階層ボスだけど暇なんで冒険してもいいですか?

つくつく

15あなたは私の全てだった

その言葉を聞くと一つの疑問が脳裏をよぎった。では、エルザは今何歳なのか?とエルザはその疑問を汲み取ったように続けた。
エルザ「私には、不老不死の能力が働いている。故に年はとらん」
そうエルザは言うと、悲しげにこちらを見た。
その時に謎の頭痛に襲われるが堪えてエルザに先を促すように見る。
エルザ「この能力を貰ったのは100層クリア後だ。私にこれから先ダンジョンを攻略するのを手伝って欲しい。そんな訳の分からない事を言い、姿を消したバカな男だった。私は情けないことに自分が見えなくなったのだ。あいつがいなくなってからは特に自分を抑えれなくなってな。奇妙な事が起こったのだ。おかくしな装備が出回ったのだ。その装備があいつに見えて仕方なかった。その装備がどう言う事か、かなり強力でな。街にいる冒険者の殆どがその装備を着ていた。」
そう言ってエルザは自分の左腕を右手でさすりながら
エルザ「2回目の攻略が始まり、9層までクリアした後だった。ボス攻略後に冒険者達が口々に言ったのだ。『全く様々だなと。』『あいつのおかげだな』と」
そこで右手の左腕を掴んでいた手に力が入る。
エルザ「ふざけるな、そう思ったのだ。あいつがシロが消えてくれて良かった。そう言ってる気がしてしょうがなかった。私にはあいつが全てだった。シロは私に世界のありようを与えてくれた!奴らとて、シロに助けられた事があったのにかかわらず、私にはあいつらの言葉が消えてくれて良かったと言っているようにしか聞こえなかった!そう思った時、自分の中のストッパーのようなものが弾け飛んだのだ。」
ふふふ、とエルザは笑うと
エルザ「そのボス部屋にいる私以外の全ての冒険者がその装備を着けていた。気づいた時には皆殺しにしていたよ。立っているのは私だけだった。それから、私は町に行き、その装備をつけている奴らを一人残らず、根絶やしにした!随分と楽しかった。あいつのために、私が何かしてやれてるのではないかと言うつもりはない。ただの自己満足だ。町にいる冒険者はほぼ壊滅状態となった。それを救ったのが商人達だ。だから、冒険者は奴らに頭が上がらないのだ。」
それを語った後、エルザはこちらを悲しげに見つめると
エルザ「私はその後、正気に戻り、罪の意識で何十年も家を出る事が出来なかった。それが真相だ。…失望したか?」
そんな弱々しいエルザに対し、何と声をかければいいのか分からなかった。だが、何故か、とてつもなく苦しい。
エルザ「おい、何故お前が泣いてる?」
と、エルザに言われ、初めて気付く。自分の頬を触ると濡れていることに。
クロはエルザに近づき、そっと抱き締めると
クロ「ごめん“ノア”」
そう言ったところで意識が途切れる。薄れゆく意識の中で最後に移ったのは、エルザの泣き顔だった。






コメント

  • つくつく

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