欠陥魔力騎士の無限領域(インフィニティ)

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学年無差別トーナメント⑯| 決勝戦⑦陵陵子の葛藤と陵陵の覚醒

欠陥魔力騎士65

学年無差別トーナメント⑯ 決勝戦⑦陵陵子の葛藤と陵陵の覚醒

(僕は……負けたのか)

 そこは不思議な空間だった。
 上下左右の感覚が無いにも関わらず、しっかりと立っている感覚がする。
 目を開けているはずなのに閉じており、しかし周囲は知覚できる。

(無様だな、俺)

(君は……僕?)

 その空間になれた頃、目の前に僕……いや、俺が現れる。

(いつからそんな甘ったれになったんだ?)

(誰かに期待されるのはいい、だがその期待に安心している)

(どうせ最後は自分以外の誰かが助けてくれる)

(そんな甘ったれな考えに、いつからなった?)

 そんなことはない……はずだ。
 僕は努力を怠らなかったし、今日だって僕の力で勝つつもりだった。

(嘘だな)

(ならばなぜ今そこで倒れている?)

(なぜそこから立ち上がろうとしない?)

(なぜ男に戻らない?)

 ッ!! そ、それは……

(お前は弱い、誰よりも)

(お前は弱い、いつだって)

(最弱で無能……そんなお前に何ができる?)

 僕は……僕には、なにもできない?

(ほらみろ、受け入れた)

(抗わずに、受け入れた)

(敗けを認めて、受け入れた)

(自分が弱者だと、受け入れた)

 僕は……無力。
 僕は……無能。
 だけど……ッ!!

「それが、どうしたァァァァッ!!」

 そうだ、俺は無力な男だった。
 門下生の誰よりも弱く、才能なんて欠片も無い。
 いつでも誰かの温情で生かされ、しかしそれに悔しさを感じて泣いていた。

「だから、どうしたァァァァッ!!」

 そんな俺に、先生は道を示してくれた。
 こんな俺でも、あいつは確かに認めてくれた。
 こんな俺にさえ、仲間と言う希望が生まれた。

「俺は陵陵だッ!! それ以外の何者でもないッ!!」

 そうだ……そうだった。
 俺は嬉しかった。
 俺は楽しかった。
 生まれて初めて期待されて、舞い上がって自分を見失っていた。

「俺の名前は陵陵。外道流の陵陵だッ!!」

(だったららしく生きればいい)

(あるがまま、自分と言う存在を生きればいい)

(お前に期待してくれたすべての人に、その存在で感謝を示せ)

(お前は今、生まれて初めて自分以外のために刃をとるのだから)

「あばよ、俺の弱さみささぎりょうこ。俺は俺を取り戻すッ!!」

 瞬間、世界が変化する。
 目の前には流鏑馬陵てきがいて、後ろにはかけがえのない仲間がいる。

「帰ってきたぜ、流鏑馬陵。ここからは僕じゃない、俺の喧嘩だッ!!」


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