世界の果てまでもあなたを追いかける

お歌詞屋さん

35話 〜旅行〜

 クリスマスの時期に夏休みの話を書くなんて…とりあえず続きどうぞ。




広く穏やかな海。夏を感じさせるそんな風景に一人、浜辺で本を読んでいる裕翔の姿があった。

 赤と白の二色で彩られたパラソルと椅子に大きな青いクーラーケース。

 どれも夏のビーチにあってもおかしくないものだがなにか違和感を覚える。

 そこには十五、六頃の若い男一人の姿しかないのだ。

 普通、海に来るとしたら団体が多いはずだ。だがそこにあるのは彼一人の姿。

 しかし一人で海を楽しみたいと思う人もいると思う。つまり違和感はほかのところにある。

 そう、問題は彼の姿だ。皆が想像するのは水着を着た男が椅子に座り優雅に本を読んでいる姿だと思う。

 だがしかし、彼はなんと夏に相応しくない長袖長ズボンを着て本を読んでいるのだ。

 気温30度と猛暑日にもかかわらず彼はまるで新春が来たかのような格好でさらに汗を一滴も垂らさずにそこに座っていた。

 周りの人々もその異様な光景を見て目を見開いている。

 しかし、そんな事御構い無しにページをめくり続ける裕翔。

 そんな中、どこからか男達の感激の声が湧いた。

 「ママ…この水着…下着より面積狭くない?」

 早苗だ。どうやら更衣室で着替えてきたらしい。白色の可愛い水着を着た彼女は水の女神のようだった。

 周りの男達はそれを見てだらしなく口を開いている。

 「別にいいじゃない。似合ってるんだから。じゃあ私はパパ迎えに行くわね。」

 早苗の隣にいた来海はそう言うとスタスタ歩道の方へ向かって行った。

 早苗は不満そうな顔をしながら足場の悪い砂の上をカラフルなビーチサンダルで歩いて行く。

 すると、ハワイTシャツにサングラスをかけたチャラ男三人組が近づいてきた。

 「そこのお嬢ちゃん。俺たちと遊ばない?」

 ナンパだった。男達は早苗が逃げれないよう上手く囲む。

 「え…あのー…」

 普通なら義兄あにである裕翔が

 「俺の妹に何をしている。」

などと言って止めに入るかもしれないが今回の裕翔はイレギュラーな行動を見せてくる。

 "ヒューン!!"

 何かが空を切るほどの速さでチャラ男たちの方へ飛んでいった。

 「いた!」

 男の一人が振り返りながら右肘を押さえて言う。

 その直後、ほかの男二人もうなじや尻を押さえて言う。

 早苗は何が起きたのかわからずなんとなく裕翔の方を見るが彼は相変わらず本と日向ごっこを楽しんでいる。

 すると最初に叫んだ男が足元に落ちていた薄汚れた茶色い貝殻を拾い上げた。

 「くそ、誰だよ!こんな子供騙しやったヤツ!」

 男たちは辺りを見回して犯人探しを始めた。が犯人を見つけられるはずもない。
 なぜならやったのは数十メートル離れた場所にいる裕翔なのだから。

 そんなことはいざ知らず。男たちはやけになって探す。

 その隙に早苗はその場から離れた。


 今、裕翔たち一家は静岡のある海に来ていた。
 実は智と来海の知り合いがこの周辺に住んでいるらしく今回泊まらせてくれるらしい。

 正直なところ秋本家は金銭に余裕がなくホテル代が浮かぶので嬉しい話だった。
 
 金銭に余裕がないのは裕翔にかかる費用のせいだ。こっから話は変わるが裕翔にかかる費用は月の食費代の二倍ほどだ。
 
 まず一つ目、電気代。一応自立発電はできるが流石にプロトタイプなので多少充電が必要だ。

 二つ目、メンテナンスだ。裕翔の身体の三分の一は人間の肉体だ。よって成長などし形が変形するのだ。そのため月に2、3回メンテナンスをする。それが馬鹿高いのだ。 

 話を戻そう。つまり本当は旅行に行く予定などなかったので急遽決まった旅行なのだ。

 何年間振りの旅行、裕翔はどこか不安そうにしているのだった。




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