話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

ソラの巫女

かるぴすー

第ニ話 夏休み

村にある木造の学校。そこでは6人の子供が勉学に励んでいた。
ボロボロの教卓に立っている男の名前はダイチ。村唯一の教師で歳の違う子供たちを彼が一度に教えている。
今は…テスト中だろうか。子供6人がそれぞれ机に向かい、鉛筆を握って目の前の問題用紙と戦闘を繰り広げている。……早々に諦めて居眠りを決め込んでいる子もいるが。

-…ーンコーンカ……コーン-
先生「今日はちゃんと鳴ったか。よし、今日はここまで」

教師の言葉で緊張を多分に含んでいた空気が緩む。教師が問題用紙を回収していくとある者マミは机に突っ伏し、ある者サラは大きな欠伸をかき、ある者達ユエとヒカリは問題の解答を伝えあっている。
教師が教卓に戻るとサラが声を上げた。

サラ「ダイちゃんひでーよ。いきなりテストとか心構えが〜…」
先生「ダイチ先生と呼びなさい。これは今までの授業をお前達がどれだけ理解してるのか見るためのものだからな。予告してしまえば意味がなくなるだろう?」
サラ「うぐぅ…」

ダイチ先生の言葉にサラ撃沈。そもそもテスト中に居眠りをしていたサラが勝てるはずはなかった。

コノハ「テスト中に眠るなんてヒジョーシキだね、ぼくアオバ
アオバ「そうね、わたしコノハ。見たらダメよ。かまれてしまうわ」
サラ「誰が噛むか!」

キャーと、サラをからかって遊ぶ子供はコノハとアオバ。見た目がそっくりな双子でそれぞれを"ぼく"、"わたし"と呼び合う不思議な子供でサラたちよりも4つ下の小学2年生。彼女たちは昔に受けたサラの悪戯を根に持っているようだった。

コノハ「センパイがバカになって敬えなくなってしまったらどうしようか、ぼくアオバ
アオバ「心配ないわ、わたしコノハ。だって元から敬ってなんかいないもの!」
サラ「うがー!イラつくー!!」
ヒカリ「だ、ダメだよ3人とも。ケンカしないで」
コノハ「ヒカリさんに怒られてしまったよ、ぼくアオバ
アオバ「怒られてしまったわね、わたしコノハ。これもセンパイのせいだわ」
サラ「なんだとぉー?」
ユエ「まぁまぁ、落ち着きなさい。貴方たちもサラの事煽らないの」

はぁい、ときゃらきゃら笑いながら双子は大人しくなる。大体満足したようだった。
始終を見ていた先生が落ち着いた教室内を見回した後に口を開く。

先生「さて、明日から夏休みな訳だが」
マミ「やったー!」
サラ「うわ、今まで死んでたのに生き返った」
先生「もちろん宿題を出すぞ」
マミ「えぇー…」
ユエ「…また死んだわね」

マミの一喜一憂に笑いが漏れた。
先生が1つ咳をして話題を戻す。

先生「前に宿題として地域の風習や伝統を調べるように言ったが、夏休み中に調べた事を纏めて休み明けに発表してもらうぞ」
サラ「えー発表すんのー?」
ヒカリ「発表…、緊張する…ぅ」
マミ「ダイちゃんセンセー、うちら4人でおんなじ事調べてるんだけど発表も一緒にやっていい?」
先生「ダイチ先生と呼びなさい。ああ、いいぞ」
マミ「やった!一緒にがんばろ、ヒカリ」
ヒカリ「うん!…ありがと」
コノハ「じゃあぼくたちも一緒にやろうか、ぼくアオバ
アオバ「そうね、わたしコノハ。センパイに負けないようにしなくちゃね」
ユエ「2班に分かれるのね…、なら島のみんなの前で発表してどっちが良かったか決めてもらうのはどうかしら?」

ユエのその言葉に各所から声が上がる。ユエの提案に乗り気な人とそうでない人が分かれたようだ。どちらかといえば乗り気な人の声が大きい。

マミ「いいねいいね!うち賛成」
アオバ「勝ち負けを言い出したのはわたしなのだし、賛成よ。ね、わたしコノハ
コノハ「そうだね、ぼくアオバ。負けないよ」

それに対する反対派。

サラ「俺反対。そんなのめんどくせーし、そもそも島の奴らに聞いた事を島の奴らに発表するってなんか変じゃん」
ヒカリ「わたし、大勢の前で話すのはちょっと…。で、でもみんながやるなら…」

分かれた意見。多数決ならば賛成派が有利だがみんながやろうと思わなければ意味はない。それは賛成派も反対派も同じ認識だった。
均衡する2つの意思。それに一石が投じられた。

コノハ「負けるのが怖いんだね」
サラ「あん?」
アオバ「しょうがないわ、わたしコノハ。元から勝負は決まっているもの」
サラ「………」
ヒカリ「サ、サラ…?」

サラはプルプルと震えそして、

サラ「やってやろーじゃねーか!もし負けたらなんでも言うこと聞いてやる!」
ヒカリ「サラァ!?」
ユエ「あーぁ、年下に乗せられちゃって…」
マミ「サラって煽り耐性ないよね」

爆発したサラは止まらなかった。反対派仲間を失ったヒカリは悲しみ、ユエは呆れ、マミは現実を知った。
残る反対派はヒカリだけだが、みんながやるのなら賛成だと言っていた為これで全員賛成と相成った。ユエが先生に向き直る。

ユエ「それじゃあダイちゃん先生、セッティングよろしくお願いしますね」
先生「だからダイチ先生と、…は?」
マミ「発表会やるよって呼び込みして、来るのはおじいちゃんおばあちゃんばっかりだからイスも準備して…。あ、そのまま宴会になりそうだからお酒とおつまみも用意しないと」
先生「お、おい…」
ユエ「お酒が飲めない人にはジュースね」
コノハ「ぼくはオレンジジュースがいいな」
アオバ「そうね、わたしコノハ。りんごジュースでもいいわ」
先生「いや、あの…」
サラ「宴会と言ったら刺身だろ。舟盛りにしてさ」
ヒカリ「えっと、いろんなお料理があった方がいいと思います」
先生「ちょっとまっ」
ユエ「というわけで」

『よろしくお願いします!ダイチ先生!』

揃えられた声と期待が込められた6対の瞳に若き教師は。

先生「…はい」

可愛い教え子には勝てなかったよ…。それにしてもこの男ちょろすぎである。
項垂れる先生をしりめに、いつのまにか帰り支度を終えたサラが立ち上がる。

サラ「そうと決まれば作戦会議だ!そこの双子、逃げんなよ」
コノハ「逃げないよ。ね、ぼくアオバ
アオバ「ええ、わたしコノハ。センパイに何をしてもらうか考えておかなくちゃね」
サラ「こいつらぁ〜、あとで泣かすっ!」
ユエ「はいはい、発表で決着つけましょうね」
マミ「商店をご利用の際はマミちゃんのはなまるまん丸商店をどうぞご贔屓に!」
ヒカリ「ダイチ先生、手伝える事があったら言ってください。あの、お手伝いします」

そう言ってながらゾロゾロドタバタ出て行く子供たち。悲しみに暮れる先生はそれに気付かなかったが、子供達の声が校庭から聞こえて来る頃になってやっと復活し。

先生「今日やったテストは休み明けにまたやるからなー!」
『先生のおにー!』

そうして今年の夏休みが始まったのである。

「ソラの巫女」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く