欠陥魔力騎士の無限領域(インフィニティ)

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入学式 | 二人の天通限無

欠陥魔力騎士2

入学式  二人の天通限無

「新入生諸君、入学おめでとう。私がこの神薙学園の学園長、神薙武かんなぎたけるだ。これからの数年間、この学園を有意義に使ってくれたまえ。我が神薙学園は名門ではあるが、それは君たちの実力とはまったく関係ない。ならばこそ、君たちは君たちの力でもって、君たちの道を歩んでくれ。……私からは以上だ。諸君らの健伸けんしんを祈る」

 入学式として私たち新入生はまず、体育館に集められた。
 そこでは各教師の紹介や、これからの授業などの説明。
 そして今ようやく、学園長だと言う若い男の訓示が終わり、残すところは新入生代表挨拶のみとなった。
 この入学式最後の新入生代表挨拶には、入試の成績でトップの男女が選ばれる。
 ……つまりは、私ともう一人が代表というわけだ。
 天才たるこの大和光にかかれば、この神薙学園の入試だって、そこそこの難易度でしかなかった。
 当然のごとく満点であり、新入生代表に選ばれたわけだ。

「続きまして、新入生代表挨拶。男子代表、天通限無あまつげんない

「はい」

 天通限無!? ってことは昨日の彼がもう一人の代表ってこと!?
 今年は満点での入学が二人で、男女だとは聞いていたけど、やっぱり私の目に狂いはなかったのね。

「新入生女子代表、大和光やまとひかる

「はいっ」

 私は内心のわくわくをおさえながら、壇上へと向かう。
 ちょうど私が上がる道の反対から、男子代表である天通限無だろう男が私の歩みに合わせて歩いている。

「新入生代表挨拶は、毎年の入試トップ男女二人が選ばれます。つまりは、今年の一年生の頂点がこの二人と言うわけです。新入生の皆さんは、是非とも競い合い、トップを目指してください」

 私と天通限無が壇上についたところで、司会の女性から補足が入る。
 私はその言葉を聞きながら、顔をあげて天通限無かれを期待と共に見たのだが……。

「誰よあんたッ!! 天通限無じゃないわよねッ!?」

 私が目にした壇上に立つ彼は、昨日見た天通限無ではなかった。

「え、えっと? 俺は確かに天通限無と言う名前なんだけど。誰と勘違いしてるのかな……?」

 優しげな顔と声をしている天通限無(?)は、困ったように私に問いかける。

「だ、だって、あんたとは昨日会ってないものッ!! 昨日私を助けてくれたやつが、天通限無のはずよッ!!」

 昨日私を助けてくれた男。
 天通流無手の型という未知の技を使った男。
 確かに彼は、天通流皆伝の天通限無と名乗ったのだ。

「うーん……困ったなぁ」

 この突然のトラブルに、会場もざわめき始める。

「静粛に、静粛にッ!!」

 このままではまずいと思ったのか、学園長だと名乗っていた男が場を静める。

「えー……大和光さん? そこの彼は、確かに名を天通限無と言う。言うのじゃが、実はこの学園にはもう一人天通限無と言う名の男が在籍しておるのだよ」

 学園長……神薙武は、私を諭すように語り始める。

「天通限無と言う名は、現在の天通流の当主が授ける名前であり、つまりは次期当主が名乗る名前なのだよ。したがって、個人の名前ではない。そこの代表として立っている彼は、家を出た兄の代わりに、天通流の後継者となった男というわけだ……」

「なん……ですって?」

 つまりはこういうことだろうか? 私が昨日出会った天通限無は、家を出た兄の方であり、ここにいる彼もまた、たしかに天通限無だと?

「えっと、改めて名乗らせてもらうね? 俺は天通流免許皆伝、天通限無。この学園にいる不出来な兄に代わり、天通流の強さを証明するために、この学園に来たんだ」

 そう言った彼の目は、どこか寂しそうであり、しかし同時に強い熱を帯びていた。

………………
…………
……

「さてさて、多少のトラブルはあったけど、無事入学式が終わって良かった良かった。私がこのクラスの担任を勤める、九条錬くじょうれんだ。これから一年、よろしく頼む」

 あの後……結局は代表挨拶として決められている原稿を読み、一応入学式は締め括られた。
 私たち新入生は各クラスに移動。
 そこで担任の先生によるホームルームが行われていた。

「一応知ってると思うが、もう一度言っておこう。ここ神薙学園のクラス分けは、そのまま実力を表している。ここにいる30人は、一人を除き……つまりは29人が、入試の成績の上から順に選ばれていると言うわけだな」

 私は担任の先生の言葉を聞きながら、どうにも落ち着けなかった。
 なぜなら、

「そしてその特殊な1名と言うのが、先程の入学式での一件にも関係ある、もう一人の天通限無というわけだ」

 そう、今この教室内には、二人の天通限無がいる。
 私が昨日出会った方の天通限無。
 天通流皆伝で、天通流無手の型と言う未知の技を使う男。
 そしてもう一人が、先程壇上で初めて出会った天通限無。
 天通流免許皆伝だという、今年の男子首席入学者。

「だがまぁとりあえず、一人ずつ自己紹介してもらおうかな? 限無……兄の方な、彼も自分で言う方が楽だろうしな」

 そういうと担任は、椅子に座ってから扉付近の生徒を指す。

「んじゃ明石あかし、お前からよろしくっ。順番は一列ずつな。……はい、始めっ」

「え、えっと、男子次席入学の明石薫あかしかおるです。メイン武器は双剣を使ってます。よろしくお願いします」

 急にあてられたにもかかわらず、無難に自己紹介をする明石君。
 彼を皮切りに、一人ずつ自己紹介が始まった。

………………
…………
……

 そうして自己紹介は進んでいき、ついにあの男の番になった。

「男子首席入学、天通限無です。メイン武器は、主に長剣。一応天通流免許皆伝なので、天通流の技はすべて使えます。去年入学した兄が、とても残念な成績を残してしまったので、それを払拭するために入学しました。よろしくお願いします」

 なんか嫌な感じ。
 同じ天通限無でも、もう一人とは雲泥の差ね。

「女子首席入学、大和地区大和島からまかりこしました、大和光です。メイン武器は特に無いです。オリジナルで私が作った、千変万化という多種複合型の武器を使います。よろしくお願いします」

 私の番を無難に終わらせると、私の意識は再び昨日出会った方の天通限無に向かう。
 成績上位ではないのに、このクラスにいる理由。
 弟からなぜ、こんなにも貶されるのか?
 なぜ兄なのに、同じ学年になっているのか?
 疑問は色々あるが、とりあえずは行幸だ。
 昨日の約束通り、無手の型について聞くための手間が1つ減った。
 この広い校舎の中から探すのは、正直めんどくさいと思っていたので、同じクラスで良かったと思う。

「前年度首席入学、天通限無です。メイン武器は長剣。天通流は皆伝です。察してる人もいると思いますが、留年してます。皆さんの1つ年上ですが、どうぞよろしくお願いします……」

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「前年度首席入学、天通限無です。メイン武器は長剣。天通流は皆伝です。察してる人もいると思いますが、留年してます。皆さんの1つ年上ですが、どうぞよろしくお願いします……」

 教室の前の扉近くから始った自己紹介は、一番奥の席に座る僕で終わった。
 やはりみんな、僕の自己紹介に驚いているようだ。
 去年の実技の成績が良くなかった僕は、点数が足りずに留年となった。
 一応それ以外の成績は良かったし、去年の首席入学ということもあって、今年度の上位クラスに入ることになったのだ。

「全員終わったな? 気になることなどもあると思うが、今日はこれで終わりだ。この後は施設見学などを、各自で行ってくれ。それでは……解散」

 そう言うが早いか、先生は教室を出ていってしまう。

「さてと、それじゃあ僕は帰ろうか「約束、忘れてないわよね?」な……」

 僕が身支度をすませて寮に帰ろうとすると、大和さんが笑顔で声をかけてきた。

「忘れている……わけではないよ? ここだと話しにくいだけで。大和さんはこの後、施設とかの見学でしょ? 僕はこのまま寮に帰るから、また今度というわけでは……「い・い・わ・よ・ね!?」わかりました」

 大和さんの剣幕に押され、僕は渋々彼女に付き合うことにした。

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