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始まりから日常へ

ブーンブーンブーンブーンブーンブーン、チーン

 先ほど降りた時より少しだけ時間をかけ、エレベーターが最上階につく。
どうやら、人数が増えると遅くなるようだ。

「さてと、上まで来たわけだが。さすがにボスはいない……ようだな?」

「そのようですね、ラン様。ところで、ここからはどう進めばよいのでしょうか? ここは最上階なのですよね?」

「そういえばそうだな……どうすればいいんだろう?」

「とりあえずは、あちらの扉を開けませんか?」

「あぁ、あそこか……。ここも、入口と同じ仕組みかな?」

「試す価値はございますね」

「ってことで……「ひらけゴマ」」

 入口にしたのと同じように、扉に手を当ててキーワードを唱える。
すると扉が開き、目の前に下りの階段があらわれた。

「これを下りればいいのか?」

「そのようですね。行きましょう、ラン様」

 ヒカリと一緒に、扉の外に出る。
すると、扉から出た瞬間には後ろの扉は閉まっていた。

「これはなんだ……?」

「案内図……のようでございますね。この塔の攻略ルートでしょうか?」

「たしかに……そんなかんじだな。……なになに? これによると、五階に出口があるらしいな。やはり、この階段を下りるのが正解というわけか……」

「それが正解だと思われます」

「んじゃ行くか」

「はい、ラン様」

 俺たちは、二人で一緒に階段を下りて行った。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「ここから外に出られるのかな?」

 道中なにごともなく五階まで下りてきた俺たちの目の前には、また扉の絵が描かれた空間が広がっている。
おそらくここから先に進めるのだろう。

「ここからでれば、ダンジョンクリア……だよな?」

「おそらくですが、その通りでしょう。……やはり、キーワードを唱える必要があるようですが……」

 扉の絵はぴったりと閉じられており、行き止まりになっている。
やはり、キーワードは必要なようである。

「って事で……「ひらけゴマ」っと、うぉっ……」

 俺が扉を開けると、外から差し込んだのだろう眩しい光が目を襲う。
光が収まるのを待たなければ、外は見えないようである。

『おめでとうございます。始まりの塔クリアです。これにてプロローグが終了いたします。一部アクセス不可だった情報を解禁いたしました。新たな世界をお楽しみ下さい』

 扉が完全に開くと、システムメッセージが流れる。
すでに光は収まり、先の様子が伺える。
そこには…………

「ここは……なんだ?  廊下……だよな?」

 俺の前に広がった光景は、どこかの学校の廊下らしき場所だった。
左右に長く広がっており、後ろを見てみれば大きかったはずの扉は、どこかの教室らしき普通のサイズにかわっている。

「ラン様、ここが「日常の世界」です。先ほどまでいた世界である「始まりの世界」から、新しい世界へと来れたのですよ」

「日常の……世界?」

「はい、ラン様。ここは「日常の世界」です」

「何で知ってるの?  ヒカリ?」

「この世界のデータベースに記録をアクセスした見たからです。ラン様にもできるはずですよ?」

「俺にもできる?  つまりはそういうシステムがあると?」

「いいえ、違います。誰でもできる訳ではありません。神にだけです。アクセスと念じてみて下さい」

「わかった……『アクセス』」

 俺はヒカリに言われるままに、頭の中で念じてみる。
しかし、何も出てこない。

「できない……ってか、何も起きないぞ?  俺が半神だからか?」

「そんなはずは無いのですが……。神と名の付く種族共通で使えるもののはずです。ラン様も神と名の付く半神なのですから、使えるはずなのですが……どういう事でしょうか?」

「それは調べられないのか?」

「っそうですね。すぐに試してみます。『アクセス』」

 試してみると言うと、すぐに目を閉じて何かを探すような顔をするヒカリ。
なぜ俺が使えないのかを調べているのだろう。
俺が特殊な方法でこの存在半神になったからだろうか?
考え付く理由としては、それくらいしか思いつかない。

「…………わかりました、ラン様。ラン様の情報が半神として登録されていないようです」

「登録されていない? いったいどうして?」

「わかりません。この世界の最高神に問い合わせてみなければ……。ですが、私にはその権限がありません。もっと先の世界にいる最高神に、直接会いに行くしかありません」

「どこにいるかはわからないのか?」

「おそらくは……「契機の世界」にいると思われます。そこまでいけば、神の世界へとつながっている場所があったはずなので……」

「「契機の世界」か……わかった。とりあえず今の目標が攻略組に追いつく事だから、今は進んでいけばいいだろう。ここから次の世界に行くにはどうすればいいんだ?」

「全部で七つある「日常の塔」を制覇すればいいのです」

「七つもあるのか」

「はい、ラン様。全部で七つあります。順番はどこからでも良いのですが……塔によってレベルが違うので、1から順にクリアしていくのが無難でしょう」

「オーケー、わかった。んじゃ早速……って言いたいが、とりあえずは宿を探すか」

「そうですね。今日はもう疲れました」

「俺も疲れたよ。それで、案内は頼めるか?」

「大丈夫です。ついてきて下さい」

「了解」

 ヒカリがわかるというので、案内を頼む。
俺はヒカリの後ろについていった。

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