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硬革一式装備完了

「遅かったですね?」

「少し待ちましたよ?」

 俺たちが玄関に着くと、既に二人は準備を終えて立っていた。
二人の格好は、ワンピース? らしきもの着た上からローブというか布切れを羽織っており、なぜかズボンを履いていた。
あれはワンピースではなく、長いだけのシャツか何かなのだろうか?

「そっちが早すぎるんだと思うよ? ……俺達もそれなりに早く来たんだぜ?」

「準備が早いのはいいことだと思いますが、早すぎるのも問題だと思いますよ? まぁ、主人を待たせないのは当たり前ですが……」

「主人……って、おいおい。俺はお前のご主人様にはなったが、あの二人の主人になった覚えはないぞ!?」

「あら? 先ほど話したではないですか」

「私たちは良さそうな殿方を見つけたら、ついていって子種をいただくと……」

「つまりは夫婦の関係になるということですよ?」

「私たちが嫁で、あなたが主人。主人であっているではありませんか?」

「……あぁ、そういうことか……」

「「そういうことです」」

「ではラン様? どこに行きましょう? まずは昨日の清算ですか?」

「あぁ、先に金を作っちゃおう。その後で探索だな。今日は日常の塔の一つ目に向かうつもりだ。場所はわかってるんだよな?」

「はい、ラン様。大丈夫ですよ。……まぁ、そちらの二人もしていると思いますが……」

「そうなの?」

「ええ、知っていますよ」

「この世界……日常の世界の塔については、一通り……ね?」

「じゃあ、間違えることはないな。俺は早く上に行きたいからな」

「先の方を攻略している従兄妹の方に会いたいんですよね?」

「ま、まぁそうなんだが……。面と向かって言われると、少し恥ずかしいな……」

「心配なのですね?」

「女の子ですか?」

「一応妹みたいな存在になるかな? 一応ね」

「それは確かに心配になるわね」

「いろいろありそうですもの……ね?」

「多分大丈夫だとは思うけどな……。あいつは結構強かったと思うし」

「そうなのですか?」

「あぁ。……確か、選んだ種族は獣人の猫だったかな? 容姿も自分で決めたから、かなり可愛かったはずだ」

「それはすごいですね」

「猫ってあまり聞かないわね?」

「でも確か、ここに泊まっていたような……?」

「そうなのか!?」

「えぇ……」

「確か泊まっていたと思うわ……」

「その時はどうだったんだ? 誰か付いて行ったのか?」

「その時は確か……」

「誰もついて行けなかったと思うわ」

「すでに八人パーティーだったから」

「私たちがは入れなかったのよ」

「そうだったのか……」

「それはそうとラン様? 先に売りに行ったりしないのですか?」

「あぁそっか。確かにそのほうが先だな。んじゃまずは、ここまでに拾ったアイテムを売りに行きますか……」

「「わかりました」」

「では行きましょう」

 俺は、三人に導かれて近くの道具屋に向かった。

・・・
・・


「結構な額になったな……」

 道具屋でボス以外のキャラが落とした牙やら皮やら毛皮やら羽やらを全部売った結果、合計で十万以上になった。
といっても、一つあたりの値段は2000~5000円だったので、数がそれだけあったということだ。
これで俺の所持金は、全部で十二万五千五百円になった。

「かなり懐が潤ったから、ついでに装備を見てみるか? 具体的には防具とか剣とか弾とか」

「確かに。そういえばラン様は防具を装備していませんし、剣もひとつしかお持ちでなかったですね。……それに、ガトリングをお持ちなのに通常弾はお持ちではなかったですよね?」

「実はそうなんだよね。これからは全部必要になってくると思うから、塔に行く前に揃えたいんだけど、いい店知らない?」

 俺がそう言って姉妹に話を振ると、姉妹が驚いた顔をしていた。

「よくそんな装備でここまで来れましたねぇ……」

「ヒカリさんが頑張ったんですか?」

「いいえ、違いますよ? 戦闘は全てラン様が行いました。私はここまで来るのに、戦闘に参加したことは一度もありません。始まりの塔のボスなんか、私とラン様が分断されてしまったので、蘭様お一人で戦って倒してしまわれたのですよ? 従者としては少し……いいえ、かなり物足りないくらいですよ」

「ラン君って……」

「そんなに強いの?」

 姉妹は二人して呆れたような顔をしている。
確かに、戦績だけ見るとかなり俺って強いよな。
まぁ、素の戦闘力はあまりないのが実際のところなんだが…………
俺の戦闘は、ほとんどスキルに頼ってばかりだからな。

「実は、ほとんどスキルに頼りっぱなしで、そんなに戦えるわけではないんだよ。スキルが効かない相手になったら、お手上げだね。だからまぁ……これからみんなには俺の素の戦闘能力を高めるために、組み手的なことを手伝って欲しいかな……?」

「確かに。ラン様がスキル以外を使って戦闘しているところを見たことは…………ないですね。わかりました。私に任せてください!」

「「私たちも力になりますよ!」」

 俺の弱気な発言に、みんなが笑顔を返してくれる。

「ありがとう」

 俺は素直に感謝を伝えてはにかんだ。

「それではラン様? 買い物に行きましょう?」

「「案内します!」」

 俺は再び三人に導かれ、装備の買い出しに向かった。

・・・
・・


「んで……っと、結局残ったお金は五万か……。だがまぁ、いい買い物だったな」

 買い物を終えた俺は、気分がとても充実していた。

「大勝利でしたね?」

「あれくらいなら……」

「できて当たり前ですわ……」

 三人の買い物は、一言で言うと鬼だった。
まず最初にすべての武具屋を見て回り(といっても近くにあった数軒だけだが)、値段が一番安い場所を選び出す。
そこから更に、別の場所で同じ値段で買うわよ? と半ば脅し、すべての店で定価より安く買っていた。
見ていた俺としては、少し相手がかわいそうに思えたくらいだ。

「結果は弾が3000に、硬革の防具一式か。本当にいい買い物だったな……」

「ラン様は、戦闘ではスキルを使うのが基本ですので、弾は強敵……ボスくらいにしか使わないので、少し買いすぎな気もしますが、あった困るわけでも無いのでいいでしょう」

「硬革の装備は初期装備の中では一番いいと思う……」

「一式揃えたから、追加効果で防御が上がるのがいい……」

「確かにそうですねぇ。今日はいい買い物をしました……」

「久しぶりに燃えた……」

「うん。熱が入った……」

「三人ともありがとう。……ってそうだ! 三人の武器と防具を買ってないよ!」

「大丈夫ですラン様。私はこの身一つで十分です……」

「私たちも大丈夫……」

「装備は一式持ってるから平気……」

「そうなんだ……」

「ですから、お昼にしませんか?」

「「さんせ~い」」

「わかった、お昼にしよう。いい店によろしく!」

「「かしこまり~」」

「では行きましょう!」

 俺は三度導かれ、美味しい(であろう)店に向かった。

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