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恋愛サバイバル〜卒業率3%の名門校〜

うみたけ

市川の動向

「あれからびっくりするほど何もないな…」

 市川凛からの突然の宣戦布告から2日が経ち、現在教室で呑気にランチタイムを過ごす俺と習志野。

「はひかにはほほんははひほ――」
「食いながらしゃべるな。」

 口いっぱいに物を詰め込んでしゃべるため何を言っているか全く分からない…こいつ見た目だけじゃなくて行動もガキだな…。

「確かにあの女あれだけ言っておいて何もしてきませんね。――ぐぬぬ…あの女ホントに忌々しい!あんな女私が軽くひねってやりますよ!」

 ぐっと胸の前に拳を握りしめ決意表明する習志野…なんかとてつもない負けフラグのような気がしてならないんだが…。とにかく頼りなさすぎる…。なぜなら…

「決意表明するのは良いが、とりあえず口元についた米粒を取ってからにしてくれ…。」
「ッ!!さ、先に言ってくださいよ!!」
「…いや、さすがに無理だろ…」

 顔を赤らめながら慌てて口元を確かめる習志野。…こいつの残念さを見てると気が抜けるな…。
 とにもかくにも、朝に市川凛から宣戦布告を受けてから今現在まで、全くと言っていいほどあちらからのアクションはない。

「まぁ、何らかの準備はしてるみたいだけどな…」

 その証拠にこの二日間、市川は休み時間になる度に教室を出ていき、授業直前に戻ってくる、ということを繰り返している。おそらく休み時間の間に何か企んでいるのだろう。

「いやいや、それはないよ。」

 ふと背後から知った声が聞こえた。

「…何か用か?」
「露骨に嫌な顔をするなよ…」

 冷ややかな目で振り返ると、そこには想像通り薄っぺらい爽やかさを顔に浮かべた茶髪の長身イケメン、葛西寛人が立っていた。

「お前に話しかけられて警戒しない奴なんていないだろ」
「ははっ。君のは警戒っていうよりただの拒絶みたいだけどね。」

 葛西寛人――敵だけでなく、味方にもなりたくない。それほど面倒くさそうな奴である、というのがこいつに対するこれまでの印象である。
 俺の隣では習志野がいつの間にか俺の後に隠れている。…習志野もなんとなくこいつが信用できない奴だということば感じているらしい。

「…それで、何かないんだ?」
「そうそう。君達市川さんが休み時間に教室を抜け出して何か仕掛けるための準備をしてると思ってるんじゃないかい?」
「……」

 こいつ、もしかして俺達が市川に宣戦布告されたことも知ってるのか?

「まぁ、そう警戒するなよ。僕は二日前に偶然君達と市川さんが話しているところを目撃しただけだよ。」
「……“偶然”ねぇ…」

 まぁ、十中八九俺が市川に呼び出されるのを見て、屋上まで尾けていたんだろう。…探偵もびっくりの追跡能力だな…

「まぁそれはいい。――じゃあ、市川は毎回教室を出て何してんだよ?」
「辰巳君、君がこの学校に入ってから経験したことと、市川凛という少女のスペックを考えれば自ずと答えは出るよ。」

 俺がこの学校で経験したこと…容姿端麗、学年一位の学力…

「もしかして…告白、か…?」
「正解♪」

 葛西はウインクしながら軽い調子の口調で正解を告げる。

「え?あの女休み時間になる度に誰かれ構わず告白してるんですか?ホントにどうしようもなく盛りのついた雌犬ですね。」

 市川の悪口を言う時の習志野は非常に楽しそうである…まぁ、こいつの答えは全く違うのだが…

「逆だ。市川が告白される側だ。」
「えぇ!?あんな愛想のかけらもない女のどこがいいんですか!?」

 ホント市川のこととなると容赦ないな…

「まぁ、厳密に言うと『告白』じゃなくて『下準備』と『調査』だろうな。」
「『下準備』…?『調査』…?」

 習志野はチンプンカンプンといった様子で小首をかしげる。

「まぁ、ここはフラれたら退学っていう常識外れのルールがある恋星高校恋愛学科。みんな市川さんとペアを組みたいけど退学を恐れて簡単には告白できない。だから、みんな告白する前に脈があるのかどうか調べたり、好感度を上げようといろいろアピールしてるんだよ。」
「へぇ…。みんなあの女の一体何がいいんですかね。納得できません!」

 説明を聞いて、習志野は面白くなさそうに頬を膨らませる。…なんか相当市川のことライバル視してるな…。

「まぁ、単純にかわいいっていうのもあるけど…。彼女のスペックが魅力っていう人も多いだろうね。」

 葛西も習志野の市川に対する対抗心に苦笑いしつつ彼女の問いに答えてやる。

「この学校ではペア二人の生徒ポイントの合計で評価が決まるからね。市川さんは学年一位の学力、生徒端末で調べた限り運動も得意な方らしい。みんな、そんな『たくさん生徒ポイントを稼いでくれる“優良物件”』に群がってるのさ。」

“優良物件”か…。俺がこの学校でちやほやされてたのと同じことが市川にも起きているんだろう。――まぁ、あいつの場合はそんな評価制度なくてもモテモテだっただろうがな!

「まぁ、期限も迫ってるしな。そういう動きは活発になるだろ。」

 俺は教室にいる周りの連中に視線を移す。

「ねぇねぇ、清水君好きな食べ物ってある?もしよかったら明日私が作ってきてあげるよ!」
「え、本当!?それじゃあ――」

「へぇ、小野さんって陸上部入るんだ!今度応援行くよ!!」
「あ、ありがとう。」

 どいつもこいつも狙いの異性に媚びを売ろうと必死だな。
 この学校のルールの一つ、『8日間恋人がいない生徒は退学』に抵触しないようにみんな恋の駆け引きの真っ最中である。
 ちなみに今日は5日目。明日から土日ということを考えれば彼女彼らの必死さも納得である…俺も習志野とペアになってなかったらこうなってたのか…

「っていうか、お前はこんなところで油売ってていいのか?まだペアいねぇんだろ?」

 俺はふと気になったことを口にする。

「ははっ、僕のことを心配してくれるのかい?辰巳くんは優しいね。」
「黙れ。」
「僕のことなら心配いらないよ。別に今動かなくてもペアは組めるからね。」

 確かに早く動いたからと言って目当ての奴とペアが組めるとは限らない。
 いろんな奴に声をかけられてる奴はギリギリまでペアを見極めたいだろうし、後から来た奴の方が魅力的に映ることもある。
 まぁ、一般的には余裕のある奴はモテるらしいしな。こいつみたいに“あえて仕掛けない”っていう駆け引きの仕方もアリなんだろう。
だが…

「お前、また何か企んでるだろ…?」
「うーん…まぁ、企んでいると言ったら企んでるかな。素の部分を考えたのは僕じゃないんだけどね。――きっと君達も楽しんでくれると思うよ。」

 そう言って、葛西はニヤリと笑った。――ったく、市川のことも考えておかなきゃいけねぇのに…ホント面倒くせぇ野郎だな…

キーンコーンカーンコーン

 そんなやり取りをしていると、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り、クラスの連中も皆それぞれの席に戻っていく。

「あ、そうだ辰巳君。他の連中より先にペアを組んでちょっと気が緩んでいる君に一つアドバイス。――生徒端末のお知らせページはこまめにチェックしておいた方がいいよ。」
「!?」

 葛西は去り際にそれだけ告げるとさっさと自分の席に戻っていった。
 俺は葛西の言葉が気になり、ふとポケットから生徒端末を取り出し、いじってみる。

(『生徒へのお知らせ』…これか。……!!)

 何気なくそのページを見た俺は、その中の一つの文を見て目を丸くした。

「…なんだ、これ?こんなのいつからあった…?」

 今朝、学校を出る前に見たときはこんなリンク先なかった。――おいおい、普通学校のHPってこんな頻度で、しかも生徒が学校にいる間に更新されたりしないだろ…。
 いや、今は一番重要なのはそんなことじゃない!重要なのはこの内容だ…。
俺は驚きながらもその文章をクリックした…。

『ペア対抗オリエンテーション開催のお知らせ』

――俺の視線の先にはそんな文言が記されていた。

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