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恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜

うみたけ

結果発表

「ねぇねぇ、秀君も一緒に遊ぼうよ!」

 幼少の頃、人付き合いが苦手だった僕は、友達がおらずほぼ一人で過ごしていた。
 そんな中、唯一話しかけてきてくれたのが習志野さんだった。

「別に僕と一緒に遊んでも楽しくないと思うよ。」「

 そんな彼女に対し、心の中では喜んでいるくせに照れ隠しにそっけなく振る舞う僕。
 しかし、そんな態度を取る僕に対して、

「そんなことないよ!私は秀君と一緒に遊ぶの楽しいよ」

 彼女は曇り一つない笑顔で答える。
 僕が彼女を好きになるのに、そう時間はかからなかった。
 しかし、僕はこの想いが決して届くことはないと分かっていた。
 なぜなら…

「たっくん、私卵焼き作れるようになったんだよ!どう?良いお嫁さんでしょ?」
「…いやいや、卵焼きが作れたところで家庭科の成績が多少良くなるくらいだから。『良いお嫁さん』の基準低すぎだから」
「う~…せっかくたっくんが好きな物作ったのに~…」

 僕は習志野さんの隣にいる男を見て、思わずイラッとしてしまう。
 氷室辰巳…。習志野さんの近所に住む同級生。
 子供のくせに性格がひねくれていて全く可愛気がない。
 しかし…習志野さんの好きな人が彼だということは一目で分かった。

「う~…絶対たっくんを惚れさせてやるんだから~!!」

 なぜこの男が彼女に好かれているのか分からない。
 そして、僕は決意した。
 氷室辰巳を打ち負かし、習志野さんを振り向かせてやる、と……。


※※※※

「…ん?」

 目を開けると、そこは見慣れた天井だった。

「夢か…。それにしてもあの頃の夢を見るなんて久しぶりだな…」

 僕は苦笑交じりに呟きながら、自分のベッドから起き上がる。

「ま、今日は仕方ないかな」

 確か小学生の頃の夢だろうか。
 長い間見ていなかったが、“今日”というタイミングということで納得した。
 なぜなら、今日は……

「そろそろ行くか…。いよいよ、小学生の頃の目標が達成できる」

 僕は長い間待ち望んだ瞬間を目前に控え、胸を高鳴らせながら決戦の場所へと向かった。


※※※※

「よし、全員揃ったようだな」

 僕の陣営、そして氷室の陣営を見渡し、今回の関係者が全員揃っていることを確認する。
 氷室のすぐ後ろには不安そうな表情を浮かべる習志野さんと先日僕を裏切った葛西君が…。
 そして、僕の陣営には…僕以外誰もいない。
 先日の中間発表で氷室達を裏切り、今は退学となっている市川さんには僕の隣で結果を見届けてもらおうと思ったが、審判である大井先生により却下されてしまった。

「氷室君、敗色濃厚のくせにやけに自信あり気だね?どうしたんだい?」
「別に何にもねぇよ。ただ、最後に勝つのは俺だ」

 自信満々に振る舞う氷室。
 それでも僕は自分の勝利を信じて疑わない。

 中間発表が終わった時点で26800対17890…。
 そして、一昨日、生徒端末で確認したところ33800対18400…。
 大差で僕がリードしている。
 昨日から最終結果発表の今現在までは生徒端末でのポイント確認ができなくなっているが、これだけの差を一日で逆転できるとは到底思えない。
 それに…

「まぁ、君が何を企んでいるのか知らないけど、淡い期待はしない方がいいと思うよ」

 僕は一昨日の時点から1万点ポイントを増やしている。
 そして――僕は、この時点で彼がどう足掻いたところで逆転出来ないことを知っている。

 僕のポイント、氷室のポイント、そしてその他の生徒のポイントを全て足すと、8万5千ポイント程度。
 ――つまり、僕は全生徒の過半数以上のポイントを獲得していることになり、氷室がどれだけポイントを獲得したところで僕のポイントを超えることはできない。

(氷室は僕が昨日の時点まで1万ポイントを隠し持っていたことに気付いていないからあれだけ強気な態度を取っているだけだ)

 恐らく彼は何らかの方法で他の生徒からポイントを集めまくったのだろう。
 そして、信じられないが、一昨日の時点での僕のポイントを超えたのだろう。
 しかし…そんなのは無駄なことだ。

「氷室君、君が何を企んでいるのかは知らないけど、世の中君が思ってる程甘くないよ。――僕が現実を見せてあげるよ」

 僕は氷室に対し、挑発的な笑みを浮かべる。

「おい、お前ら、そろそろ発表に移りたいんだが?」

 そんな中、ずっと黙っていた大井先生が鋭く睨みつけてきた。

「そ、そうですよね。どうぞ、どうぞ」

 そんな先生に、氷室はへりくだりながら進行を促す。

「フン、まぁ、良いだろう。――まず、最初にルールの確認だ」

 そして、そんな氷室に冷たい視線を向けながらも進行を始める先生。

「勝敗は現時点での互いに生徒ポイントの合計で決める。そして、勝者には習志野とペアを組む権利と相手の将来の進路を決める権利が与えられ、敗者は退学。――これで間違いないな?」
「はい」
「ええ、間違いありません」

 先生の問いかけに僕と氷室は首肯する。

「習志野も、これで問題ないな?」
「は、はい」

 さらに続けて確認された習志野さんは、緊張と不安でいっぱいの表情でチラリと氷室の方を見るが、黙って頷く彼を見ると、少し落ち着いた様子で先生に返事を返す。

(習志野さん、僕がパートナーならそんな不安な顔はさせない)

 そんな習志野さんの様子を見て、握りしめる拳に自然と力が入る。

「それでは、氷室対酒々井の生徒ポイント収集勝負――最終結果を発表する」

 審判である先生の言葉に、ざわざわしていた周囲も静まり、場には緊張感が張り詰める。
 そして、それは当人である僕達も同じだ。
 緊張で唇は乾き、額からは汗が流れおちる。
 目の前の氷室は少し顔を険しくさせ、黙って目を閉じている。
 そんな僕ら二人を楽しそうに見ている葛西。
 そして、目を閉じ、祈るような格好で結果を待つ習志野さん。

「酒々井秀……合計4万4200ポイント!」

 まずは僕のポイントが発表され、周囲は若干ざわつく。
 僕自身のポイントはほぼ予想通りだ。あとは……
 自分の胸の鼓動がさらに速度を上げているのが分かる。
 そして……

「氷室辰巳……“4万6千ポイント”!!――よって、勝者・氷室辰巳!!」

 次の瞬間、大井先生から発せられた言葉に、僕は耳を疑った。
 誰も予想していなかった結果に、周囲も一瞬リアクションが遅れる。

「え…氷室君の勝利…?」
「し、酒々井の間違い…だよな…?」
「私、酒々井君にポイント渡しちゃったんだけど……」

 少し遅れて体育館には歓喜の声と戸惑いの声や悲痛な叫びが混ざり合う。
 歓喜しているのはごく一部のように感じるが、中間発表が終わってから僕へポイントを譲渡した生徒の数を考えれば普通だろう。

 これで、多くの生徒は退学になる。
 だが、僕はそんなことを気にしている余裕なんてないし、他人のことなんて今はどうでもいい。

(僕の、負け…?意味が分からない…)

 頭が回らず、状況が上手く飲み込めない…。

「ちょ、ちょっと、大井先生!勘弁してよ。結果、言い間違えてないかい!?」

 僕は激しく混乱しながらも、大井先生を問い詰める。
 しかし…

「言い間違いでも、お前の聞き間違いでもない。――4万6千対4万2千ポイント。氷室の勝ちだ」
「うそ…だろ…?」

 改めて結果を聞かされ、その場に崩れ落ちた…。

(僕の負け?どうして?僕の勝ちは確定してたはずだ!一体何が起きてる…?)

「だから言ったろ?――『最後に勝つのは俺だ』って」

 見上げると、そこには勝ち誇った顔を浮かべる氷室の姿が。
 そして、隣には安堵しつつも僕に同情的な目を向ける習志野さんが…。

「…あり得ない…。お前が勝つなんてあり得ないんだよ!」

 僕の中で何かが崩れた。

「反則だ!こんなの反則してるに決まってる!僕のポイントは全生徒の過半数を超えていたんだ!こいつがこんなにポイントを集められるはずがないんだよ!!」

 見下ろす氷室を睨みつけ、必死に訴え叫び続ける僕。
 周囲の生徒も取り乱す僕の姿に戸惑っているのか、ざわついている。
 しかし、そんな中、人混みの中から聞き覚えのある声が…。

「やれやれ、やかましいのう。キャラが崩壊しておるぞ、酒々井?」
「!?」

 突如、そこへ現れた予想外の人物に、僕は思わず叫ぶのを忘れて目を見開いた。

「り、理事長…!?」

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