命の重さと可能性の重み

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第五十八話

「こ、これはいったい…何で浮かびましたの!?」

間近でこの魔法を初めて見たマリアさんは、驚きの声をあげる。

「これが失われた魔法ロストマジック「フリー」の魔法だよ。重さ…重力っていう力なんだけど、それをコントロールする魔法なんだよ」

「じゅうりょく…ですか?」

「そう。重い力って書いて重力って読むんだ。簡単に言うと、地面に向かって働く力でね?星が「回転する事で発生する力」なんだよ。…まぁ、この世界でどうなってるのか調べたわけじゃないけどさ…」

「調べることができるんですの!?」

ずいぶんな食いつき方だな。
まぁでも

「まぁ…調べ方を知ってるわけじゃないんだけどね…」

「そうなんですか…少し残念です」

「そうね。少し興味があったわね…」

エリカも食いついてきた。
何でだ?

「何で?たんなる重さだよ?」

俺は素直にたずねる。

「ばかっ。察しなさいよ…」

「そうですわ。デリカシーが無いですわよ?」

「えっ?何で俺が悪い感じに?」

まったくわけがわからない。

「だから、察しなさいよ…」

「そうですわ。…重さですわよ?女ですもの。気になって当然ですわ…」

ん?どういう…あぁ、そういうことか。

「あっ……あぁ。…そういう事ですか。その…ごめんなさい」

「わかっていただけましたか?」

「わかればよろしい」

「ほんと、ごめんなさいでした…」

俺は、素直にその場で頭を下げた。

・・・
・・


「さて、改めて説明するね?…この失われた魔法ロストマジック「フリー」は、対象の重さをコントロールできる魔法なんだ。…この魔法は、人とか動物なんかの生きている相手は対象にできないんだ」

「そうなの?」

「少し残念ですわね…」

「ははは………続けるね?この魔法は対象が生きていなければ、どんなものにでもかけることができる魔法でね…昔の人たちは、主に物を運ぶときに使っていたらしいよ?」

「まぁ…考えられる使い方としては、一番無難ね」

「そうですわね。……切り倒した木などはどうなるのでしょう?生きていない物に入るのですか?」「良いところに気がついたね。それは…」

「それは?」

「それは?」

「…含まれるんだ。…だから、昔に作られたお城とかは全部、このフリーで素材を運んでいたらしいよ?」

「ちょっと待って下さいっ。確かに昔に作られたであろう古城などは見つかっていますが、すべて今では作れないであろう金属などが使われており、過去の文明が高度な技術を持っていたとされる証拠とされていますわ。けっして木造などではありませんわよ!?」

「確かに。使われたのは木じゃないよ?木を使った金属だからね。…チェンジクリエイトっていう失われた魔法ロストマジックを使って創られた物なんだ」

「チェンジクリエイト…ですか?」
「なにそれっ。失われた魔法ロストマジックって、そんな事までできるの!?」

「…やってみせようか?」

意外と簡単にできるしね。

「できるのですか?」

「うん。やろうと思えばね?」

「ならやってみせてよ。この目で見るまでは、信じられないわ…」

「確かに。わたくしもにわかには信じられませんわ…」

「わかった。んじゃとりあえず、この木はもとに戻して良い?」

「何で?その木に使えば良いじゃない」

「そうですわね。わざわざ新しい木を使うより、その方が良いと思うのですが…?」

「それはダメだよ。森の生態系を壊すことになるからね?」

「何で?」

「チェンジクリエイトは一方通行の魔法なんだよ。一度金属に変えたら、二度ともとには戻せなくなる。…だから、この木に使うわけにはいかないんだよ」

「そうなのですか…」

「うん。…だから、この木はもとに戻すよ?………まずは、フリー解除。続いて………「蘇れ黄泉帰れ、仮初めの死から解き放たれ、今その鼓動を再び刻まん…「リブレス」」っと、これでもと通りだよ」

どしんっ
と地面に木が落ちる。
同時に、地面が激しく揺れた。

「………すごい…わね」

「えぇ。…わたくしたちまで揺れるなんて…」

「んじゃ、その辺の枝を拾って………「変われ代われ、創造せし物へと…チェンジクリエイト」」

「わぁ…」

「綺麗…ですわね…」

魔法を唱えた俺の手の中には、キラキラ輝く翡翠色の金属があった。

「これが、昔よく使われていた金属だよ。…さわってみる?」

「良いのっ!?」

「良いんですの!?」

「うん。それくらい、どうってことないと思うよ?」

「ではまずわたくしから………意外と冷たいんですのね。少し気持ちいいですわ…」

「次は私ねっ。………うわぁ、本当だ。冷たくて気持ちいいっ」

「指輪にして欲しいですわね。きっと良い物になりますわ…」

「そうね…確かに。とっても良い物ができそうっ」

「作ろうか?二人用に?」

「良いの!?」

「良いんですの!?」

「うん。それくらい簡単だからね…」

「では、お願いいたしますわ…」

「うんっ。お願いっ」

「それじゃ、金属を渡してくれる?」

「わかったわ。…はい」

「ありがと。…それじゃあ………「有より成れ、等価の変革「アイテムクリエイト」」………できたよっ。はい、どうぞ?」

「ありがとうっ」

「ありがとうございますわっ」

「良いって事よ…だよ」

「大切にするわね?」

「わたくしも、大切にいたしますわ…」

「喜んでもらえて良かったよ。………さてと、本題に戻ろうか?」

「本題って?」

失われた魔法ロストマジックについて…ですわね?」

「そう。…マリアさん?この魔法…どう扱いますか?」

「……………」

「……………」

二人して黙り込んでしまう。

「俺としては、少しずつ広めていった方がこの世界のためになると考えているんだが…?ランクの高い冒険者たちから広めていけば、問題は起きないと思うし…」

「そうですわね………わかりましたわ。わたくしの一存では決められませんが、わたくしとしては便利な魔法が増えるのは、良いことだと思います。この件は、ギルドマスターに召集をかけて、会議にて決めたいと思いますわ…」

「わかりました。その時は俺も参加した方が良いですよね?」

「えぇ。お願いいたしますわ」

「私も参加するわ。私が見つけたんだから、最後まで見届けるわ」
「わかりました。…それでは、戻りましょうか?」

「そうですね。特にもうやることはないですし?」

「そうね。街に戻りましょう」

俺たちは、街に戻ることにした。

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