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ソラの巫女

かるぴすー

第四話 夜の森

陽が落ちれば、夜がやってくる。
後ろで聴こえていた祭囃子は消え、虫や夜行性の動物たちの鳴き声が夜の森に響く。村から伸びていた獣道はいつのまにか消え失せ、茂みを掻き分けながら進んでいた。どこまで来たのだろうか、18時がとうに過ぎても祠はまだしも人工物すら見えてこない。見えるのは木木木、幾重にも重なり果てが見えなかった。

サラ「あー!つかれたー!」
ユエ「サラ、うるさいわよ」

サラはドカッと地べたに座り込む。後ろ手に手をついて木の葉に遮られた空を見上げた。
他も歩みを止める。

サラ「だってよー。いつまで経ってもつかねーし、腹減ったし…」
ユエ「…まぁね。タビお婆ちゃんは村外れにあるっていってたけど、こんなに遠いなんて思ってなかったわ。親に一言いってからの方が良かったわね」
サラ「なーもう帰ろうぜー?」
ユエ「帰るってったって…」

辺りを見渡す。あるのは木だけだ。祠も村も、道もない。つまり彼女たちは遭難していた。

マミ「ごめん、うちが行こうなんて言わなきゃこんな」
ユエ「マミ、うるさいわよ」
マミ「でも!」
ユエ「二度も言わせないで。行くと決めたのは“私たち”よ。誰も悪くないわ」
マミ「…うん」

そうは言っても現状を打破しなければどうにもならない。幸い島はそこまで大きくはないため、反対の海岸までは歩いで八時間程だろう。そこから島を縁取るように海沿いを歩いていけば時間はかかるが村に辿り着けるはずだ。
そこまで考えてふと、ヒカリがいないことに気付いた。

ユエ「ヒカリはどこ?」
マミ「ヒカリ?いないの?」
サラ「さっきまで一緒にいただろ?」

見渡す。見渡す。見渡す。
しかしヒカリはどこにもいない。3人の顔が青ざめる。

マミ「ヒカリー!どこー!?」
ユエ「ヒカリ!返事をして!」
サラ「おぉーい!どこいったんだよ!ヒカリー!」

いくら呼んでも出鱈目に走っても、ヒカリは姿はない。嫌な汗が背筋を流れるのを感じた。
この島には凶暴な生物などはいないはずだが、起伏が激しく傾斜が厳しい箇所が多くある。そのためこの月明かりもろくに届かない森の中で転ばずに歩くのは至難の技だ。もしヒカリが足を滑らせ坂から転げ落ちでもしたら…。

マミ「ヒカッヒカリがっ!ぇぐ…う、うちのせいでっ!うっく…っ」
ユエ「あぁそんなっ!ヒカリ!お願いだから返事をして!ヒカリ!!」
サラ「お前ら落ち着け!今バラバラになったら俺らも迷子に…っ!まて!」

ヒカリを探しに行こうとするユエとマミを抑えていたサラが鋭く声を上げる。
動きは止まったが、なおもヒカリを探そうと声を荒げる2人の口を押さえる。そこまですればなにかあったのだと悟った2人が大人しくなった。

サラ「何か聞こえる」
マミ「それってヒカリの声!?」
ユエ「…何も聞こえないわ」
サラ「風の音に紛れて聞こえてくるんだ。…あっちだ」

サラが聞こえてくる方向を指差す。2人が耳をすませても聞こえてくるのは草木が揺れ擦れる音だけだったが、サラだけはなにか確信を持っているようだった。
マミとユエは顔を見合わせて、サラの悪戯かと疑ったがサラとて今の状況が危険なものだと分かっているはずだ、と考え直す。

ユエ「ヒカリの声は?」
サラ「…聞こえない。なにか、歌を歌ってるみたいだ」
マミ「うた?」
サラ「あぁ、どこかで聞いたことある…ような」
ユエ「煮え切らないわね。私とマミには聞こえないし」
マミ「とりあえず、人がいるってことでしょ?ヒカリもいるかもしれないし、いってみようよ!」

そう言ってマミがサラの指差した方向へ走り出す。ユエとサラも遅れてマミを追った。
その歌は近づく程に大きくなり、ユエやマミにも聞こえ始める。その声は子供のように幼く、同時に老人のような落ち着きを感じさせた。

-コラくるしや いやしや 魑魅魍魎ちみもうりょう
御家内ごかない衰微すいび まえ真暗まっくらで-
黄泉戸喫よもつへぐい どっさり-

声の元に辿り着く。
草木は開け、月の光が差し込むせいか周囲は青白く明るい。
中央には石造りの寂れた祠が建っていた。

そして見つける。
祠の前、頭から血を流して倒れるヒカリの姿を。

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