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諦めていた人生の続きで私は幸せを掴む

弓削鈴音

13話: 邂逅と決意

 話が速く進みすぎて付いていけなかった、というのが今回の会議────特に後半に対する感想だ。

 アイカがいきなり怖い事を言って立ち上がった時には、本当にびっくりした。そして、その後の脅しにも驚いた。止めたのは本当に無我夢中で、アイカに思念会話で言われるまで、それが嘘だとは思わなかった。

「私、駄目ですわね。まったくアイカの嘘を見抜けませんでしたわ……」

 仮にも貴族だ。言葉の裏を考えられないなんて、どうやって生きていけばいいのか、わからない。
 簡単に騙されて、あとあと後悔しそうだ。
 一応夜会などには何度も出席したことがあるのだが、どうしても人の裏を読むことが苦手で、きっとこれからも上達しない気がする。

『まぁまぁ、そういうのは私担当だから気にしないの。』

 アイカは慰めてくれるが、そういうものなのかな、と疑問に思ってしまう。

 思わず溜め息をついた。
 すると、黒と橙色のダイヤモンドが目に入る。日光を反射してキラキラと輝いていた。

「……そういえば、僕が送ったブレスレット、付けてくれているんだ。」

「は、はい。とても綺麗なブレスレットですわ、殿下。ありがとうございます。」

「喜んで貰えて、良かった。」

 少しドキドキして、思わず下を向いてしまう。別に、こんな会話は普通だ。贈り物にお礼を言うのなんて、今まで何度もしかことがある。だというのに、なぜかやけに緊張して、自分が変なことを言っていないか心配になる。
 ちょっとして、二人分の笑い声が聞こえてきた。
 後から聞いた事だけれど、第二王子も俯いてしまっていたらしい。



 しばらく取り留めのない事を話していると、庭園に出た。

 王城の庭園だけあって、すごく美しい。花は可憐に、けれど自分を確かに主張しながら咲いている。白いガゼボへ続く道は、クリーム色の石で舗装されていておしゃれだ。
 全体的に統一感がある庭園は、建物の一角だというのにすごく緑が広がっていて、空気が美味しく感じられる。

「気に入った?」

 微笑みながら、第二王子がそう聞いてくる。私は笑顔を浮かべて返事をした。

「えぇ!すごく美しいですわ!毎日見ても、飽きないくらい。」

『いや、さすがに毎日は飽きるでしょ。』

 アイカのツッコミに、思わず笑ってしまう。
 すると、第二王子も笑ってくれた。初めて見る彼の笑顔に、私は思わず見入ってしまう。
 それを見たからか、第一王子も笑い始めた。アイカも、第一王子の隣で楽しそうに笑っている。
 私もなんだか笑いを堪えられなくなって、笑ってしまった。

 私達四人の笑い声が、どこまでも響いて、そして青い空に吸い込まれていく気がした。



『あー、なんか疲れた。ま、やな感じじゃないけど。』

「ですね。────そろそろガゼボへ向かいましょうか。」

 第一王子の言葉に頷くと、第二王子が手を取って下さる。
 すごく自然な動作で、思わず私も当然のようにそれを受け入れてしまっていた。

「エスコートする。」

「あ、ありがとうございます……」

 馬車を降りた後の一件とさっきのブレスレットの事を思い出して、少し恥ずかしくなる。
 私が軽く俯いていると、恥ずかしさが伝染したのか、第二王子の耳が赤くなっていた。

『…………行こ。』

 からかわれると思っていたが投げかけられた声は硬くて、思わず声の主を見た。
 アイカが、どこか遠い方を見て呟く。彼女の表情は険しい。
 何か、あったのだろうか。

 ちょっと首を伸ばして、遠くを見ようとした、その時だった。

『……っざけんな!』

「僕の後ろに!」

 キン

 あの日聞いた、あの音だ。
 その瞬間に、一気に感情が記憶と共に溢れてくる。

「……ちっ。兄上、どいてください。」

 眩い金髪、どこまでも広がる海のような青い瞳、そして、力強い意志を感じさせる声。
 好きだったあの人の声が耳に入った瞬間、私の世界は暗転した。






 アマリリスが、倒れた。

 それを見た瞬間、私は危うく力を暴走させそうになる。
 どうにか自分自身を宥めて、私はアマリリスの体に入った。

 アマリリスの手は固く握られていて、それを開くと、私はサーストンを見た。

 この国の第三王子、サーストン・ウィンドール。アメジストレインの攻略対象者の一人でもあるから、結構見てくれはいいのではないだろうか。
 もっとも、中身がクズだということを知っているからか、特になんとも思わないが。

「アマリリス……あぁ、お前か。」

「うん。私だよ。」

 私の顔というか瞳を見たラインハルトが、ひとまず安心、というように頷く。

 はっきり言ってしまうと、アマリリスの戦闘力は皆無に等しい。運動能力も低い。
 それに比べると、私の方が断然強いのだ。今の私・・・は自分で自分の身を守れる。お荷物にはならない。

 さーてさてさて、逆襲の時間かな?

 王族を攻撃していいかは知らないが、何か言われたら精霊の姿で出ればいい。それに、あいつは王位継承権を剥奪されている。

「……お前は何者だ。」

「まぁ。ひどい事をおっしゃるのですわね。つっても私はアマリリスじゃないけどね。」

 早く手を出さないかな。正当防衛、って言ってボコボコに出来るのに。

 機会を伺いながら、ゆっくりと後ずさる。程よい間合いを取ろうとするが、それを見過ごさずにサーストンは一歩踏み出してきた。

「サーストン。その手に持っている剣を捨てろ。」

「断る。ユークライ兄さんに、俺の行動を制限する権限なんて無いだろう。」

「……王位継承権を剥奪されたというのに、そのような行動をしても良いのですか?」

 嫌味たっぷりに、わずかに小首を傾げてそう尋ねた。
 すると、サーストンの目が大きく開かれる。どうやら知らないようだ。

「……本当か。」

「あぁ。私達は今、母上のガゼボへ向かっているんだ。邪魔はしないでくれ。」

 ユークライさんがそう言って、私とサーストンの間に立つ。
 ラインハルトも、私────というか、アマリリスをすぐに助けられるような位置にいる。
 二人の兄王子を相手にするのは無理だと理解したのか、サーストンは顔を顰めながらも剣を仕舞った。

「ちっ……命拾いしたと思うんだな。」

 言い捨てると、第三王子は足早に去っていく。その背を目で追いながら、私は思考の海に沈んだ。

 今のサーストンは、ゲームで描かれていた俺様で聡明なイケメン王子じゃない。あまりにも、違いすぎる。彼は決して、激昂したからと言って剣を抜くような人間じゃ無かったはず。
 ひょっとしたら、この世界はゲームとは違っているのか…………

 どんどん深くなって行く思考を無理矢理止める。これ以上は、今のところは考えなくても大丈夫だろう。
 
とりあえず、一つの事を私は再確認した。
 それは、危険に晒されるであろうアマリリスは、私が絶対に守るという事。

 サーストンの姿が完全見えなくなった時、アマリリスが目覚めた気配を感じた。

(ア、イカ?そこに、いるの?ここは一体……)

(ちょっと待ってて。)

 軽く目を閉じると、アマリリスの体から、自分の意識体が出ていくのが見える・・・

『……はい、終わり。大丈夫、アマリリス?』

「え、えぇ。けれど、今のは何だったのですか?」

 あはは、と軽く笑って誤魔化す。
 説明がめんどくさい。とりあえず、私が知っていればいいだろう。
 それに、この事を知った時に、まだ婚約破棄のショックから完全に立ち直れていないこの子がどうなってしまうのか、それが心配で言えない。

『気にしない、気にしなーい。さ、ガゼボ?だっけ?早く行こうよ。』

「……え、えぇ、そうね。」

「案内しますよ。こちらです。────ラインハルト、ラインハルト?」

 暗い表情をして、サーストンの行った方を睨んでいるラインハルトに苦笑する。多分、サーストンに対してイラついているんだろう。

『まったく。』

 アマリリスの事、好きすぎでしょ。

 ラインハルトのお陰か、サーストンのせいで暗くなっていた気持ちが、少し明るくなった気がした。

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