ギャルゲの世界で二重人格!

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第六話

「着いたよ、ここが大浴場だ」

「うわぁ……広いですね!」

 俺は今感動していた。
 こんなに豪華な風呂は、昔両親の結婚20周年旅行で行った、一泊2万円くらいした旅館でしか見たことない。
 いや、もしかしたらそれ以上かもしれない……。

「この大浴場には、いくつかのお風呂があってね? ジャグジーや波の出てるものもあるんだ」

「ふへぇ……そうなんですか」

「ふふっ。僕のお勧めは炭酸のお風呂かな。しゅわしゅわして、不思議な感じなんだよ」

「そうなんですかぁ……」

「……さてと、それじゃあ先に入っていてくれるかい? 僕は水着に着替えるからさ?」

「あ、はい。わかりました」

「ふふっ。それじゃあ楽しんでね?」

 そういうと、京さんはいったん浴場を出ていった。

「さてと…………どこから行こうかな? まずは全部見て回ろうかな?」

 この大浴場の広さは、縦横300メートルくらいだと来る途中で京さんから聞いた。

「こんなに広いと、迷っちゃわないかが心配だな……」

 大丈夫! 案内板が色々な場所に置いてあるからさ。
 そうなのかい?
 それに、最悪壁伝いに歩けば大丈夫だろ?
 …………それもそうだね。
 ってことで、ジャグジーに向かうぞ?
 え? なんで?
 そこに雪奈先生がいるからさ。
 …………あぁ、そういえば。
 ここに来た目的を忘れるなよ? あくまでも、好感度を上げるためだからな?
 そうだったね。
 ってことで行くぞ? そこに案内板があるだろ? それに従っていくぞ?
 わかったよ。

 そうときまれば、俺はジャグジーのあるほうへと向かった。

・・・
・・


「あら? 博樹君ではないですか? どうしてここに……?」

「雪奈先生?」

 ジャグジーの場所に行くと、本当に雪奈先生がいた。

「今の時間は水着だからよかったものの、ここはお風呂ですよ? 裸の女の子がいたらどうするつもりだったんですか……?」

「大丈夫と言われたので来たんです。さっきトレーニングルームで京さんに会いまして、かるく走って汗をかいたからとここに誘われたんですよ」

「そうなんですか……? なら、その京さんは今はどこに?」

「水着に着替えてくると言ってたので、もうすぐ来ると思いますよ」

「わかりました。とりあえずは信じることにしましょう……」

「ありがとうございます。……それで、雪奈先生はなんでここに?」

「私ですか? 私はこの時間はいつもここにいますよ。点検という名の休憩です」

「休憩って……それでいいんですか?」

「良いんですよ。ここは私が作った場所なので、すべてのお風呂を毎日点検する義務があるのです!」

「そうなんですか」

「あ、あれ? 驚きませんね?」

「少しは驚いていますよ? あんなに完璧に見えた聖女のように思えた雪奈先生が、実は意外とおちゃめなんだと知って……」

「聖女のようだなんてそんな……。さすがに照れます……」

「そうですか? こういうのは言われ慣れていると思ってましたよ」

「言葉自体は、たまに言われることはありますよ? ですが、そんなにはっきりと見つめられて真剣に言われたのは初めてだったので……」

「そうなんですか……」

「そうなんですよ……」

「………………」

「………………」

「あれ? まだ入っていないのかい? ……って、雪奈先生と話してたのか。早く入りなよ。気持ちいいよ? 僕も隣の炭酸のお風呂に入るからさ?」

 短い沈黙を破ったのは、京さんだった。

「そ、そうですよね。それじゃあ失礼して……」

 京さんに促された俺は、少し離れたところにあった岩風呂に入る。

「あ、本当だ! 気持ちいいですね!」

 入った瞬間、とろけるように感じた。
 全身の筋肉がゆるみ、思わず笑顔になってしまう。

「でしょ? ここは雪奈先生が、ここで暮らすみんなにくつろいでもらおうと考えて、私財を投じて作ってくれたんだよ!」

「そうなんですかぁ……」

「そんな、だいそれたことじゃないのよ? 私もお風呂が好きだったし、みんなも好きになってほしくてね?」

「ありがとうございます、雪奈先生!」

「ほんとだよね。ありがとうございます、雪奈先生」

「ふふふ。それじゃあどういたしましてと言っておくわね?」

 雪奈先生はどこか嬉しそうに笑う。

「……それじゃあ私は違うところに行くわね? 二人とも、ゆっくり楽しんでいってちょうだい……」

 そういうと、雪奈先生はジャグジーのお風呂からあがる。

「長湯してのぼせないようにね?」

 雪奈先生はそのまま違う場所へと行ってしまった。

「僕はしばらくここにいるから、博樹君は別のお風呂も楽しんできたらどうだい?」

「そうですね。そうします」

 京さんに言われ、俺は岩風呂からあがる。

「それでは、またあとで……」

「うん。また19時にね?」

「はい」

 俺はそういうと、まだ見ぬお風呂に期待を持って移動した。

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