恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜

うみたけ

1番大切なもの

「り、理事長!?」

 予想外の人物の登場に、酒々井も、周りの生徒達も、そして隣にいる習志野も、みんな目を見開き驚愕の表情を浮かべている。

「すみません、理事長。わざわざ足を運んでいただいて」
「ふっ、自分でワシにお願いしておきながら良く言うわ」

 驚いていないのは、事前に学園のトップである彼の登場を知っていた者だけ。
 彼を呼んだ張本人である俺と、俺が彼と交渉していたことを知っていた大井先生、葛西の3人だけだ。

「酒々井、一応言っておくが、俺は反則なんてしてない」
「でも――」
「だが、お前の言いたいことはよく分かる」

 食い下がろうとする酒々井の言葉を遮り、俺は説明を続ける。

「酒々井、お前は確かに全生徒の過半数のポイントを集めていた。そして、この時点で残りの生徒からどれだけ集めようが、俺の負けは確定していた。――生徒からしかポイントを集められないならな」
「!!」

 “生徒からしか”という部分で何が起きたのかおおよそ理解したのか、酒々井は信じられないといった目を向ける。

「ま、まさか…理事長から…?」
「ああ、そうじゃ。ワシがこの小僧にポイントを渡した」

 驚きを隠せない様子で確認を取る酒々井に、理事長は何事もないような声色で答える。
 先生からポイントを貰うという策は随分前からどこかで使えないか、とは考えていた。
 ――まぁ、市川・葛西と対決した時に、葛西が前例を作ったおかげで、校則違反にはならないことも証明済みだったしな。
 それでも、今回の勝負で使うのは大きな賭けだった。

「本当なら担任の大井先生とか身近な先生から貰いたかったんだが、今回はポイント数がデカ過ぎたからな…」

 中間発表が終わった段階でその差約一万点。
 そして、最終的にはその差は倍以上になることも予想できていた。
 二万~三万ポイントを一気に動かせる人物なんて恐らく一人しかいないだろう。

「それで中間発表が終わった後、ずっと理事長のところに行ってたんですか?」
「ああ。正直この爺さんの説得は苦労したぜ…」

 習志野の質問に、ふと理事長との交渉を思い出して苦笑がこぼれる。

「ほほっ、当たり前じゃ。生半可な条件じゃ1ポイントたりとも渡せんからな」

 理事長の軽い感じの口調に、どこか酒々井や葛西と似た物を感じる。

「そう言えば、辰巳君。よくこの人を説得できたよね?」

 ふと目が合った葛西が疑問を投げかけてきた。

「そうだ!理事長はそう簡単に交渉事で折れる人じゃない!」

 珍しく酒々井が声を荒げる。
 そして、そんな酒々井に俺は不敵に笑い、

「まぁ、酒々井。それについてはお前のおかげでもあるんだけどな」
「…どういうことだい?」

 俺の言葉に表情を険しくしながらも、何とか冷静さを取り戻そうとしている。

「お前と理事長の関係性だよ。理事長はお前のことを随分煙たがってたみたいだったからな」
「……それで?いくらこの爺さんが僕のことを嫌ってて邪魔だと思ってたとしても、それだけで君に大量のポイントを渡すとは思えないんだけど?」

 酒々井は一瞬、キッと理事長と俺を睨みつけながらも何とか冷静さは保っている様子。

「ああ、お前の言うとおりだ。理事長は好き嫌いだけで部下を追い出すような単純な人間じゃなかった。――ましてや、“自分が最も評価する人間”を追い出すために生徒にポイントを支払うなんてあり得ない」
「……“最も評価する人間”?」

 酒々井は目を大きく見開き、理事長を見上げる。

「ほほっ、まぁ、性格的には大っ嫌いなんじゃがな」

 理事長はそう言って、笑う。

『奴は全くワシの指示通りに動かんし、少し隙を見せると追い落とそうとしてくる。さらに今回のようなトラブルまで持ち込んでくるような訳あり物件じゃ。――しかし、それらリスクを考慮してもあまりある利益をもたらす、有能な人材じゃ。例えどれだけ腹が立とうが、酒々井を学園から追い出したいとは思わんな』

 俺は、交渉中、「酒々井を追い出したいと思ったことはないんですか?」と聞いた時の返答を思い出していた。
 理事長が酒々井のことをどれだけ嫌いで、どれだけ煩わしく思っているかは交渉中嫌でも伝わってきた。
 ――まぁ、理事長である自分さえも蹴落とそうとする上に、こんな性格だ。嫌われるのも当然だろ。
 しかし、それ以上に、この老人は酒々井の有能さを評価していた。

「本当に、この爺さんが煩わしい人間を追い出すことに躍起になるような単純な人間だったら、どれだけ楽だったか…」
「ほほっ、残念じゃったな」

 皮肉交じりに苦笑を浮かべる俺に、理事長はしてやったりといった表情で笑う。
 好き嫌いに関わらず、優秀な人間を評価する…。
 そんな人間との交渉はやはり一筋縄ではいかなかった。
 しかし……

「ま、こんな人間だからこそ、有効なカードもあるんだけどな」
「”有効なカード”だと…?」

 ニヤリと笑う俺に対し、目を細め、鋭く睨みつける酒々井。

「酒々井、お前の進路の決定権。――俺は”これ”をポイントの交換条件として差し出した」
「なっ!?」

 この勝負の勝者に与えられていた特典の一つ――”相手の進路を決める権利”。
 酒々井本人は俺への挑発と面白半分で付けたつもりなのだろうが、今回は実にこれが役に立った。
 特に、自分を追い落とそうとする酒々井を誰よりも煩わしく思いながらも、誰よりも酒々井秀という人材を評価する理事長にとっては……。

「この権利があれば勿論、お前を理事から外すこともできるし、学校から追い出すこともできる。――逆に、自分の後継者にすることも、な」
「!!」

 追い出すには惜しい人材だが、好きにさせておくと危険…。
 確かにそんな悩みを抱えている理事長にとって、酒々井を制御するという意味でも、この権利は魅力的だったことだろう。
 だが、それ以上に、理事長は、万が一酒々井のことを嫌う他の理事にこの権利が渡った場合のことを危惧していた。
 もし、他の理事がこの権利を手にすれば、酒々井を追い出すに決まっている。

『あなたがこの権利を受け取ってくれないなら、俺は他の理事に打診しに行かなくちゃいけない』

 さり気なくそのことを示唆すると、思った通り、理事長はこの条件に食いついてくれた。
 だが…

「だが、残念ながらこの欲深な老人を納得させるにはこれだけでは足りなかった」
「ま、当然じゃな」

 この権利の譲渡だけでは1万ポイントがせいぜいといったところだった。
 ――そもそも、酒々井を勝たせれば”この権利”が使われることはない。首を縦に振らないのも当然と言えば当然だろう。
 理事長から更なるポイントの譲渡を引きだすためには条件の上積みが必要。
 だから俺は……入学前に思い描いた自分の将来を諦めた。――それ以上に大切なものを守るために…。
 俺の最後の交渉カード…。
 それは……

「最後の手段として、俺は、俺自身の将来を売った。――俺は卒業後、この学校で働くことになる」
「「「!!」」」

 俺の言葉に、理事長以外の生徒達がざわつく。
 その中でも、俺が常々「将来は働かずに楽して暮らしたい」と言っているのを知っている葛西と習志野は特に驚いている。

「…どういうことだい?」
「どうもこうも、言葉通りの意味だよ。――貰ったポイントの分は卒業後、ここで働いて返すって言ったら3万ポイントくれた。それだけだ」

 簡単に言えば給料の前借のような物だ。
 まぁ、俺のここまでの学校成績とか理事長の性格とか…いろいろなことが前提となって始めて効果を持つカードだが、どうやら上手く使えたらしい。

「まぁ、この小僧がそれなりに優秀だということは分かっておったし、何より、この小僧を『面白い!』と思ってしまった。不覚にも『欲しい!』思わせられてしまったわ」

 どうやら理事長は俺を雇うことによる利益よりも、一個人として俺の人間性に興味を持って条件を飲んだらしい。
 こういうところは酒々井と似たところを感じる……。

「できるだけ楽な仕事にしてくれよ?」
「ほほっ、しっかりこき使ってやるから、せいぜい覚悟しとくんじゃな」
「おい……」

 俺と理事長がそんな冗談交じりなやり取りをする中、

「認めない…こんな結果、僕は絶対に認めない!」

 再び酒々井が取り乱し、声を荒げる。

「なに”自分の夢を捨ててこの勝負に懸けました”みたいな言い方してんだよ!ただ、真っ当に働くことになっただけじゃないか!!」

酒々井の咆哮は止まらない。

「そもそも、君は最初、習志野さんを見捨てようとしてたじゃないか!そんな奴が習志野さんを幸せにできるわけがない!!僕の方が習志野さんを大切にできる!僕といた方が習志野さんも幸せに決まってる!!――習志野さんのパートナーに相応しいのは僕だ!!」

 場は静まり、全て言い切った酒々井は息を乱しながら、俺を睨み付けている。

(なるほど…。こいつが俺に絡んでくる理由がようやく分かった)

「言いたいことはそれだけか?」
「…は?何を言ってーー」
「他に言いたいことがないなら、今度は俺から言わして――」
「酒々井君!」

 俺が酒々井の言葉を遮り、喋ろうとするが、
 今度は俺の言葉が一人の少女に遮られた。

「習志野、ここは俺が――」
「いいえ、ここは…ここだけは、私に言わせて下さい」

 そこには、強い決意の籠った目をした、習志野が立っていた。

「…まぁ、お前の好きにしろよ」
「ありがとうございます」

 俺に笑顔で礼を言うと、習志野は酒々井の下へと歩いていき、

「習志野さん…」
「ごめんなさい!」

 酒々井の言葉を待つことなくいきなり頭を下げた。

「その、酒々井君の気持ち、正直嬉しいです。それに、酒々井君とペアになって結婚した方が客観的には幸せだと思います」
「それじゃあ――」
「でも、やっぱり私はたっくんのことが好きなんです」

 酒々井の言葉を遮り、習志野ははにかんだ笑顔で告げる。
 それを隣で聞かされ、一人顔を熱くさせている俺。

「面倒くさがりなところも、普段は適当にあしらってくるところも、たまに本気で照れてるところも、そして、なんだかんだ言って最後には助けに来てくれるところも、良いところも悪いところも全部大好きです。」

 習志野の独白はさらに続く。

「別にいい暮らしができなくても、毎日可愛がってくれなくても、他人から幸せに見られなくてもいいんです。――だって、私はたっくんと一緒にいる時が一番幸せなんですから」

 そう言って、習志野は俺に笑いかけてきた。
 はにかむ彼女を直視できず、思わず俺は目をそらす……。
 ――ホントに熱い……。マジで顔に体中の血が集まってるんじゃねぇの!?
 しかし、習志野は、そんな俺の反応に苦笑しつつ、すぐに酒々井の方へと向き直る。
 そして……

「だから…酒々井君、あなたと一緒になっても、私は幸せにはなれません。ごめんなさい」
「そんな……」

 力なく崩れ落ち、うなだれる酒々井。
 そんな酒々井を習志野は申し訳なさそうに見つめている。
 俺自身も、その光景を見て改めて気持ちを切り替える。

(習志野は自分にできることをしっかりやってくれた。あとは俺の役割だ)

 俺はそんな習志野の肩をポンと叩くと、

「酒々井、今回勝負してみて、お前が俺より劣ってた部分を教えてやるよ」
「……」

 無言のまま何も反応しない酒々井。
 俺は、それでもお構いなく話続ける。

「酒々井、癪なことだが、俺は、俺とお前は似てると思ってる」

 尚、項垂れ、無言を貫く酒々井。

「特に、“これ”と決めたものに対しては、あらゆる手段を駆使して勝ち取り、守ろうとするところとかな」

 そして、語りかける俺に、ようやく酒々井は少しだけ顔をこちらに向けた。

「今回も同じだ。最初こそ違っていたが、最終的には二人とも『習志野とのペアの座』を第一に考えていた。――そして、過程はどうあれ、結果は俺の勝ち」
「……何が言いたい?」
「つまり、他のことは分からんが、『習志野のためにがむしゃらになれる』って意味においては、俺の方が上だったってことだ」
「そんなわけ――」
「じゃあ、なんでお前は中間発表が終わった後、ほとんど何もしなかったんだ?」
「!!」

 俺の追及に酒々井は目を見開く。

「確かに、中間発表が終わった時点で、“普通に考えれば”お前の勝ちは決まっていた。だが、お前はギリギリまで自分のポイントを隠すこと以外、何か行動したか?」
「……」
「俺が自分が持っている物を捨てて交渉している時、お前は何もしてなかったんじゃないのか?」
「……」

 何も言い返さず、ただ無言で俯く酒々井に、俺はさらに言い続ける。

「中間発表での俺の様子を見れば、“何かある”と思うのが普通だ。絶対勝ったという確信があったんだろうが、それでも習志野が本当に“絶対に譲れないもの”だっていうなら念には念を入れておくはずだろ?少なくとも、俺が逆の立場ならそうするね」

 俺の言葉に悔しそうに唇を噛む酒々井…。

「確かに俺は頭の良さでも機転の利いた発想でも、交渉力でも、人心掌握術でも、お前に劣ってる。――だけど、“習志野に対するがむしゃらさ”だけは俺の方が上だった。俺がお前に勝てた要因はそれだけだ」

そして、俺は酒々井の前でしゃがみ、目を合わせて力強く宣言する。

「だからこそ、俺はこの“習志野に関することへのがむしゃらさ”だけは、これから先誰にも負けるつもりはねぇ!」

 酒々井は何も言わず、しばらく俺の方をじっと見据えていた。
 無言のまま見つめ合う俺と酒々井…。
 しかし、やがて、酒々井はふっと小さく笑うと、

「なるほどね。自分では習志野さんへの気持ちは負けてないつもりだったんだけどな……」

 一人、自嘲気味に呟く。

「氷室。もし君が習志野さんを悲しませるようなことがあれば……僕は君を殺すからね?」

 そして、俺の目を鋭く見据え、真剣な口調で言い放つ。

「ああ、肝に銘じておくよ」

 そして、互いに小さく笑いあった。

(ったく…ホントとんでもねぇのと同じ奴を好きになっちまったな……)

 俺は目の前の男を見て、思わず心の中で苦笑する。

「たっくん……」

 ふと、酒々井とのやり取りが一段落したところで、習志野が声をかけてきた。
 俺が習志野の下へ行くと、彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべながら

「たっくん…本当にこれで良かったんですか?わ、私を選んでくださったのは嬉しいんですが……。その、たっくんはここまで自分の将来のために頑張ってきたのに…」

 遠慮がちに、そして泣きだしそうな声で問いかけてきた。
 恐らく俺がいろいろと犠牲にしてまで自分を選んだことに罪悪感を感じているのだろう。
 そんな習志野を見て、俺は優しく彼女を抱き寄せる。

「いいんだよ。俺はこれで満足だ」
「でも…私のせいで…」

 涙を浮かべて謝ろうとする習志野に、俺は本心で答える。
 確かに、俺はここまで“主席で卒業して将来楽する”という野望のためなりふり構わず戦ってきた。
 しかし今回の勝負で、俺はそれらを全て捨て、さらに卒業後この学校で働くことも決定した。

 だが、俺はその決断に全く後悔はしていない。
――だって、”一番欲しいもの”は手に入れたのだから……。

「お前のせいじゃねぇ。お前のおかげだ。――俺はお前のおかげで自分が一番大切にすべきものに気付けた」
「”自分が一番大切にすべき物”…ですか?」

 俺はそんな習志野にさらに語りかける。
 ふと、“自分の一番大切にするべき物”というワードに反応し、俺の腕の中から泣き顔を出し、首を傾げ見上げる習志野。
 ……どうやら俺の言いたいことが理解できていないらしい。
 ――こいつ、さっき俺が酒々井に言ってたことから察しろよ……。

「お前のことだよ。……言わせんな、恥ずかしい!」

 恥ずかしさを誤魔化すように、俺は顔を反らす。
 自分でも顔が熱くなっているのがよく分かる。恐らく顔は真っ赤になっていることだろう。
 そして、一瞬固まっていた習志野だったが、すぐに言葉の意味を理解し、彼女もまた目を反らして顔を赤らめる。
 二人の間に沈黙が流れる。

「おやおや、二人ともお熱いねぇ。みんなが見てる前だっていうのに、見せつけてくれるじゃん」
「なっ!!」
「っ!」

 葛西の茶化しに、我に帰った俺達は、お互いに慌てて離れる。
 周囲に目を向けると、皆ニヤニヤしながらこちらを見ている。

「あれぇ?離れちゃうの?別に僕は気にしないのに~」
「黙れ」

 恥ずかしさもあってか、葛西のテンションがいつも以上にイラッとくる。
 こいつの人をイラつかせる才能は尋常じゃないな…。

「あ、あの…たっくん…」

 俺が目の前の男を殴りたい衝動を必死で抑えていると、
 習志野がモジモジしながら話しかけてきた。

「わ、私を選んでいただいて…その…ありがとうございます。えと、その…」

 習志野は頬を赤らめ、チラチラとこちらを見上げながらたどたどしく話す。

「どうした?もしかして俺とのペアは嫌だったか?」
「いえ!絶対そんなことありません!!」
「じゃあ、なんだよ?」

 はっきりとしない習志野に俺はいつも通りのテンションで問いかけ、

「わ、私を選んでいただいてありがとうございます!その、今までも、これからも、私はずっとたっくんのことが大好きです!!」

次の瞬間、唇に柔らかい感触があたった……。
場は一瞬、静まり返り…

「うおー!公開告白だー!公開キスだー!!」
「クソ―!俺も栞ちゃんに告白されたい!!」
「キャー!”今までも、これからもずっと大好きです”だって!!私も言われてみたい!!」

 あっという間に周りはお祭り騒ぎだ。生徒のほとんどが退学になり、騒ぐような人間は少ないはず だが、それでも残った大勢の生徒が大はしゃぎしている。
 そんな状況に、俺は思わず頭を抱える。

「す、すみません!な、なんか体が勝手にというか…その…」

 当事者の習志野はというと、自分がやらかしたことの恥ずかしさを実感し、周りを見渡しながらオドオド…。
 そんないつも通りの習志野に、思わず苦笑いがこぼれる。
 そして、俺は習志野の下へと歩み寄ると、

「習志野、改めて、これからもよろしくな」

 まっすぐ見つめながら、右手を差し出した。
 習志野は一瞬、俺の手をじっと見て固まっていたが、

「はい、こちらこそ!よろしくお願いしますね!!」

 満面の笑顔で握手に応じてくれた。
 確かに俺は当初の自分の意に反して労働せざるを得なくなった。
 しかし、そんな代償もこの笑顔を見れば安いものだと思えてしまう。

「以上を持って氷室対酒々井の生徒ポイント収集勝負を終了とする。――勝者、氷室辰巳!!」

 そして、大井先生による、最後の勝利宣告が体育館に響き渡り、こうして、俺の大勝負は笑顔で幕を閉じた。

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