新しい世界で今度こそ幸せをつかみたい

ゆたぽん

17話

現在私は目の前でプリプリ怒っている女神様を見ながら、お茶をしている。どうやら私を転生させた時、祝福される時に会えるように細工をしてあったそうだ。
私のスキルの※印に関係してて、祝福する時に解放する予定で、説明を兼ねて呼び出せるようにしといたとの事。
詳しく聞こうにも女神様は大きな水晶玉を見ながらブツブツ言っているので聞けないでいる。

「ってか、あの土地かなり強い魔物が成長してるじゃない!まぁ貴方のおかげでダンジョン外の魔物はレベルが落ち着いてるから大丈夫ね。
あっ、でもダンジョン内の魔物が危ないわね。ダンジョン内の魔物はお互いに潰し合いしてるみたいだから氾濫はしなさそうだけど、今の時点で勝てる見込みのあるのが居ないわ。どうしようかしら?
神託だす?でも混乱は避けたいし…。そもそも、あのトロイだっけ?がちゃんと祖先の伝承を受け継いでないからダメなんじゃない!何のためにケットッシーつけたと思ってるよー!!!」

今にも口からウガーっと何かが出て来そうな感じで女神様が叫んでいた。
水晶玉に映し出される映像が衝撃的だったようで、私のことは忘れて居るようだった。
私はいつまで待てば良いのかわからないし、ここに居るのは精神体なのか、肉体ごとなのか、祈って居る場所では騒ぎになっていないかとか、色々心配な点がある為女神様に声を掛けてみた。

「…そろそろ私にも状況を教えて頂けないでしょうか?」

静かに、ただハッキリと女神様に声をかけると。

「えっ?ちょっと待ってなさいよ!今忙しい…って、ヒッ!何で冷気が⁇あっ!あ、貴方いたのよね…。あっあのもう少しだけ待ってて?って、え?ガロンの方?
あぁ、あっちは貴方が祈り始めてから1秒も動いていないから大丈夫よ!ちゃんと祈り始めた時間に戻せるから、安心しなさい!」

そう女神様が言うと、また水晶玉に集中し始めた。なんだか色々確認をしているようだ。
色々聞きたい状況だが、時間が大丈夫であれば終わるまで待って、ゆっくり話を聞いた方が良さそうなので、のんびりとお茶を啜っていた。
それから1時間ぐらいたったか、ようやく女神様が水晶玉から離れた。

「ふぅ、あのバカな一族は後回しにして、谷の結界を強化したから暫くは大丈夫だわ!あー疲れたわ。」

うーんと背中を伸ばしている女神様様と目があったので暫し見つめていると。

「…。うん、わ、忘れてたわけじゃないのよ?
ちょっと見てないだけであの一族がバカになるとは思わなかったのよ!
そもそも、あそこにあるダンジョンは最高難易度のダンジョンで難攻不落なのよ。元は魔王クラスがダンジョンマスターで、倒すことが出来なくて仕方なくあの一帯を結界で封じ込めたのよ。
その後、召喚された勇者くんがダンジョンマスターを倒せるまでになったんだけど、『こんな美味しいレベル上げできる所潰すなんて勿体ない!』とか言ってあたり一帯を封鎖して楽しそうに魔物退治してたのよ。私は神の立場で地上にはあまり干渉が出来ないし、彼は子孫には伝承して守るようにするからって言ってから…。」

しどろもどろに女神様から説明があって、要約すると。

まず、漆黒の谷(あの谷の名前を初めて知った。)には最高難易度を誇るダンジョンがある。

次に、女神様はダンジョンが強すぎるから、壊したかったが、直接干渉することが出来ず、勇者くんに頼んだが、脳筋勇者はそれをせず、封鎖してレベル上げを満喫し、その後子孫に封鎖の維持を伝承していた。

最後に、子孫は国からの優遇と自堕落な生活に旨味を覚えてしまい、肝心な最高難易度のダンジョン封鎖の維持と言う点が抜けた状態でギリギリあの土地を守っている。

「「…。」」

「まあ、なんと言いますか、本当にダメな一族ですね…。それにいくらか強化したところで伝承内容が伝わっていないのであれば、危険な事は変わらないのでは?そもそも何故私にその説明をするのですか?その為に呼ばれたわけではないですよね?」

「うっ、そ、それは貴方もあの結界を維持出来るからつい…。ヒッ!そんな顔で睨まなくても…。あっ、でも何かして欲しいとかではないわよ?私もビックリしてしまったから、状況だけ聞いて欲しかったのよ!そ、それにあのダンジョンは元々イレギュラーで出来てしまったのよ…。」

女神様の話によると、どうやら俗に言うゲームオタクと呼ばれる人物が過去に召喚されて、あらゆる魔物の魔石と言う魔石を融合させダンジョンコアを作り出し最高難易度のダンジョンを作ってしまったそうだ。
女神様が気付いた時にはダンジョンは出来上がっており、どうしようもなく、作った本人もコアに取り込まれてしまい手のつけようがなかったのだと。

「ふぅ。もし、あの土地が魔物によって蹂躙されても仕方ないのよ。さっきは状況が把握出来てなかったから慌て結果を強化しちゃったけど、そもそも私は忠告もしたし、それを維持出来なかったのはあの一族のせい。よく見たら、貴方の場合は魔力自体が変質しているから結界の維持は出来ないから関係はないわね!それに人族の王族にも伝承内容は伝えてあるから、これ以上の事は出来ないわ!」

「…わかりました。これ以上は聞きませんが、1つお願いがあります。あのバカな一族からケットッシーを解放してはもらえないですか?」

私はあの土地にはなんの未練もないが、お世話になったケットッシー達は助かって欲しかった。
屋敷にいた時にあのバカ息子さんにケットッシーと遊んで居るところを見つかってしまい、危うくケットッシーを死なせるところだった。
あのバカ息子さんは自慢の魔法で私達を壁にぶつけたり地面に落としたりしたからだ。
バカ息子さんが飽きて居なくなって回復魔法を使い傷を治したが、いつ同じ事をされるかわからなかったので、それ以来ケットッシーとは距離をとっていた。
幸い念話が使えたので会話はできたが、魔力の痕跡が残ってしまってもいけないので、殆ど使わずわかれてしまった。
それに私にお裾分けしてくれてたバーナビーさんも両親が体調悪いとかで辞めていった。
辞める時にこっそり私のところに来て何かあれば訪ねてこいよ?と街の名前を教えてくれた。
落ち着いたら一度顔だけでも見に行こうと思う。
まぁ見た目も変わっているから遠くから見るだけだが、様子が気になるし。
そんなわけで、あの土地での心残りはケットッシーだけだったのだ。

「親のケットッシーは勇者くんの召喚獣だったのよ?上位ではないにしろ幻獣の部類になるからちょっとした事では消滅しないから、何かあれば逃げれるわよ?
えっ?封印!なんで!?それじゃあ逃げれないじゃない!待ってて!」

女神様が再び水晶玉に集中し始めると、

「はぁ?なんてバカな人間なの?よりにもよって幻獣を封印するとか!これ、禁忌使ってんじゃない!生贄使って封印するなんて最低!これぐらいなら干渉しても大丈夫だわ!…聞こえるかしら?もう封印解いたから自由よ!…えぇ、好きにすれば良いわ。あ、でも殺さないで…まだ…そう…谷のこともあるし…ありがとう…えぇ、そうしてちょうだい。」

女神様は水晶玉に向かい話をしていた。どうやら無事に封印は解かれたようだ。腐っても女神様なんだなぁって思っていると女神様から

「ふぅ、待たせてしまったわね。やっと落ち着いて話が出来るわ!スキルのこともだけど、あの後ちょっとわかった事もあったの。」

そう言って、ようやく私が呼ばれた理由を説明してくれた。

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