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海蛇座の二等星

ぽん

story.2 醤油がいい

自慢話になってしまうが私は頭が良い。
俗に言う天才というやつらしい。


一時間目、数学Ⅱ。いつもの通り、絵を描いて過ごす。

「不知火!聞いてんのか!?」

数学の山田こと山田先生が声を荒げる。

教科書も出していないのだから当然だろう。

「聞いてません」

私のドストレートな返答に数学の山田は目を細める。

「正直なのはいいことだ。前に出てこの問題を解けば許してやろう」

数学の山田は自慢げに黒板に数式を書いていく。

解かせる気などさらさらないのだろう。
いつも黒板には見たこともない数式が並ぶ。

ニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべる数学の山田を内心呆れながら一瞥し、黒板に向かって歩く。

途中、数学好きの川井君が必死に問題を解こうとしているのが目にはいる。

ちょっと不憫に思う。

こんな問題、高校で習う公式では解けない。

チョークを受け取って黒板の前に立ち、指で黒板をトントンと叩く。

暗算するときの癖だ。

=222

黒板にそれだけ書いてチョークを置く。

数学の山田の悔しげな顔を尻目に席へ戻る。

どこからか、「きも…」という声が聞こえた。



二時間目以降も同じ。

絵を描いて怒られてなんかしらの難問らしきものを解かされる。

ただ一時間目と少し違うところとして、どの先生も皆私が嫌いなことだ。

数学の山田は変わり者で、この学校で唯一私を差別的な目で見ない先生だ。

おかげで別の被害を被っている、というのは考えたくはないわけだが。

まぁとにかく、私は比較的、数学の山田は好きな方だろう。




「あぁぁぁあ!!!むっかつく!!なんで律はそんなに平然としていられるわけ!?私だったら多分手が出るレベルにウザいよ!?あのクソ共は!!」

四時間目が終わり、いつも通り旧校舎の生物室でお昼を食べながら模範生徒の皮を脱ぎ捨てた美都芭がPSPを眺めながら毒を吐く。

器用だなぁと思いつつ、購買で買った焼きそばパンをかじる。

「…興味ない、かな」

私にとって誰に嫌われているとか、誰がウザいとか割りとどうでもいい。

そんなことより購買でコロッケパンを買えるか買えないかの方が死活問題なのだ。

ちなみに今日は買えなかった。

別に特別コロッケパンが好きなわけではない。

ただ私は醤油派なのだ。

おわかりいただけるだろうか。

ソースではなく醤油派なのだ。

そして一部のスーパーのコロッケパンと購買のコロッケパンは醤油なのだ。

よってついコロッケパンを求めてしまう。

ここまでの私のくだらない思考など知るはずのない三人は大して変化していないはずの私の顔をじっと見つめながら焼きそばパン美味しくないの?とよくわからないことを聞いてくるのであった。

ちなみに私は焼きそばパンは好きでも嫌いでもない。
ただ財布にはとても優しいのだ。



昼食を食べ終え、余鈴が鳴ると同時に立ち上がる。

「あ゙ーサボりたいーー」

眠そうな涙はのろのろと歩き出すが遅刻で怒られるなんて面倒なイベントはごめんだ。

無理矢理にでもと後ろから押して速く歩かせる。

そのため、ギリギリではあったが午後イチの英語には間に合った。

それはそうと、「単語テストやるぞー」の言葉に涙が面倒な顔で項垂れるのを見て、教えてやればよかったなぁと申し訳なく思った。

とうの私は一瞬で埋まった答案に満足して机に突っ伏した。


次に私が顔を上げたのはSHRが終わった後だった…。



「なんで単語テストあるって教えてくんなかったんだよ…。出来たけどさ」

昼寝常習犯の涙は私が寝ていたことは言及せず、テストがあるのを教えなかったことについてぶつぶつと文句を言っていた。

「出来たならいいじゃん」

とっくに誰もいなくなった教室で四人そろってやっと力を抜いたように笑う。

時計を見ると3時15分。

いつものように駄弁るのもありなんだけれど、今日は早く帰った方がいいだろう。

「あ、そっか。律は今日早く帰んないと」

私がそわそわしているのに気がついた美都芭がサッと立ち上がる。

遅れて涙と依も気がついて立ち上がり、教室を出る。

西日が差し込む校舎、遠くから聞こえる吹奏楽の音、校庭でボールを蹴る生徒、掛け声、ホイッスルの音…そんな見慣れた景色を見るのが何故だろう、最後のような気がして、繰り返すばかりの日常の一部を目の奥に焼きつけた。


世界が壊れたのは、そのわずか45分後のことだ。

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