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諦めていた人生の続きで私は幸せを掴む

弓削鈴音

4話: 優しい味方

 朝起きると、そこは見知らぬ部屋だった。というとどこか月並みだが、実際にそのような状況になるとそれしか思えないのだな、とどこか人ごとのように頭の片隅で思った。

 まだ少しだるい体を起こして、慌ててベッドから起き上がると、昨夜はいなかった精霊達が声をかけてくれる。
 
 私は、精霊の加護を持つ。
 基本的に精霊は、人間に姿を見せない。上位や高位の精霊ともなると誰にでも姿が見えるらしいが、下位や中位の精霊を見れる人間は限られている。
 彼らを見るとこが叶うのは、適性のある者だけ。そして私は、運良くその適性があった。しかも、加護までしてもらっている。

『大丈夫?』『無理すんな』『しっかり眠れた?』

 精霊達は皆個性的だ。それぞれがそれぞれの言葉や行動で、私を労わってくれる。
 それがひどく嬉しくて、私の頬が思わず緩んだ。

「えぇ。大丈夫よ。……それより、状況が知りたいのだけれど。」

『それはね、そこに書いてあるよ〜』『そこの机の上だ』

 精霊達の言葉の通り、机の上には数枚の便箋が置いてあった。そこには、几帳面な、どこか私と似ている筆跡で手紙が書いてある。

「えっ……」

 最初の一文に、私の目は吸いつけられた。

『もう一人の私、アマリリスへ』

 ドクン、と心臓が鳴る。
 "もう一人の私"とは、一体どういうことなのだろうか。私は多重人格者ではない…はずだし、双子でもないはずだ。だとしたら、前世の記憶にある、SF映画によくある平行存在…とか?だとしても、それがどうしてこんなタイミングで、私に手紙を書くのだろう。

 渦巻く疑問を解決するためにも、私は震える手を手紙に伸ばして、恐る恐る続きを読んだ。




「ふぅ。」

 読み終わる頃には、最初の緊張や恐れも無くなって、まだ沈んでいた太陽が顔を出していた。
 それにしても、不思議な話だと思う。私は昨日記憶を取り戻したばかりと言うのに、もう一人の私は私が生まれた時から私を見ていたのだ。

「まったく、こんがらがってしまうわ。」

 昨日と今日で、私の周りと私に変化がありすぎだ。溜め息をついて手紙を机に置こうとすると、精霊達が騒ぎ始めた。

『全部読んでない!』『名前』『裏にあるよ〜』

 びっくりして、手に取っていた最後のページを裏返す。するとそこには、笑っている女の子の絵とともに、短い文が記されていた。

『あなたをずっと見守ってるから安心して!藍佳アイカより』

「アイカ、って言うのね。」

 直接言葉は交わしたことは無いけれど、きっとアイカとは上手くやっていける────
 そんな気がして、私は思わず笑みを零した。
 きっとアイカは、心優しい人だろう。会って、話をしてみたい。お茶もしてみたいし、一緒に街を見てみたりもしたい。

 トントン

「アマリリス様。お召し物をお持ち致しました。」

「ありがとう。入っていいわよ。」

 思考を中断して急いで手紙を片付けると、侍女達が入ってきた。三人のうち、一人は家で私の専属のエミーで、残りの二人は見知らぬ方達だ。


 着替えが終わると朝食を運んでもらい、私は朝の支度を終え、エミーと二人だけになった。
 途端に、慣れない王城でいつの間にか緊張していたのか、肩の力が抜けてしまい、「ふぅ」と声を漏らしてしまった。
 本当ならあまり褒められた行為ではないのだけれど、長い付き合いのエミーは、「お疲れ様です」と言って労ってくれる。

「エミー。お父様は大丈夫なのかしら?」

「はい。しばらく休んだ後、屋敷の方へお戻りになられましたよ。」

「そう。良かったわ。お父様には、本当に心配をお掛けしてしまったから。」

 私がそう言うと、エミーがふんわりと微笑む。まるで花が咲くようだ。

 エミーは、私がまだ幼い頃に、私の専属のメイドとしてつくようになった。あまり年の離れていない私達は、主と従者という身分の隔たりはあったけれど、姉妹のように一緒に育った。だから、私はエミーにとても気を許しているし、彼女も私に対しては他の家族と違うように接してくれている…と思う。

「お嬢様は、本当にお優しいですわ。ご自分の事より、公爵様を気になさるなんて。」

「そんな事、娘として当たり前よ。」

 エミーはますます笑みを深くする。それにつられて、私も微笑んだ。エミーには、人を優しい気持ちにする才能があるわ、と改めて思った。
 王城ということで少し緊張していたが、それもほぐれてしまう。


 しばらくの間、そうやってまったり過ごしていると王城の方が部屋に来られた。

「アマリリス・クリスト公爵令嬢。ラインハルト殿下がお呼びにこざいます。」

「わかりました。すぐに向かいます。」

 座っていた椅子から立ち上がると、エミーが複雑な顔をする。
 第三王子に婚約破棄をされたばかりで、その兄王子に会うのだ。きっと心配してくれているんだろう。
 一緒に行けるものなら行きたい、という気持ちが伝わってくる。

「心配しないで、エミー。ゆっくり待っていてね。」

「……っ!はい、お嬢様。お待ちしております。」

 互いに微笑みかけると、「では」と声をかけられる。
 どうやら、案内してくれる彼は、私達の会話が終わるのを待っていてくれたらしい。
 先を先導してくれる彼に、あくまで優雅に、けれど急ぎながら私は着いて行った。





 入れ忘れたのですが、魔法学校は王都にあります。王城にも結構近いです。詳しいことは、出来たら本編で説明したいと思います。

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