intenの俺の知識を聞けェェェ

inten

インテンの小説技法基礎講座⑨「ご都合主義の使い方=読者意識のコントロール法」

インテンの小説技法基礎講座⑨「ご都合主義の使い方=読者意識のコントロール法」

今回も少し難しいかもしれないが、いわゆるご都合主義と呼ばれる解決法の使い方と、それを用いるための読者意識のコントロール法について書いていく。

まず最初に、ご都合主義とはどういうものか?
ご都合主義と言うと、悪い方にとらえる人が多いが、ご都合主義と言うのは大抵物語をしっかりと見ていないにわかの人たちだ。
あらを探して貶めるための言葉として、ご都合主義と言う言葉を使う。
しかし、私の言うご都合主義は違う。
ご都合主義とは、「納得できる絶望の回避法」だ。

ここでリゼロを例に出そう。
最初の話でスバルはエミリアを助けたいと願って行動するが、実は彼自身は救うための力となっていない。
最終的にはラインハルトに助けられている。
しかし物語として楽しんでいると、絶望しているスバルたちを助けるラインハルトは、まさしく神がもたらした偶然だ。
様々な要因が重なった偶然で敵を排除したわけだ。
だがしかし、ここで「ラインハルトが助けに来る」と言う部分だけを切り取ってみたらどう見えるだろう?
前後を関係なく、この事実だけを抜き出してみるのだ。
どうだろう? 見事なまでのご都合主義だと言えないだろうか?
ラインハルトとスバルは出会っているし、ラインハルトならこう言うときに助けてくれるのも想像できる。
だがしかし、現実問題として考えた場合、彼が助けに来てくれる可能性がどれだけあるだろうか?
ほぼあり得ないと言えると思う。
しかし読み手として楽しんでいる私たちは、それを自然なものとして受け入れている。
ここが先程書いた読者意識のコントロール法なのだ。
常々いっているが、物語には絶望が必要だ。
そしてその絶望を打ち破ったとき、カタルシス=快感が得られる。
つまりご都合主義と言うのは、絶望を打ち破る偶然だと言える。
絶望している主人公が、藁にもすがる思いで繋いだ希望。
これが本当の意味でのご都合主義なのだ。

では前置きはここまでにして、具体的な使い方について書いていこう。

①絶望させるキャラをしっかりと描く(読者に感情移入させる)

これはどう言うことかというと、絶望は読者も感じていなければならないのだ。
読者がキャラクターと同じ視点で物語に入り込み、自分がそこにいたとしてもどうにもできないだろう状況を作る。
これがいわゆる絶望だ。
もう何も打つ手がない。
何をやってももう無駄でしかない。
そんな叫ぶしかできないような深い絶望を、読者にまず与えるのだ。

②絶望を解決(もしくは軽減)する方法(希望)を示す

これは使い方が難しいが、とても有効な方法だ。
リゼロを例に出すなら、スバル君のとっさの機転や仲間のサポートだ。
絶望的な状況にたいして、どうにかなるかもしれないという希望を見せる。
リゼロの場合なら、フェルトが助けを呼んでくれるかもしれない、フェルトだけでも助かるかもしれない(一矢報いている)。
パックがどうにかしてくれるかもしれない。
これらがこの希望にあたる。
しかしこれは更なる絶望(上げて落とす)のための希望であり、必ず最後は①の絶望がより深くなるようにする。
先程も書いたが、もうどうにもできない状況を作り出すのだ。

③奇跡(ご都合主義)を起こす

これは実はなんでもいいのだ。
例えば敵の致命的な弱点に気づいて倒すとか、主人公が隠された力に目覚めるとか。
リゼロの場合は、ラインハルトの登場だ。
敵と渡り合える味方の登場。
絶望を塗り替える圧倒的な希望。
これならもう大丈夫だろうと言う安心感。
この部分だけを切り抜けばご都合主義でも、物語としての流れの中ではそう感じないのだから。

以上がご都合主義の使い方だ。
つまりご都合主義とは、物語の中でうまく使うツールの1つと言うわけだ。

さて次に移ろう。
読者意識のコントロール法だ。
ご都合主義による解決は、そのままそれを読者に納得させる読者意識のコントロールが必要不可欠だからだ。
実はこれに一番適していたのが正しい主人公最強ものだったりする。
では簡単な手順を書いていこう。

①読者の視点となるキャラに目標を持たせる

これはつまり物語の終着点。
主人公などが成し遂げたいこと=夢や希望、目的の設定だ。
この目的の設定を最初に行うことで、この後に起きる様々な絶望に負けない主人公が描けるわけだ。
オーバロードを例に出そう。
主人公の目的は自分達の存在を刻むことだが、実は最初のバトルで読者が感情移入するのはガゼフ戦士長だったりする。
そのため彼の目的である村を守ることが絶望しないためのキーとなるのだ。

②しっかりと絶望させる(ただし希望は残す)

最初は必ず勝てそうに描く。
勝てると言う希望を持ちながら戦わせ、だんだんと追い込んで絶望させるのだ。
そしてどうにもならない状況になった所で最強である主人公=ご都合主義を出すのだ。

③圧倒的な力で解決する

感情移入しているキャラの目的は、あくまでも村を守ることであり、読者もそうなってほしいと思っている。
それゆえにそれを達成する方法は戦士長でなくても良いわけだ。
ここが読者意識のコントロール。
目的達成のために主人公が圧勝することで、目的を達成できた=カタルシスが生まれる。
さらに敵キャラを悪者としておくことで、悪いやつを倒したというカタルシスも同時に得られる。
こういう風に、読者の感じ方や考え方を把握してコントロールすることで、読者に自分の思った通りの快感を与えられるのだ。

さて、少し長くなったが、今回はここまでだ。
物語を構築する上ではずせないご都合主義と絶望。
これらは面白いと思った作品を分析してみると「なるほど」と理解できたりするだろう。
研究と研鑽は日々の努力がものを言う。
自分が感じた面白さがどこから来るのか?
まずはそのような所から物語を分析してみると面白いと思う。



コメント

コメントを書く

「エッセイ」の人気作品

書籍化作品