ソウカとジョブと主質テスト

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 コンコン

「失礼します。ザジ・ホスト・全華を連れてきました」

 そう言って校長室に入るサキ。

「失礼します」

「入るでー」

「失礼・・・・・します」

 続けて僕らも入っていく。

「崎井君ご苦労。少々予定外の者もおるが構わんかね? サーシャ殿?」

「えぇ。構いませんわ。むしろ大勢の方が賑やかで良いんじゃないでしょうか?」

「それは良かった。では私はこれにて失礼するよ。これでも忙しいのでね」

「はい。お手数をお掛けしました」

「では、後は任せたぞ崎井君」

「任されましたわ。校長先生」

「うむ」

 そう言うと校長先生は満足そうに部屋を出ていった。

「さて、ではお話に入ってもよろしいでしょうか?」

 校長先生が部屋を完全に出た事を確認するとサーシャが切り出してきた。

「まずは自己紹介を。私の名前はサーシャ・ホステス・京歌。ザジとは幼なじみで同じ施設で育ちました。将来を誓いあった事もあるんですよ? 今は施設を出て全寮制の学校に身をおいています。今日はこちらの学校にジョブファイトを申し込みに来ました。以後よろしくお願いします」

 とても丁寧で流麗な言葉遣いだった。誰もが聞き惚れるような。しかしそれは僕の中の彼女のイメージとはかけはなれていた。

 ピシッ

 ん?? 何か今ヒビが入ったような?

「ではこちらも自己紹介を」

 そう切り出したのはもちろんサキだ。

「私は崎井園実。この学校の三年生で生徒会長をしています。ザジのフィアンセやってます。宜しくどうぞ」

 ピシピシッ。

 ん?? 何かまたヒビが入ったような?気のせいか?

「ワイは長谷川悠騎。ザジと同じ二年で親友や。よろしゅうな」

 普通だよな? 気のせいだよな。

「緑李・・・十佳。一年生。ザジ・・・お兄ちゃんの・・・お嫁・・・さん」

 ピシピシピシッ

 再びヒビが入る音がした。

「へぇー。そうなんですか。ザジったらモテるようになったのねぇ?」

 そう言ったサーシャは何故か笑顔をひきつらせていた。

「僕が最後か。僕はザジ・ホスト・全華です。ってあらたまって言う事でもないかな? 久しぶりだね? サーシャ。」

「えぇ。久しぶりね。昔みたいにサーねぇって呼んで良いのよ??」

「え? それはさすがに・・・・・。」

 パリーン

 とうとう割れる音がし、瞬間。

「ザジは私の物よ。私が好きなの」

「いいえ私よ。私の物でお婿さんなの」

「違う。それ。お兄ちゃん。私。好き」

 サキをかわきりに少女三人が言い合いを始めた。

「私のよ」

「私のよ」

「私。の」

 おさまりそうにない。これじゃ話ができないぞ。

「ちょっとみんな落ち着けって。話が出来ないじゃないか」

「ザジは黙ってて」

「ザジは黙りなさい」

「お兄ちゃん。メッ」

 一蹴された。そこだけはハモるし仲良いのね。でもこのままじゃなぁ。

「ユーキ。何とかしてくれない?」

「無理やな。しばらくはおさまらんやろ。触らぬ神になんとやらや」

「でもこれじゃ話が出来ないじゃないか」

「だいじょぶやて。しばらくすりゃ終わる。待っとりや」

「待てないよ。ケンカだぞ? 止めないと」

「あぁ。ほなら耳貸せ。とっときを教えたるさかい。ゴニョゴニョゴニョ」

「え? えぇ? えぇえぇ? そんなのでおさまるの?」

「だいじょぶやて。安心しいや。お前なら出来る」

「わかったよ。やってみる。ふぅ。」

 ため息を一つついて彼女達に向き直る。

「みんな? 僕はサーねぇもソノミもトオカちゃんも大好きだよ?(上目遣い)」

「「「………………」」」

 瞬間言い合いがやみ、みんな僕を見て固まっている。

「みんな? どうした」

「もう一回言って」

「もう一回言いなさい」

「もう一回。聞きたい」

「の?」

「もう一回言って」

「もう一回言いなさい」

「もう一回。聞きたい」

「へ? 言わないよ。恥ずかしいもん」

 僕はいてもたってもあられず赤くなった。

「「「(うぅ。可愛いい)」」」

・・・
・・


「はぁ。……落ち着いたね? じゃあ話を再会しよう? サーシャはジョブファイトを申し込みに来たんだよね? 誰に申し込むの?」

「へ? それはもちろんあなたにですわよ? だって一番でしょ?」

「「「………………」」」

 その言葉に僕らは呆気にとられた。

「何か可笑しくて? 私は主質テスト世界一なのだから一番強いであろう相手を選ぶのは当然でしょ?」

「それは無理だよサーシャ。僕には出来ない」

「何故ですの? 順位表の一番に名前があったではないですか」

 確かに僕は順位表の一番に名前がある。でもそれは……

「サーシャ。よく見て。これは主質テストの順位表じゃないよ。これは学力テストの方。僕は学力は一番だけど、主質テストは0点なんだ」

「0点の全華でゼロカやしな」

 僕の言葉にユーキが補足する。

「そんな。嘘ですわ。だってあなたは私よりも上の」

「そこまでよ。それ以上は言わないで。「その事」は秘密なんだから」

 そう言ってサキがかばってくれた。

「良いですわ。では、この学校の主質テストNo.1は誰かしら? 私にふさわしい相手はどなた?」

「私がそうよ。この学校の主質テスト全学生第一位。通称クールラウンダーのソノミ。相手になるわ」

「では日取りはいつにします?私はいつでもよろしくてよ」

「いいわ。こっちだっていつでもね。何なら今からでも良いわよ?」

「それはさすがにダメだよサキ。せめて三日後ぐらいでないとフィールドが準備出来ない」

 フィールドとはジョブファイトをする会場の事で許可をとったりの準備に三日ほどかかるのだ。

「では三日後でよろしいじゃないですか。場所は何処になさいます? あなたが決めて良いですわよ?」

「じゃあ公式と同じくこのダイスを使いましょう」

 そう言ってサキが取り出したのは本当に公式戦で使われる場所決めのダイスだった。

「あなたがふって良いわよ?」

「では遠慮なく。フッ」

 コロンコロンコロッ

 明るい音をたててダイスが転がりやがて止まる。

「ここですか」

「不服はなくてよ」

 出た目は建物。この学校だった。

「きまりやな。三日後にこの学校か」

「楽しみですわ」

「えぇ楽しみね」

「「あなたを倒せるのだから」」

 こうしてサキとサーシャのジョブファイトが決まった。俺はどっちに勝って欲しいのだろう?少し複雑だった。

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