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恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜

うみたけ

男の強さ~戦闘力VS知力3

「習志野、さっさと帰るぞ」
「は、はい!!」

 行徳達との一件が終わり、葛西が帰宅してしばらく。
 俺と習志野も帰り支度を終え、寮に戻ろうとしていた。

「ったく…今日は散々な一日だったな」
「そ、そうですね」

 廊下を歩きながら、俺の愚痴にいつも通り相槌を打つ習志野だが、今日はどこか元気がない。
 明らかに普段の半分くらいしか元気のないこいつを見ていると、なんとなく調子が狂う。

「もしかして、さっきのことで言いたいことでもあるのか?」
「い、いえ!!全然、しょ、しょんなことないでしゅよ!?」

 ……間違いなくさっきの行徳達の件が原因だ……。
 不意に核心を突かれた習志野は声を上ずらせて、挙句、噛み噛みで、しかも目を泳がせまくって答えてきた。
 ――っていうか、さすがにもう少し頑張って誤魔化せよ……。

「まぁ、言いたくないなら別にいいけど――」

 そんなやり取りをしながら、もう人通りのほとんどない廊下を歩いていると、前方に人が立っていた。

「ん?なんだ?」

 その男女の生徒二人組はこちらを向いて仁王立ちしており、周りには誰もいない。そして何より、ついさっき見たばかりの奴だった。――明らかに俺達に用があるのだろう…。っていうか二人揃って仁王立ちって……。

「待ってたわよ!」

 俺達との距離が数メートルというところまで縮まったところで女子生徒の方が、そう話しかけてきた。

「随分と私を待たせて――」
「そう言えば、今日の晩飯何にするか」
「うーん、カレーなんてどうでしょう?」

 そして、二人の横を通り過ぎようとした瞬間…

「ちょっと、何自然な流れでスル―してんのよ!!」

 女子生徒から必死のツッコミが入った。――ナイスツッコミ!!

「なんだよ。さっき散々相手してやっただろ?どんだけ構ってちゃんなんだよ?」
「誰が構ってちゃんよ!私には船橋ふなばし 舞まいっていう崇高な名前があるんだから!!」
「いや、別に名前とかどうでもいいから、用があるならさっさとしろよ。俺達さっさと帰りたいんですけど」
「くっ!イチイチムカつく奴らね!――まぁ、いいわ。用件は一つ。さっさと私達に勝負を挑みなさい!」

 ――やっぱり用件はそれか…。
 こいつらの狙いは力自慢の行徳による喧嘩勝負一本。だが、挑まれた方が優先的に勝負内容を決められる仕組みになっている以上(提案するだけなら挑む側もできるが、今回の場合、俺達が絶対に承諾しないため無意味)あいつらとしては、俺達に勝負を挑ませるしかない。
 遅かれ早かれもう一度、接触しに来るとは思ってたが、まさかその日のうちに来るとは……。

「おい、氷室!お前、自分の女の前で喧嘩売られてスル―か?とんだチキン野郎だな!!」

 俺が黙っていると、男子生徒の方――行徳拳――がここぞとばかりに挑発してくる。
 一方、もう一人の当事者である習志野はというと…

「”自分の女”……つまり、たっくんの女……いい響きです…」

 ぐふふ、と気味の悪い笑い漏らしながらニヤニヤしながらぶつぶつと言っている…。
 ――ダメだ、こいつは……。さっきまでの元気のなさはどこに行ったんだ…。

「自分の得意分野でしか勝負しようとしない奴に言われたくねぇよ。――習志野、さっさと行こうぜ」
「は、はい!!」

 それだけ言い残し、習志野に声をかけて踵を返す。
 すると…

「仕方ないわね。それなら…」
「きゃっ!!」

 背後から聞き慣れた声の悲鳴が聞こえ、すぐに振りかえる。

「…おい、何してる…?」

 目の前には本牧に羽交い締めにされて捕えられた習志野がいた。

「そっちがそういう態度を取るなら、こっちも手段は選ばないってこと。」

 ――なるほど。無理矢理にでも交渉のテーブルに着かせようってわけか…。
 しかし…

「おいおい、行徳だっけ?お前、あんだけ偉そうなこと言っておいて、自分の好きな奴を人質かよ。とんだ口だけ野郎だな」

 さっきの教室でのやり取りを見る限り、こいつが習志野のことを本気で好きであることは間違いなさそうだ。とりあえず、これだけ煽っておけば習志野が何かされることはないだろう。
 これでひとまず打開策を考える時間は――

「そんなの当たり前だろうが!俺が習志野さんには何もしねぇよ!――ただ…」

 俺の挑発に行徳はニヤリと笑い、そして…

「ぐあっ!」

 次の瞬間、俺は膝をつき、うずくまっていた。腹部には激しい鈍痛を感じ、気付けば自らの視界に映っていたのは行徳の姿ではなく、廊下の床だった。

「たっくん!!」

「ただ、俺は恋敵には容赦しねぇ!早とちりはよくねぇぞ?『人質君』」

 前方から声が聞こえ、見上げると、そこには勝ち誇った表情を湛えた行徳。
 そして、少し後方には悲鳴のような声で俺の名前を叫ぶ習志野…そして、 不敵に笑いながら彼女を捕えている船橋…。
 その光景を見て、俺はようやく自分達が置かれている状況を理解した。

「なるほど…そういうことか…」
「なるほど。さすがに状況理解は早いようね」

 船橋は品定めをするような目で俺を見下ろし、

「それじゃあ、単刀直入に言うわ!――習志野栞、氷室への制裁を止めたければ私に勝負を申し込みなさい。そうすれば彼もあなたも解放してあげるわ」

 船橋は「勿論あなたが賭けられる全ポイントを賭けた勝負よ」と付け加えた。

「そ、そんな…でもそんなことしたら…」
「別に断るならそれでもいいのよ?」

「がはっ!」

 船橋が目で合図を送ると同時に俺の顔面を鈍痛が襲った…。
 床に倒れた体を何とか起こすが、少し頭がグラつく…。軽い脳しんとうだろう。

「たっくん!!」

 再び習志野の叫び声が廊下に響きわたる。

「さっさと勝負を申し込まないと、彼、ボコボコにされちゃうんじゃない?」

 追い打ちをかけるように、船橋は習志野に意地悪く投げかける。
 そして、そんな無茶な要求に、習志野は今にも泣きだしそうだ。
 習志野が泣くほど困るのも無理ない。
 まず、前提として習志野一人では船橋には勝てない。それは習志野本人も理解しているようだ。恐らく勝負を挑めば、習志野が懸けられるポイント=俺達ペアのポイント全部を賭けさせられ、そして奪われる。
 何とか俺を助け出したい……しかし、勝負を受ければポイントを奪われて俺達は二人とも退学……そんな絶望的な二択が、今現在習志野の頭の中を駆け巡っているはずだ。
 それなら…

「習志野!俺のことは気にしなくていい!とにかく黙って待ってろ!!」

 なんとか声を振り絞り、習志野に伝える。
 校舎内であれだけ大きな悲鳴を2回も出してるんだ。そろそろ騒ぎを聞きつけた先生か誰かが駆けつけてくるだろう。
 俺達は助けが来るのをただ待てばいい。
 俺がそんな場面を期待するが…

「おいおい、時間稼ぎなんて何の意味もねぇぜ。何せこの学校は俺達の”喧嘩”について容認してるんだからな」
「……誰がそんなデマカセに騙されるかよ」

 一瞬動揺しそうになりながらも、なんとか平静を保つ。
 しかし…

「デマカセなんかじゃないわよ?だってこの学校の目的は恋愛を通して『将来的に価値ある人材を育てる』ことなんだから。――『強さ』だって十分価値ある才能でしょ?」

 船橋が勝ち誇った表情で言い放つ。
 ――『将来的に価値ある人材を育てる』……完全に初耳なんですが?もしかして俺達のクラスだけ聞かされてない…とか?
 まさか、とは思ったが自分の担任の姿が頭に浮かぶと、不思議と納得できてしまった……。怨むぞ!大井先生!!

「つまり、この騒動に気付いてても、誰も助けになんて来ねぇし、もし来てもなんのお咎めもなしってことだよ!」

 そう言って、行徳は下品に笑う。
 ――いや、まだだ!まだ、あいつらが端末に小細工をして騙そうとしてる可能性だってある。いくら大井先生でも、学科方針くらい説明するはずだ!!あいつらの言ってることには何の信憑性もない!
 しかし…

 カタン

 不意に、俺の目の前に何かが投げ捨てられた。

「ま、言っても信じないだろうし、自分の目で確かめてみれば?」

 目の前に投げ込まれたもの…生徒端末を拾い上げ、操作する…。すると…

 学科方針
『恋愛』という経験を通して『将来的に有意義な才能や人材育て、輩出することで社会全体の発展に貢献する』ことを基本方針として勉学・スポーツ・芸術等様々な分野に励む。

 この学校のトップページにある学科方針の恋愛学科の項目をタップするとこんな文章が飛び出してきた。

「分かったらさっさと勝負を申し込みなさい。あ、そうだ!別に氷室がうちの行徳に勝負を申し込んでもいいからね!」

 船橋の余裕に満ちた声色が聞こえてきた。
 ――おいおい、ウソだろ…。マジで打つ手なしだぞ、これ…。これは本気でまずいぞ…
 追い込まれ、気付けば自分の額いっぱいに冷や汗が浮かんでいた…。

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