命の重さと可能性の重み

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第三十話

「声は驚いていても、心底驚いているというわけではないようですわね…」

「まぁ…入口近くで案内嬢のような事をしていた人が、ギルドマスターだというのは驚きましたが、ヒントはありましたから…」

「ヒントですか?それはどのような?」

「一つ目は、エリカと親しげに話をしていた事です。ただの受付嬢なら、Sランクのエリカとあんなに気安く話はできないと思います」

「なるほど…」

「二つ目は、この部屋のことです…。ギルドの一番奥の方にある部屋であり、なおかつこんなに豪華であるという点。ただの応接室なら、こんなに奥にしなくていいですし、こんな大きな仕事机はいらないはずです」

「たしかに…」

「そして最後の三つ目は、エリカの言葉です。俺がエリカに「奥の机の方に座らないのか?」と聞いたら、エリカは「あそこは彼女の定位置」だと答えました。この部屋がギルドマスターの部屋ではないかと考えていた俺としては、そこの机が定位置という事はもしかして…と思っていたわけです…」

「すごいですわね…それだけの情報から、わたくしがギルドマスターではないかと考えつくなんて…。ではもう一つ試してみましょうか?…わたくしの種族はなんだと思われますか?」

「エリカと同じハイエルフではないんですか!?」

「ハズレです。わたくしは精霊族エルフィーなのですが、羽を隠しているのでよくエルフやハイエルフに間違われますの…」

「羽って隠せるんですか!?というか、精霊族エルフィーって羽がはえてるんですか!?」

「その通りですわ。…なんならお見せしましょうか?」

「いいんですか!?」

「えぇ、もちろん。ゲンナイ様は精霊族エルフィーにあうのは初めてのようですし…」

「よろしくお願いします…」

「では失礼して…「花ひらきてその身を表せ…「リリース」」」

彼女が呪文らしきものを唱えると、彼女の背中から光があふれる。

「これがわたくしの本来の姿ですわ」
そう言った彼女の背中には、薄く透き通りながらも輝きを周囲に放つ、何とも言えない不思議な羽がはえていた。

「きれい…です…とっても…」

「ありがとうございますわ」

「羽がはえるだけで、随分と印象がかわるんですね…さっきまではエリカの背を伸ばしただけな感じだったのに…」

「エルフやハイエルフと精霊族エルフィーの違いは、羽があるかないかの違いしかないと言っても過言ではありませんから…」

「そうなんですか?」

「えぇ、そうなんですの。それに、エルフやハイエルフと精霊族エルフィーはとても仲が良いので、一緒に暮らしている事が多いんですの…」

「へぇ…そうなんですか。…なら、エリカとマリアさんも一緒に暮らしてたんですか?」

「そうですね、エルフ国と精霊族エルフィー国は同じ森を領土としているので、必然的に集落にはエルフ、ハイエルフ、精霊族エルフィーが一緒に住んでいましたわ…。わたくしとエリカは同じ集落の生まれなので、わたくしは立場的にはエリカのお姉さんになりますわね」

「同郷なんですか…どうりで仲が良いんですね。…エリカのお姉さんということは、何歳なんでしょう?24歳くらいでしょうか…?」

「ふふふっ、そんなふうに見えますか?」

「えぇ。こんなに綺麗な事と、エリカのお姉さんという事を考慮してみました。…もしかして、もう少し若かったりしました?そうだったらすみません」

俺はそれくらいが妥当な年齢だと思ったのだが、もしかしなくても笑われるくらい間違っていたのか?
ただでさえ女性に年齢の話はタブーだと言うのに…

「確かに間違ってはいますが、嬉しい間違いですわね………エリカ?あなた自分の年齢を教えなかったんですの?」

「だって、言う機会なかったし…それに恥ずかしいんだものっ」

「確かにあなたは人族と同じ価値観を持ってしまっているようですが、わたくしたちからすれば、十分に若いんですのよ?130歳というのは…」

「130歳!?エリカってそんなに生きてるんですか!?」

「そうですわよ。エルフやハイエルフ、精霊族エルフィーに限らず、人族以外はどの種族も長命なんですの…」

「そうなんですか!………具体的にはどのくらい生きるんです?」

「1000は軽く越えますわ。長老くらいになると、2000年生きている方もいらっしゃいますわね」

「2000!?マジですか…すごいですね」

「エリカは130歳ですが、長命なわたくしたちから見るとまだまだ子供ですわ」

「子供で悪かったわねっ!」

「そういう反応をするから、子供だと言うのですわ…。もう少し寛容になりなさいな…」

「……………」

「さて…エリカは放っておいて、改めてわたくしについてですが、先ほどの長命だという情報を考慮して、何歳に見えますか?」

「わかりません…まったく」

「そうですわよね…さすがに難しすぎますわよね」

「えぇ…ほとんど、というより完全にノーヒントですから…」

「まぁしょうがないですわ、わたくしも答えを当てられたらこまりますもの…」

「そうですよねぇ…」

「えぇ」

俺とマリアは互いに笑いあう。

「マリアは265歳よ」

「「エリカ!?」」

「隠さなくたっていいじゃない。私はバラされたんだから…そのお返しよっ」

「確かにわたくしがバラしてしまいましたが、それとこれとは別問題でしょう?…まぁ怒りはしませんが」

「エリカの倍以上生きてるんですか…確かにお姉さんですねっ」

「普通の人族から見れば、わたくしはおばあちゃん以上なのですが、ゲンナイ様は何も思わないのですか?…それとも、ゲンナイ様がいた世界では、人はわたくし以上生きるのが当たり前なのでしょうか?」

「いえ、そういうわけではないんですが…」

「ならどういうわけですの?」

「うーん………女性にこんな事を言うのはアレなんですが…俺は見た目と中身さえよければそれでいいと思ってるんですよ。少し普通とはちがうらしいんですがね…」

「そうなんですの?」

「えぇ。ですから、マリアさんもバリバリドストライクです!!」

「あら、うふふ…ありがとうございますわ」

「いえいえ、とうぜんで「変態…」ってエリカ?どうした「変態変態変態」エリカ!?」

「今朝私の裸を見て、最高だって言ったのに…すぐ乗り換えるなんて、変態以外の何者でもないでしょ!?」

「いや、乗り換えるとかじゃ…」

「変態…」

「いや、エリカ?機嫌なおし「嫉妬してるんですの?」って嫉妬!?」

「そんなんじゃないわよっ!ただ、気に入らないだけよ」

「まだ出会って間もないみたいだし、そうかもしれないわね…。でも、気がついてないだけかもよ?」

「そんなことないわよっ。私は別に…嫌いではないし、どちらかと言えば好きだけど…恋愛感情ではないわ…」

「そう…ならそうなんでしょうね…。でも気をつけなさいよ?気付いた時にはもう遅かった…なんてことにもなりかねないんだから…」

「大丈夫よ。ゲンは私と一緒に行動するし、私から離れることはないもの…。絆があるからねっ」

「絆ねぇ…。それって可能性目録に書いてある可能性なのよね?…それってわたくしのもあらわれないかしら…?」

「そんな簡単に絆なんて結ばれるわけないじゃないっ」

「そうですね…話を少ししただけでは…」

『可能性、マリアとの絆が発生しました』

「えぇ!?」

システムメッセージが鳴り響く。
どうやら少し話をしただけで、マリアとの絆も結ばれたらしい。

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