恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜
男の強さ
「…も、もう、勘弁してくれ……。俺の負けでいいから…」
地面に倒れ込みながら男は、縋りつくような目で相対する男に懇願する。
顔面は殴られて腫れあがり、全身ボロボロの状態で最早一人で立ち上がることも難しそうだ。
しかし、そんな状態の男を相手に敵方のがっしりとした長身の男は……
「フン、仕方ねぇ。それじゃあ、あと一発で勘弁しといてやるよ!!」
ニヤリと口の端を釣り上げ、再び拳を振り上げる。
「お願い!もうやめて!!私達の負けよ!!」
地に伏せる男のペアである女子生徒から悲鳴のような声が上がり、がっしりとした男は振りおろそうとした拳を停止させた。
そして、女子生徒は倒れるパートナーの下へと駆けよる。
「……お願い!約束通りポイントは支払うから…」
傷だらけのパートナーを抱きかかえ、涙ながらに許しを乞う。
すると…
「いいんじゃない?目的のポイントは貰えるわけだし。それにこれ以上やったら、さすがに学校からも罰則があるんじゃない?」
今まで黙って見ていたがっしりとした男のパートナーが落ち着いた口調で制する。
「チッ!!」
舌打ちして不満そうにしながらもがっしりとした男の方も大人しく自らのパートナーの下へと戻っていく。
「お疲れ様。やっぱり強いわね」
「フン、当然だ。まぁ、今回は相手がちょっと弱過ぎだけどな。――でも、やっぱり男の価値は“強さ”だぜ!」
男は余裕の表情を浮かべながら額の汗を拭う。
「頼もしいわ。まぁ、この学年で主席を狙うならそれくらいじゃないとね」
「別に俺は主席とかには興味ねぇ。ただこの”強さ”で好きな人を手に入れたいだけだ!」
「ま、別にそれならそれでいいわ。――あなたがちゃんと結果を残してくれるのなら」
そして、女子生徒は自らの野望に向け、標的達の顔を思い浮かべながらニヤリと笑みをこぼすのだった……。
※※※※
「おい!てめぇ、もう一回言ってみろ!!」
東海誠一郎達との一件から数日後のとある放課後。いつも通り、パートナーで同室の習志野栞と一緒に下校していると、少し離れたところから、男子生徒の怒声が聞こえてきた。
――どんな学校でもこういう暴力沙汰はあるんだな……
国内屈指の名門と言われる恋星高校でもこの有様だ。きっとどの学校でも多かれ少なかれこういった輩はいるのだろう。ホント迷惑な奴らだ。
「喧嘩みたいですね…」
隣を歩く習志野もこういったことはあまり得意ではないのか、控えめに俺の袖をつまみながら不安そうな表情を浮かべている。
「お前こそ調子に乗ってんじゃねぇぞ!!ああ!?」
その間にも彼らはヒートアップし続けていた。
そして、一段と大きな怒声に、習志野がビクッと体を強張らせる。
「まぁ、相手も喧嘩相手に夢中で気付いてないみたいだし問題ないだろう。俺達には関係なさそうだし……とりあえず見なかったことにしよう」
天敵を目の前にした小動物のようになっている習志野の不安を取り除こうと、俺は最も現実的で簡単な解決策を提示した。
ここで、華麗に仲裁に入ったりしたら、マンガなんかの主人公っぽくてカッコいいのかもしれないが、生憎俺には関係ない。
そもそも全く知らない奴ら同士の喧嘩に俺が割って入ったところで、『俺』という新たな被害者が出るだけだ。
そして何より、俺は喧嘩も弱いし、ああいうすぐに暴力に訴える輩が大嫌いだ。
そんな守備範囲外の出来事にまで首を突っ込んでたらキリがない。
時は金なり。時間は有効に使わなくては!!
「習志野、ここはさっさと撤退だ!」
「は、はい。そうですね。私も怖いのは嫌ですし」
俺達は彼らの争いに巻き込まれないように、気持ち遠回りして、静かにその場から離れた。
俺達は若干緊張気味に並んで歩き……
背後からだんだんと遠ざかっていく喧騒を耳にしながら、特に何事もなく自分達の部屋まで帰還した……。
――え?喧嘩はどうなったかって?そんなの知らん!!俺の暴力沙汰に対する回避能力を侮ってもらっては困る!!
……しかし、数日後。そんな小さな自慢を撤回せざるを得ない出来事は唐突に起こった……。
地面に倒れ込みながら男は、縋りつくような目で相対する男に懇願する。
顔面は殴られて腫れあがり、全身ボロボロの状態で最早一人で立ち上がることも難しそうだ。
しかし、そんな状態の男を相手に敵方のがっしりとした長身の男は……
「フン、仕方ねぇ。それじゃあ、あと一発で勘弁しといてやるよ!!」
ニヤリと口の端を釣り上げ、再び拳を振り上げる。
「お願い!もうやめて!!私達の負けよ!!」
地に伏せる男のペアである女子生徒から悲鳴のような声が上がり、がっしりとした男は振りおろそうとした拳を停止させた。
そして、女子生徒は倒れるパートナーの下へと駆けよる。
「……お願い!約束通りポイントは支払うから…」
傷だらけのパートナーを抱きかかえ、涙ながらに許しを乞う。
すると…
「いいんじゃない?目的のポイントは貰えるわけだし。それにこれ以上やったら、さすがに学校からも罰則があるんじゃない?」
今まで黙って見ていたがっしりとした男のパートナーが落ち着いた口調で制する。
「チッ!!」
舌打ちして不満そうにしながらもがっしりとした男の方も大人しく自らのパートナーの下へと戻っていく。
「お疲れ様。やっぱり強いわね」
「フン、当然だ。まぁ、今回は相手がちょっと弱過ぎだけどな。――でも、やっぱり男の価値は“強さ”だぜ!」
男は余裕の表情を浮かべながら額の汗を拭う。
「頼もしいわ。まぁ、この学年で主席を狙うならそれくらいじゃないとね」
「別に俺は主席とかには興味ねぇ。ただこの”強さ”で好きな人を手に入れたいだけだ!」
「ま、別にそれならそれでいいわ。――あなたがちゃんと結果を残してくれるのなら」
そして、女子生徒は自らの野望に向け、標的達の顔を思い浮かべながらニヤリと笑みをこぼすのだった……。
※※※※
「おい!てめぇ、もう一回言ってみろ!!」
東海誠一郎達との一件から数日後のとある放課後。いつも通り、パートナーで同室の習志野栞と一緒に下校していると、少し離れたところから、男子生徒の怒声が聞こえてきた。
――どんな学校でもこういう暴力沙汰はあるんだな……
国内屈指の名門と言われる恋星高校でもこの有様だ。きっとどの学校でも多かれ少なかれこういった輩はいるのだろう。ホント迷惑な奴らだ。
「喧嘩みたいですね…」
隣を歩く習志野もこういったことはあまり得意ではないのか、控えめに俺の袖をつまみながら不安そうな表情を浮かべている。
「お前こそ調子に乗ってんじゃねぇぞ!!ああ!?」
その間にも彼らはヒートアップし続けていた。
そして、一段と大きな怒声に、習志野がビクッと体を強張らせる。
「まぁ、相手も喧嘩相手に夢中で気付いてないみたいだし問題ないだろう。俺達には関係なさそうだし……とりあえず見なかったことにしよう」
天敵を目の前にした小動物のようになっている習志野の不安を取り除こうと、俺は最も現実的で簡単な解決策を提示した。
ここで、華麗に仲裁に入ったりしたら、マンガなんかの主人公っぽくてカッコいいのかもしれないが、生憎俺には関係ない。
そもそも全く知らない奴ら同士の喧嘩に俺が割って入ったところで、『俺』という新たな被害者が出るだけだ。
そして何より、俺は喧嘩も弱いし、ああいうすぐに暴力に訴える輩が大嫌いだ。
そんな守備範囲外の出来事にまで首を突っ込んでたらキリがない。
時は金なり。時間は有効に使わなくては!!
「習志野、ここはさっさと撤退だ!」
「は、はい。そうですね。私も怖いのは嫌ですし」
俺達は彼らの争いに巻き込まれないように、気持ち遠回りして、静かにその場から離れた。
俺達は若干緊張気味に並んで歩き……
背後からだんだんと遠ざかっていく喧騒を耳にしながら、特に何事もなく自分達の部屋まで帰還した……。
――え?喧嘩はどうなったかって?そんなの知らん!!俺の暴力沙汰に対する回避能力を侮ってもらっては困る!!
……しかし、数日後。そんな小さな自慢を撤回せざるを得ない出来事は唐突に起こった……。
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