた人は指摘し、僕が犯人じゃないのではないかと思う人だっているはずだ。
となると、カイルやラフィがいなくても今の状況になっていたということである。
それに僕を犯人に仕立て上げたいのなら、モノを盗んだりする行為は一度だけの方が手っ取り早い。これじゃあ、僕が犯人かそうでないかでこじれるばかりだ。
なら、どうして犯人はこんな面倒な方法を──
ふと……あることに気が付く。
そういえば、「何もされなかった人」というのは僕以外に誰がいるんだ?
僕はともかく、なんでその人には何も──
「おいっ!」
と、盗まれた男子が僕を胸ぐらを掴んでくる。
「てめえも他人面してんじゃねえぞ! 今んとこじゃ、一番怪しいんだからな!」
どうして怪しいだなんて言えるのか……と反論したいところだけど、喋れない。
だって僕は──
「黙ってないで……何か言ったらどうなんだよ『口なし』っ!」
「──っ!!」
瞬間。
ラフィの眉がぴくりと動いたのを、僕は見逃さなかった。
が、その前に手は打ってある。
パンッ──!
風魔法を応用した破裂音が教室内に響き渡った。
そのあまりの音の大きさに、全員がびくりと肩を鳴らす。
一瞬の静けさを打ち破ったのは一人の女性だ。
「……授業、始めたいんだが?」
さっきから教室の入り口に立っていたユキリア先生が、全員を一瞥してそう言った。
男は仕方なく、僕の胸ぐらから手を離す。
こうして荒れに荒れた僕の尋問は終了した。
教卓の上に置いてあるのは一つのローブ。4クラスの生徒のものであり、僕が何者かにぶつかった際に拾い上げたのだ。
「なんでこんなことをした」
しかし、人間というものは誤解を生む。
よって現在、僕はこの前から連続して悪戯している犯人とされている。
怒り、悲しみ、困惑……様々な視線が僕を見ているけど。
……まあ、怒ってるんだろうな、みんな。
「今までなんでこんなことをしてたって……訊いてんだよ!」
と、ローブを盗まれた男子とその他2、3人の男子が僕に詰め寄ってくる。
「ま、待ってください! シルバくんはそんなことをする人じゃありません!」
そんな連中に反論するのがラフィだ。
僕が無実だということを主張してくれる気持ちは嬉しいが……残念ながら、現状では何も解決しない。
「じゃあ、なんでこいつは俺のローブを持ってたんだ?」
「そ、それは」
「あの時、こいつが盗んでなかったって証明……お前に出来るのか?」
これは駄目だ。
あの時、僕は一人だった。ラフィやカイルが隣にいてくれたわけじゃない。
つまり、今の僕に証明できるものがないのだ。
「そんな証明、出来るわけねえだろ」
黙ってしまったラフィの代わりに、今度はカイルが反論してきた。
「もしシルバが俺とラフィの三人で廊下を歩いていた、というアリバイがあるとする。だが、これは俺ら三人だけの証明であり、三人ともグルになって口裏を合わせている可能性だってあるだろうが」
ああ、確かに。それなら証明なんてあったもんじゃない。
カイルはめんどくさそうに頭をかき、僕の前にいる連中に鋭い視線を向ける。
「ちなみに、それはお前らにも言えることだからな?」
「なに?」
「犯人をシルバになすりつけたいが為に、ローブをわざと盗ませた。で、協力者がこいつの前にローブを落とせば終わりだ」
「てめえ……わざと盗まさせるとか、ふざけてんのか!」
「ふざけてんのはそっちだろうが! そういうことを今、こいつに言ってるんだよ、てめえらは!」
ちょ、ちょっと。
ヒートアップしたカイルが机を蹴り倒す。
「証拠は他にもある! こいつだけ何もされてないこと、俺は知ってるんだよ!」
「わ、私も何もされていません! シルバくんだけじゃないです!」
「そんなくだらないことが証拠になるか!」
「じゃあ、どうしろっていうんだ! こんなんじゃ、いつまで経っても犯人なんて捕まらないだろ!」
容疑者であるはずの僕を置いて、口喧嘩が勃発する。
しかしこの状況は──どうもおかしい。
今までやってきた犯人の狙いが、僕に全てをなすりつける為だったとしよう。
でも、今までの行為の中で僕に出来そうにない……つまり目撃者がいるということがいくつもあった。その矛盾に気が付いた人は指摘し、僕が犯人じゃないのではないかと思う人だっているはずだ。
となると、カイルやラフィがいなくても今の状況になっていたということである。
それに僕を犯人に仕立て上げたいのなら、モノを盗んだりする行為は一度だけの方が手っ取り早い。これじゃあ、僕が犯人かそうでないかでこじれるばかりだ。
なら、どうして犯人はこんな面倒な方法を──
ふと……あることに気が付く。
そういえば、「何もされなかった人」というのは僕以外に誰がいるんだ?
僕はともかく、なんでその人には何も──
「おいっ!」
と、盗まれた男子が僕を胸ぐらを掴んでくる。
「てめえも他人面してんじゃねえぞ! 今んとこじゃ、一番怪しいんだからな!」
どうして怪しいだなんて言えるのか……と反論したいところだけど、喋れない。
だって僕は──
「黙ってないで……何か言ったらどうなんだよ『口なし』っ!」
「──っ!!」
瞬間。
ラフィの眉がぴくりと動いたのを、僕は見逃さなかった。
が、その前に手は打ってある。
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