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恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜

うみたけ

中間テスト1

キーンコーンカーンコーン

「そこまで!後から回収しろ!!」

 チャイムが鳴ったと同時に先生の号令が放たれる。
 テストを回収しながら、教室はテストが終わった直後独特のざわつきが支配している。

「それじゃあ、午前のテストはここまでだ。午後からのテストもしっかりやれよ」

 テストを全て回収した先生はそれだけ言うと、そそくさと教室を出て行った。
 そして、先生がいなくなると……

「おい、お前今のテストどうだった?」
「俺、正直微妙だったわ…」
「私も。最後の方とか全然分かんなかったし…」
「俺…終わったかも…」

 それまで小声だった話声の音量が上がり、教室は一気に騒がしくなる。
 ――まぁ、これもテストのお決まりだな。
 そんなことを思いながら、俺は自分のカバンから昼食を取り出していると……

「…たっくん……私はもうダメです…」

 泣き出しそうな声で俺の名前を呼び、分かりやすい程落ち込んでいる習志野の姿があった。
 どうやら先程の科目も出来が良くなかったらしい…。
 俺のフォローのおかげもあってか、一時間目の数学があまりできなくても明るく振る舞っていた習志野だが、二時間目、三時間目とテストが終わる度にその落ち込みようは顕著になっていき、四時間目が終わった今では完全に涙目で戦意喪失寸前である…。
 そして、聞いた限りではその落ち込みよう同様にテストの結果も深刻みたいだ。

「…まぁ、あんまり気にするなよ?」

 俺は、少し顔を引きつらせながら、そんな言葉を返す。――だが、内心は全く違う。
 落ち込みまくっている習志野とは対照的に、俺の方は大して焦ってはいなかった。
 ――なぜなら俺にとって、この状況は“想定内”だったから…。

「そうだよ、栞ちゃん!どうせ最後は辰巳君がなんとかするよ」
「…何無責任な励まし方してんだよ…。っていうかなんでお前がいるんだよ?」

 俺はさも当然のごとく隣にいた適当な男――葛西寛人を一睨みする。

「嫌だなぁ。可愛い栞ちゃんが落ち込んでたから励ましに来ただけなのに」
「残念ながらお前に励まされると逆効果だ。さっさと消えろ」
「相変わらずツレないなぁ」

 いつも通りのふざけた口調の葛西を、俺は冷たく、そして適当にあしらう。
 しかし、誠に遺憾ながら来客は一人ではなかった。
 ふと、習志野の方に目を向けると…

「あんな簡単な問題も満足にできないなんて、冗談としか思えないわ。あなた本当に勉強したの?」

 完全に見下した口調で学年主席の巨乳美少女、市川凛が習志野にさらなる追い打ちをかけていた…。

「まぁ、私なら勉強なんて楽勝だし、トップで卒業するためには“私みたいな”学力は必要でしょうね」
「うぅ……」

 市川は「私みたいな」という部分をやけに強調しながら、チラチラと俺に視線を向けてくる。
 そして、習志野の方は全く為すすべなく、ただ小さく唸ることしかできない。
 ――市川さん…後から習志野のフォローするのは俺なんですけど……。

「どうやらあまり調子は良くないみたいだね」

 そして、さらに来客が。

「……なんか用か?生憎俺はここにいるカオスな連中の相手だけで手一杯なんだが?」
「いやいや、別に大したことじゃないよ。今日でこの学校を去ることになる君達に今のうちに挨拶でもしておこうかと思ってね」
「そりゃ、お疲れだったな。お詫びに引越しの手伝いでもしてやろうか?」

 パートナーの浮島を伴って現れた東海の安い挑発に、皮肉で返す。

「フン、減らず口を…!どうせ勝つのは僕達だ。今のうちに好き勝手言ってろ!」

 本当に用はそれだけだったのか、俺の言葉にイラついた東海はすぐにその場を立ち去ろうと横を通り過ぎて行く。
 そして、少し遅れて浮島も続いていき……ふと、俺の前で足を止めた。

「ごめん…。でも誠一郎に悪気はないし、根は優しい人。……どうか大目に見てやってほしい…」

 淡々と静かで抑揚のない口調でそう言うと、まっすぐこちらを見上げてくる。

「……別にあいつに悪気がないことくらい分かってる。――ただ俺にとってはそれが逆に気に食わないんだよ」

 俺はそのまっすぐな瞳の前に嘘をつく気にはなれず、本音で答えた。

「そう…」

 俺の答えに対して、浮島はただ短く呟き、先程横を通り過ぎて行った東海の後を追って去っていった。――どこかその背中に寂しさを感じたのは俺の勘違いだろうか…。


※※※※

「そこまで!テスト終了だ。とっとと後から回収しろ!!」

 昼休み後の最後の科目が終わり、中間テストの全日程が終了となった。
 俺の方はテスト前に集中して勉強した甲斐があってか、入試、オリエンテーションの学力試験に続き、かなり手応えのある結果となった。
しかし……

「たっくん…最後の頼みの綱だった英語も思ったほどの点数は期待できそうにないみたいです…」

 昼休みに比べると落ち込み具合も少ないところを見ると、午前中の教科よりは手応えはあったみたいだ。

「この英語だけはなんとしても期待以上の成績を獲りたかったのですが……。すみません…」

 それでも、思っていたよりは手応えがなく、やはり落ち込んでいる。
 ――なんとか作戦通りいってるといいんだが……。
 心の中でそう願うが、今からどれだけ祈ろうとも結果は分からないし、変わらない。

「別に気にする必要ねぇよ」

 俺はそんな胸の内を隠しながら、習志野を励ます。

「でも…」
「最初に言ったろ?これから起きることは全て作戦通りだって」
「…ど、どういうことですか…?」
「悪い。どうしても最後まで詳しくは言えない。ただ、これだけははっきりしてる。――この勝負、勝つのは俺達だ」
「……分かりました。たっくんがそう言うなら安心です。私はたっくんを信じてますから!」

 おそらく完全に納得はしていないだろうし、不安も拭えていないだろう…。
 正直、ここから先はその時の状況次第だ。もしかしたら、一か八かの賭けに出る必要もある……。
 そして、習志野にはこのことを一切教えていない。
 しかし、それでも俺に心配を掛けないようにと思ってか、彼女は何も言わず笑顔で頷いてくれている…。自分の退学までかかっている状況だというのに……俺を信じて……。

(こいつのためにも、負けられねぇな…)

 俺は習志野の優しい笑顔に少し罪悪感を感じながら、改めて決意した。

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