欠陥魔力騎士の無限領域(インフィニティ)

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エピローグ①| 天通美龍(天通限無弟)の軌跡

欠陥魔力騎士34

エピローグ① 天通美龍天通限無弟の軌跡

 あれは、ご主兄様ごしゅにいさまが天通家をお出になった翌日でした。

「美龍よ、大事な話がある」

「はい、お父様」

 私は当主の間に呼ばれ、父と二人で向かい合った。

「後継者として指名した天通限無が我が家を出ていった。ゆえに私は、次の後継者を今から選ばなければならない……」

「美龍は……美龍は嫌ですッ!! ご主兄……お兄様以外と結ばれることなど考えたくもありませんッ!!」

「美龍よ、その気持ちはわかる。私自身、彼以上の適任者が見つかるとも思っていない」

 ならばなぜ、父はこんな話をなさるのでしょうか?

「美龍よ、私は彼以外に後継者を選ぶ条件として、彼でもできなかった「十指創解じゅっしそうほどき」を使えるものとする。そんな男が現れたなら、私はあらためてその男に「天通限無」という名を与え、次期当主としようと思う」

「……わかり、ました」

 私はその条件に多少の希望を抱きつつ、半分以上が絶望の中にいた。

「あー……ごほん。話は変わるのだがな? 美龍よ、私の知り合いにこんな薬を作った男がおってな?」

「……??」

 そう言って父が渡してくれたのは、2つの飴玉だった。

「1つ目は男になる薬。もう1つが女に戻る薬だ。美龍よ、お前が男になったなら、次期当主となりこの家をつげる」

「それではなぜ、女に戻る薬があるのですか?」

 確かに私が男になれば、今の才覚をより伸ばせるだろうし、創解を使えるようにさえなるかもしれない。

「私はこれより、彼を全力で探す。あの男の事だ、創解を諦めたとは思えない。探し出せたその時には、必ず私たちの知るよりも強くなっているはずだ」

「もちろんです。ご主兄様であれば、誰にも負けない強さを手にしているはずですッ!!」

 それこそ、十指創解以上の技を覚えているかもしれない。
 天通流は最強と呼ばれる流派の1つだが、他にも最強と呼ばれる流派は数多くある。
 ご主兄様であれば、それらすべてを覚え尽くし、絶対に更なる高みへと上っているはずッ!!

「ならばこそ、お前は強くなるのだ。もしお前が創解を覚え、天通限無となった後に、彼と戦って敗れるような事があれば……」

「わたくしは女に戻り、ご主兄様との関係も元通りというわけですねッ!!」

 先程までと違い、わたくしの胸は希望で一杯になっていた。

「それでは美龍……いや、天通限無よ。更なる修行に励むのだ」

「はいっ、父上。わたくしは頑張りますッ!!」

 ご主兄様以外になびくなど論外。
 この身、この心のすべてはご主兄様のために……。 

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「そうして男になったわたくしは、無事に創解を覚え、正式な天通限無となりました。その後は……ご主兄様も知っての通り、この学園へと入学し、ご主兄様と再会したのです」

「と言うことは、最初から僕に負けるつもりで……?」

 もしそうだとしたら、僕はとんだ噛ませ犬だ。

「いいえ、もちろん違いますわ。わたくしは、確かに全力を出して挑み、敗れました。それに間違いはございません」

「なら……よかった、のかな?」

「はい。美龍はこうして再び、ご主兄様のモノとなれましたッ!!」

 そう言うと、美龍が思いきり抱きついてくる。

「それにですね? 男となったのも、花嫁修行の1つと思えば、どうということはありませんでした……」

「どういうことだい?」

「わたくしは男になったことで、男の弱点を知り尽くしました。それにより、ご主兄様への夜のお勤めも、初めてとは思えない働きを約束できますッ!!」

「な、な、な、なに言ってるのよぉぉぉッ!!」

 美龍が色っぽい仕草で僕の下腹部を撫でようとしたところで、大和さんが止めに入る。

「邪魔をしないでいただけますか? 第二夫人ならば第二夫人らしく、分をわきまえなさいッ!!」

「冗談じゃないわよッ!! 何であんたなんかにッ!!」

 そう言うと大和さんは、美龍へと掴みかかり、そのまま喧嘩になる。

「ふふっ、はははっ」

 僕はその光景に思わず吹き出し、笑いがおさえきれなくなる。

(見捨てられていたわけじゃなかったんだ……)

 その事がただただ嬉しく、僕はこれから騒がしくなるであろう日常へと思いを馳せた。


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