海蛇座の二等星

ぽん

story.12 雲が出てきた

玄関から出るのは目立つ、と判断した俺たちは裏の勝手口に向かった。

「律のこと、まだ捜す?」

美都芭が遠慮がちに聞いてくる。

さっきのことで虫の居所がよくないとでも思っているんだろう。

「もちろん。顔見ないとさすがに心配」

俺の答えに満足したらしく、美都芭は少し笑ってから黙った。

そういえば、聞いてなかったことがある。

「お前らの武器ってなんだ?」

二人はキョトンとした後、俺と同じようにそういえばと呟いた。

「これだよ」

依は手首に巻いていた律にもらった組紐をとる。
一瞬空間が揺らぎ、気がつくとそこに一本の鞭が現れた。

「鞭か。いいじゃねーか、ドラ○エ8の巨乳ねーちゃんみたいで」

ムッと顔をしかめる依を一通り笑った後、美都芭を見る。

美都芭は難しい顔でうさぎのキーホルダーを握っていた。

「んー…ちょっと構造が複雑だから出すの時間かかるんだよねぇ…」

慣れればすぐなんだろうけど…とつけ加えつつなおも難しい顔の美都芭の手元が光ったように見えた。

「出来た!」

喜ぶ美都芭の手に握られていたのは二丁の拳銃。

なるほど、さっき俺達を助けてくれた閃光は発砲した弾の残像か。

「そういえば私、魔法の素質がありそうなんだって。本来銃はつくれても発砲できないらしい」

自慢げに胸を張る美都芭に素直に驚く。

確かに俺や依の武器とは大分異なる性質のものだ。

ゲームで言うとこの物理攻撃か特殊攻撃の違いだ。

「あ、俺は剣だ」

つくって見せると美都芭がクスクス笑いだした。

「笑うことないだろ」

気にくわなくて軽く睨むとさらに美都芭は笑う。

「ごめんごめん。涙を笑ったわけじゃないの。ただね、」

美都芭は満面の笑顔を見せた。

「三人揃って律がくれたものでしょ?だからおかしくって」

言われてみればそうだ。

殴ってやるなんて意気込んだところで、土壇場でネックレスを手に取ってしまうほどには律に頼っているのだろう。

「なっさけねーな、俺ら」

ひとしきり笑った後、勝手口に手をかけたところで鏡が目についた。

汚れた制服に裸足、ましてや人外。

「外出たら…服の調達だな」

一人言とため息を漏らしつつ、最大限の警戒でドアを開けた。




───ビチャッ


なんだこれは。

なにがおきてる?



ふ っ て き た そ れ は





───血。

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