新しい世界で今度こそ幸せをつかみたい

ゆたぽん

28話

なんでこうなったのだろうか…。
私は目の前にいるスキンヘッドの筋肉隆々で頑固親父?のようなギルドマスターを眺めながらお茶を飲んでいた。

時は少し遡り、ラビさんが進化中のため翌朝、前の日に受けた依頼の報告をしていると受付で止められ、ちょっと良いですか?と慌てた様子で、ギルドマスターの所に連れてこられた。

「おい、ちゃんと正直に話してくれよ?お前がやったのか?そうなんだろう?相手さんはお前さんにやられたって言ってきてるんだ。」

ギルドマスターより言われたのが、とある貴族というか、ここの領主様の息子が私に嫌がらせをされたと言ってきたらしい。

心当たりがない、と言ってもギルドマスターは納得しなく、認めた方が楽だぞ?と言ってくる始末だ。

ならと、どんな嫌がらせを受けたのか教えて欲しいと言うと、そんなのはお前が一番わかってるだろう!と言われてしまい、話が進まない状況が続いていた。

慌てれば相手の思うツボであり、ジーっと観察し自分で出したお茶を飲んでいると、堪え性のないギルドマスターなのか、

「テメェ、舐めてんのか?やったんだろ!いい加減にしろ!なんとか言ったら…」

バタバタと走る音がし、バタン!とドアが開き、慌て様子のギルド職員が入って来て、

「ギルマス!何やってるんですか!はぁ?なんで貴方は考えなしに一方的言ってるんですか?その頭はお飾りですか?何が詰まってます?あぁ、筋肉が詰まっているんでしたね!」

後から入って来たギルド職員がスパーンと気持ちの良い音を立ててギルドマスターの頭を叩いたと思ったら、私に向かい、

「大変失礼しました。私はガロンのザブマスターでセイロンと申します。そしてこの馬鹿…。ギルドマスターはエドガーです。どうせ名乗りもしないで、話し始めたのでしょう。」

と言って、ようやくなぜ呼ばれたかの事の真相を話し始めてくれた。
が、内容はとても馬鹿馬鹿しいものだった。

とある休みの日、たまたまマリーさんとエレナさんと会い食事をしていた時、ニヤニヤしながら話しかけて来た人がいた。

「君たち、僕と食事でもどう?まぁ自慢じゃないけど、僕はここの領主様の息子なんだよね〜。声をかけてもらってありがたいでしよ?
ちゃんと朝には帰してあげるからさ〜。」

とかなりポッチャリとした体型の20歳前後の男性から声をかけられ、困惑していると、強引にに馬車に乗せようとするので、その手を振り払った。

「何故、私たちが行くと思われたのですか?そもそも着いて行くとは言っていません。
仮に貴方が領主様の息子であったからと言って、ありがたいとも感じません。なので、お引き取りください。」

と言うと、気分を害したのか急に怒り始めて、

「はぁ?この僕が話しかけてるんだよ?それを断るのはおかしいだろ!ちょっと綺麗だからって生意気なやつだな!」

生意気な女は躾けてやる!と言いながら、再び馬車に乗せようとするので、どうしようかと他の2人を見ると2人とも行きたくないと首を横に振っていた。それならばと、

「着いて行く理由がありません。なのでお断りします。」

と、再度キッパリ言い、他にはわからないように1人にだけ軽い威圧をかけた。
まぁ手加減はしたのだが、少しキツかったようで真っ赤に怒ってた顔がサーッと青くなり、少し粗相をしていたようだ。

そして、周りに人集りが出来ていた事に気付いたようで、覚えてろよ!と言って慌て立ち去って行った事があった。

その時のことを逆恨みして、ギルドに自分がここの冒険者に嫌がらせをされたと、やったのは私だと言ってクレームを出して来たとのこと。
ザブマスターは情報収集した上で話そうと言っていたのだが、ギルドマスターは下位の冒険者が貴族に逆らったんだろうと安易に考え、私が来たら部屋に来るようにと受付にに言っていたそうだ。なので今に至ると言うわけだ。

「この方は情報によれば加害者どころが被害者です!それを貴方は何をやってるんですか!以前から言っているでしょ?
考えなしにも程があります!何度言ったらわかるんですか!そもそも…っつ!」

こんなにイライラしてるとストレス溜まってそうだなぁ、顔色も悪いし痩せてるし、大丈夫かな?と考えていると、いきなりザブマスターがグッと前かがみになるとガバッと真っ赤な血を吐いて蹲った。

「お、おい!どうした!大丈夫か!」

と、ギルドマスターがザブマスターを揺らし始めるのでドンと突き飛ばし、何か言おうとするギルドマスターを威圧で黙らせ、

「離れて下さい。体を横にしますよ?まだ出そうですか?無理に話さないでいいです。ハイなら目を一度閉じて、イイエなら二度と閉じて下さい。吐きそうですか?…はい。食べても吐いてしまう事も多いですか?…。えぇ…。特にお酒も飲みますか?…そうですか。毎日ですか?…辛かったですね…。大丈夫ですよ。…ではゆっくり深呼吸して…。少し洗浄しますよ?」

どうやらストレスで暴飲暴食しており、特にお酒も飲んでは、日常的に嘔吐を繰り返していたようだ。
洗浄した後、直ぐにザブマスターの体をチェックすると、逆流性食道炎、慢性胃炎と潰瘍があった。
それと、食道と胃の周辺の血管に損傷がある事がわかり、回復魔法をかけた。
すると顔色は悪いものの、表情は穏やかになり、スゥスゥと寝息を立て始めた。

「ここでの話は今は一切質問を受けません。今あったことも誰にも言わず秘密にして下さい。ザブマスターが起きてから話し合いをしましょう。よろしいですね?」

そう威圧を込めてギルドマスターに言うと、真っ青な顔でギルドマスターは首を縦に振り、わかったと言った。

それでは、ゆっくりザブマスターを休ませて下さい、また明日同じ時間に伺いますからと言ってギルドを後にした。
さてと、宿に戻りながらナビさんと今後について話し合いをしたのであった。

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