暗殺学園カトルカナル
第三殺 《四殺組曲》結成
 京塚先生の話が終わった後、クラス一同はすぐに地下にある体育館へ移動した。体育館で入学式を行うためだ。
体育館は地下にあるため校舎の職員室の横にある大きなエレベーターで下まで降りた。エレベーターは百人程入るように出来ていた。
体育館に着くと既に教師達が待っていた。この学園は一学年一クラスのため他のクラスがいない。だから待つのは篤人達だけとなる。
 (じゃあ別にわざわざ体育館で入学式する必要ないんじゃないかな?)
 篤人はそんなことを思いながらも形式上は必要なものだと理解している。
入学式が始まり理事長から話があった。理事長は驚いたことに二十代ぐらいの女性だった。長い黒髪を膝辺りまで伸ばし落ち着いた雰囲気のある女性だ。
 「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私はミッテルラント学園の理事長をしている南梓咲といいます。さて、皆さんご存知の通りこの学園は暗殺者養成学校の一つです。この国では公にはなってはいませんが政府主導の元、暗殺が行われています。貴方達はその暗殺者の卵ということですね。ただし、国が公認しているといえど、殺しは殺し。もう普通の暮らしには戻れません。これから過酷な訓練や指導がありますが耐えてください。それが、この国の…いえ、世界には必要なことなんです。以上で話は終わります」
 暗殺者はこの世界には必要不可欠なものだ。勿論誰彼構わず殺すのは違うが、法で裁くことが出来ない罪人、証拠を挙げられず捕まえられない罪人、世の中には罪人で溢れている。その罪人達を裁くのが暗殺者だ。政府の考えとしては、罪人が無害な一般人を何人も殺すぐらいなら罪人一人殺した方が断然いい、ということらしい。
 入学式が終わり教室に戻って《四殺組曲》を組む時間となった。
 篤人は早速愛実にパーティーを組んでもらうよう頼みに行っていた。
 「愛実、一緒に《四殺組曲》組まない?」
 「うん!私も今から誘おうとおもってたの!」
 愛実も自分を誘おうとしてくれていたのを聞き篤人は少しほっとしていた。
 「愛実、あと二人どうする?」
 「うーん………あ!志葉ちゃん誘わない?私、志葉ちゃんと一緒がいい!」
 篤人の心情からすると大歓迎この上ないのだが戸惑いは隠せなかった。
 「うーん……大丈夫かな?僕、模擬戦をした時に色々言われたんだよね…。僕がいると組んでくれないかも」
 「とりあえず誘ってみようよ!ダメだったらその時考えよ?」
 愛実はそう言うと篤人の手を引いて志葉の所まで連れて行った。
 「ねえねえ志葉ちゃん!私達と一緒に《四殺組曲》組まない?」
 愛実は篤人が臆しているのを横目にストレートに志葉に頼み込んだ。志葉は篤人のことを一瞥し一言。
 「……その男も一緒なの?」
 「その男って……酷いな……。ちゃんと名前で読んでよ」
 「……斬宗くんも一緒なの?」
 「そうだよ!篤人は友達だから!どうかな?一緒に組んでくれない?」
 「別にいいわよ」
 「やたっ!よろしくね、志葉ちゃん!」
 「ええ、よろしく」
 「斎中さんよろしくね」
 「……ええ」
 篤人は自分が思ってたより志葉が愛実に対して友好的であることに驚いていた。しかし────
 (愛実に対する態度と僕に対する態度が違いすぎる!)
 篤人は頭の中で悶々としていたが、志葉と愛実と組むことは出来た。しかしこれでもまだ三人、《四殺組曲》は名前の通り四人。まだ一人足りていない。
 
 「誰かまだ組んでない人いないかなー?」
 愛実の言葉に篤人は教室を見回してみた。見たところ結構な数がもう《四殺組曲》を組んでいた。このクラスは36人だから《四殺組曲》は9組作れることになる。
 「あ!あそこに寝てる子がいるよ!」
 愛実が指差した先を見ると机に突っ伏して寝ている女の子がいた。そう、女の子である。
 (僕、このままあの子が入っちゃったら男一人になってしまう…。でも見渡してももう男子全然いないしなー……)
 このクラスは例年より男子の数が少なく36人中10人しかいないのだ。篤人以外の男子は早くから男子同士で仲良くなり《四殺組曲》を組んでいた。余ってる男子も既に《四殺組曲》を組んでしまったのかもう教室にはいない。
 「みんな《四殺組曲》組むの早すぎないかな……?」
 篤人がそう思案している間にも愛実が志葉と篤人の手を引いて寝ている女の子の前まで連れて来ていた。
 「ねーねー、起きてる?私達と《四殺組曲》組まない?」
 愛実が寝ている女の子の体を揺さぶり勧誘していた。
「………………?」
 女の子は本当に寝てた様で状況が理解出来ていないようだった。
 「あのね!私達今《四殺組曲》組んでる途中なんだけど、あなたはもう組んでる?」
 女の子が首を横に振る。
 「そっか!じゃあ私達と一緒に《四殺組曲》組まない?」
 すると女の子はタブレットを取り出し文字を打ち込み始めた。
 『大丈夫です。私からもお願いします』
 女の子はタブレットを見せながらお辞儀をしていた。そしてお辞儀をした際机に頭をぶつけ目に涙を浮かべていた。
 「大丈夫……?」
 『だ、大丈夫です……。すみません、私ドジで……』
また女の子はタブレットに文字を打ち込んで篤人達に見せてきた。
 「あはっ!あなた面白いね!私は西條愛実!よろしくねっ!」
 『私は七草心って言います。心って呼んでください。こちらこそ、これからよろしくお願いします』
 「僕は斬宗篤人。篤人でいいよ。よろしくね」
 「斎中志葉よ」
 全員が自己紹介を終えたところで篤人が気になっていたことを聞いてみることにした。
 「心、ちょっと失礼かもだけど…何でタブレットで話してるの?」
 いきなりプライベートなことを聞くについて、篤人は失礼だとも思ったがこれは聞かずにはいられなかった。
 「勿論答えたくなかったら構わないんだけど…」
 『いえ、そんな大した理由ではないですよ。私の異能の代償です。不定期で声が出なくなるんです。今日は丁度出ない日ってだけなんです』
 「なるほど、異能の代償か。それなら納得かな」
 この世界では稀に異能を持って生まれてくる人間がいる。暗殺者のことは一般人には知られていないが異能のことは知られており、異能持ちは特別な扱いを受ける。尊敬をされることもあれば畏怖されることもある。要は使い方次第ということだ。
異能と言っても異能にも種類がある。火を放つようなもの、身体能力の強化等様々だ。異能の中には極稀に《代償持ち》がある。強力な、もしくは便利な異能の場合何らかの代償が付くことがある。心のように声が出なくなったりする場合もある。この代償に関しては全世界で代償を無くせないか研究をしているがまだ結果は出ていない。
『私の異能はちょっと特殊なのでまた今度説明しますね。皆さんはこれからどうするんですか?』
 「んー、寮に帰る、かな。そろそろ荷物も届いてる頃だと思うし」
 「私もー!」
 『まあ残っていてもすることないですしね』
 「私も寮に帰るわ」
 「じゃあみんなで一緒に行こー!確かここって男子と女子の寮分かれてなかったよね?篤人も一緒に行けるね!」
 愛実が全員の手を引き……は出来なかったから先頭に立って教室を出て行った。
それから数分後────
 「愛実、そっちは寮じゃない」
 「えー?こっちだった気がするよー?」
 『篤人くんが合ってますよ』
 「斬宗くんが正しいわね」
 愛実の方向音痴が発覚した。
意外なことに心は方向音痴ではなかったようだ。
 
体育館は地下にあるため校舎の職員室の横にある大きなエレベーターで下まで降りた。エレベーターは百人程入るように出来ていた。
体育館に着くと既に教師達が待っていた。この学園は一学年一クラスのため他のクラスがいない。だから待つのは篤人達だけとなる。
 (じゃあ別にわざわざ体育館で入学式する必要ないんじゃないかな?)
 篤人はそんなことを思いながらも形式上は必要なものだと理解している。
入学式が始まり理事長から話があった。理事長は驚いたことに二十代ぐらいの女性だった。長い黒髪を膝辺りまで伸ばし落ち着いた雰囲気のある女性だ。
 「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私はミッテルラント学園の理事長をしている南梓咲といいます。さて、皆さんご存知の通りこの学園は暗殺者養成学校の一つです。この国では公にはなってはいませんが政府主導の元、暗殺が行われています。貴方達はその暗殺者の卵ということですね。ただし、国が公認しているといえど、殺しは殺し。もう普通の暮らしには戻れません。これから過酷な訓練や指導がありますが耐えてください。それが、この国の…いえ、世界には必要なことなんです。以上で話は終わります」
 暗殺者はこの世界には必要不可欠なものだ。勿論誰彼構わず殺すのは違うが、法で裁くことが出来ない罪人、証拠を挙げられず捕まえられない罪人、世の中には罪人で溢れている。その罪人達を裁くのが暗殺者だ。政府の考えとしては、罪人が無害な一般人を何人も殺すぐらいなら罪人一人殺した方が断然いい、ということらしい。
 入学式が終わり教室に戻って《四殺組曲》を組む時間となった。
 篤人は早速愛実にパーティーを組んでもらうよう頼みに行っていた。
 「愛実、一緒に《四殺組曲》組まない?」
 「うん!私も今から誘おうとおもってたの!」
 愛実も自分を誘おうとしてくれていたのを聞き篤人は少しほっとしていた。
 「愛実、あと二人どうする?」
 「うーん………あ!志葉ちゃん誘わない?私、志葉ちゃんと一緒がいい!」
 篤人の心情からすると大歓迎この上ないのだが戸惑いは隠せなかった。
 「うーん……大丈夫かな?僕、模擬戦をした時に色々言われたんだよね…。僕がいると組んでくれないかも」
 「とりあえず誘ってみようよ!ダメだったらその時考えよ?」
 愛実はそう言うと篤人の手を引いて志葉の所まで連れて行った。
 「ねえねえ志葉ちゃん!私達と一緒に《四殺組曲》組まない?」
 愛実は篤人が臆しているのを横目にストレートに志葉に頼み込んだ。志葉は篤人のことを一瞥し一言。
 「……その男も一緒なの?」
 「その男って……酷いな……。ちゃんと名前で読んでよ」
 「……斬宗くんも一緒なの?」
 「そうだよ!篤人は友達だから!どうかな?一緒に組んでくれない?」
 「別にいいわよ」
 「やたっ!よろしくね、志葉ちゃん!」
 「ええ、よろしく」
 「斎中さんよろしくね」
 「……ええ」
 篤人は自分が思ってたより志葉が愛実に対して友好的であることに驚いていた。しかし────
 (愛実に対する態度と僕に対する態度が違いすぎる!)
 篤人は頭の中で悶々としていたが、志葉と愛実と組むことは出来た。しかしこれでもまだ三人、《四殺組曲》は名前の通り四人。まだ一人足りていない。
 
 「誰かまだ組んでない人いないかなー?」
 愛実の言葉に篤人は教室を見回してみた。見たところ結構な数がもう《四殺組曲》を組んでいた。このクラスは36人だから《四殺組曲》は9組作れることになる。
 「あ!あそこに寝てる子がいるよ!」
 愛実が指差した先を見ると机に突っ伏して寝ている女の子がいた。そう、女の子である。
 (僕、このままあの子が入っちゃったら男一人になってしまう…。でも見渡してももう男子全然いないしなー……)
 このクラスは例年より男子の数が少なく36人中10人しかいないのだ。篤人以外の男子は早くから男子同士で仲良くなり《四殺組曲》を組んでいた。余ってる男子も既に《四殺組曲》を組んでしまったのかもう教室にはいない。
 「みんな《四殺組曲》組むの早すぎないかな……?」
 篤人がそう思案している間にも愛実が志葉と篤人の手を引いて寝ている女の子の前まで連れて来ていた。
 「ねーねー、起きてる?私達と《四殺組曲》組まない?」
 愛実が寝ている女の子の体を揺さぶり勧誘していた。
「………………?」
 女の子は本当に寝てた様で状況が理解出来ていないようだった。
 「あのね!私達今《四殺組曲》組んでる途中なんだけど、あなたはもう組んでる?」
 女の子が首を横に振る。
 「そっか!じゃあ私達と一緒に《四殺組曲》組まない?」
 すると女の子はタブレットを取り出し文字を打ち込み始めた。
 『大丈夫です。私からもお願いします』
 女の子はタブレットを見せながらお辞儀をしていた。そしてお辞儀をした際机に頭をぶつけ目に涙を浮かべていた。
 「大丈夫……?」
 『だ、大丈夫です……。すみません、私ドジで……』
また女の子はタブレットに文字を打ち込んで篤人達に見せてきた。
 「あはっ!あなた面白いね!私は西條愛実!よろしくねっ!」
 『私は七草心って言います。心って呼んでください。こちらこそ、これからよろしくお願いします』
 「僕は斬宗篤人。篤人でいいよ。よろしくね」
 「斎中志葉よ」
 全員が自己紹介を終えたところで篤人が気になっていたことを聞いてみることにした。
 「心、ちょっと失礼かもだけど…何でタブレットで話してるの?」
 いきなりプライベートなことを聞くについて、篤人は失礼だとも思ったがこれは聞かずにはいられなかった。
 「勿論答えたくなかったら構わないんだけど…」
 『いえ、そんな大した理由ではないですよ。私の異能の代償です。不定期で声が出なくなるんです。今日は丁度出ない日ってだけなんです』
 「なるほど、異能の代償か。それなら納得かな」
 この世界では稀に異能を持って生まれてくる人間がいる。暗殺者のことは一般人には知られていないが異能のことは知られており、異能持ちは特別な扱いを受ける。尊敬をされることもあれば畏怖されることもある。要は使い方次第ということだ。
異能と言っても異能にも種類がある。火を放つようなもの、身体能力の強化等様々だ。異能の中には極稀に《代償持ち》がある。強力な、もしくは便利な異能の場合何らかの代償が付くことがある。心のように声が出なくなったりする場合もある。この代償に関しては全世界で代償を無くせないか研究をしているがまだ結果は出ていない。
『私の異能はちょっと特殊なのでまた今度説明しますね。皆さんはこれからどうするんですか?』
 「んー、寮に帰る、かな。そろそろ荷物も届いてる頃だと思うし」
 「私もー!」
 『まあ残っていてもすることないですしね』
 「私も寮に帰るわ」
 「じゃあみんなで一緒に行こー!確かここって男子と女子の寮分かれてなかったよね?篤人も一緒に行けるね!」
 愛実が全員の手を引き……は出来なかったから先頭に立って教室を出て行った。
それから数分後────
 「愛実、そっちは寮じゃない」
 「えー?こっちだった気がするよー?」
 『篤人くんが合ってますよ』
 「斬宗くんが正しいわね」
 愛実の方向音痴が発覚した。
意外なことに心は方向音痴ではなかったようだ。
 
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