朝、流れ星を見たんだ

うみたけ

悪人面と金魚のフンは高校に入学する

桜が舞い散る校門前に、真新しい制服をぎこちなく着た男子生徒が二人。背が高く、気難しそうな顔しているのが修也、物珍しそうに校舎をジロジロと眺めている、背の低い方が大翔である。

「うんうん、やっぱ高校って感じだねぇ~。」
「…ああ。」

 どんぐり眼を光らせ、うきうきしてしょうがないらしい大翔とは対照的に、修也の顔は険しい。眉間にシワを寄せ、唇を真一文字に結んでいる。その目つきは相変わらず針のようで、校舎に穴でも開けてしまいそうなほどだ。

「ほらぁ、そんな怖い顔しないの! 入学早々化け物扱いされちゃ嫌でしょ? ただでさえ悪人面なんだから。」

 大翔が修也の頬に手を当て、ぐりぐりと押すように撫で回す。修也はますます不機嫌そうな顔になり、「やめろ。」と、大翔の手を虫でも追い払うかのように払った。
 大翔は「もー、修也ったら。」と頬を膨らませたが、たちまちその顔には腹黒そうな、いやらしい笑みが広がった。

「あー、もしかしてさ、緊張しちゃってる?」
「してない。」

 即答した修也は、わかりやすくさっと目をそらして、校門を通って言ってしまった。

「わぁ、入学で緊張なんて、かっわいーい!」

 大翔は修也を追いかけ、その周りをちょこまかと歩き回りながら「ねーねー。」と話しかけた。

「部活入る? 俺テニス部入ろうと思ってんだけどさー。」
「…俺もテニス部に入ろうと思ってたけど、お前が入るならやめる。」
「素直じゃないなぁ、修也は。ほんとは入りたい部活が一緒で、嬉しいんでしょ?」
「全然。それどころかお前が中学生の頃の部活中の時と同じで、金魚のフンみたいに、うっとうしくつきまとってくるんじゃないかって思うと、それだけで嫌気がさす。」
「嬉しいの隠そうったってムダだよ。だって修也、ここより下のランクの高校入ろうとしてたのに、俺がここに行くって決めた途端に、志望校ここに変えて猛勉強してたもんねー。それぐらい俺と一緒にいたかったんでしょ?」
「…。」

 修也の歩調が速まった。大翔は「超可愛いじゃーん。」などと嬉しそうに修也の後を追いかける。修也の横に並ぶと、大翔は修也の顔をのぞき込んだ。

「ねー、修也。」
「…。」
「一緒に卒業しようね。」

 修也の口元が、ふっと緩んだ。

「何を当たり前なことを。」

 大翔はへへっと笑っただけで、何も答えなかった。

「高校生活楽しみだなぁ。あ、もしかすると、修也にも彼女できるかもよ?」
「いらない。」
「つまんないこと言わないの! そんなんだから顔はそこそこいいのに、全然モテないんだよ。」
「モテなくて結構。」
「あっれー? モテないからっていじけちゃった?」
「モテないお前が言うな。」
「言っとくけど、修也よりはモテますからー。告白されたことありますからー。」
「物好きもいるんだな。」
「ひどっ!」

 二人は他愛のない会話をしながら、校舎内に入っていった。

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