階層ボスだけど暇なんで冒険してもいいですか?

つくつく

9ボス戦です

圧倒的だ。このフィールドにいる全ての人間がそう思っただろう。それほどまでにクロがしたことは次元を超越していた。
自分よりも巨大で大きなボスモンスターを素手で投げ飛ばす。無茶苦茶すぎる。
「尻尾を出したな!」
とこちらを睨みながら包帯の男が言ってくる。
「素手でボスモンスターを投げ飛ばすなど普通はできない!答えろ!貴様は何者だ!」
クロ「このまま、みんながやられても構わないなら、このまま俺らは話でもするか?状況を考えろよ」
そう言ってクロは睨み返し、
クロ「俺がサポートしてやる。お前らは攻撃に全神経を使え」
それに背後にいたフレアが剣を構え直しながら答えた。
フレア「分かったわクロ」
そこでオーガが立ち上がり、額の少し上から血が出ており、こちらを鋭い眼光で睨んだ。
クロはそれを見ながら
クロ「どちらにしろ迷っている時間はない。お前はやるのかやらないのかどっちだ」
「…お前ではない。ルークだ」
そう言って男は短剣を出した。
大男が立ち上がり、ハンマーのようなものを構えた。
「ゴルドフだ。呼び捨てで構わねぇ」
と言って包帯の男の横に並んだ。
そして、まるでこちらの準備が整うのを待っていたかのようなタイミングでオーガが動き出す。大きなナタを思いっきり振り上げる。そして、振り下ろそうとしたタイミングでクロは地面を蹴り、一人陣形を離れ、オーガの後ろに回ろうとする。それをオーガがさせないように動こうとする。
やはり。オーガは、もはや俺しか見ていない。結果それが仇となり、フレアたちの目の前のそれは、ただただ無防備な姿を晒している大きな的でしかない。
クロは一歩前に足を出す。
バンと大きな音がし、地面がヒビ割れる。それにこちらに完全に体を向け、ナタを横にし、防御姿勢をとる。その瞬間オーガの頭に向けハンマーが振り下ろされる。オーガの皮膚は硬い。その皮膚の硬さを超える攻撃は、持ち合わせていない。がそれでもやるしかない。殺すためにはそこは通らなければならないのだから。
だが、ハンマーが振り下ろされたの場所は額の少し上。つまり先程クロに投げ飛ばされ、ダンジョンの壁に勢いよくぶつかり怪我をした場所であり、そこはひび割れており今一番攻撃よ通る場所だ。そこにハンマーが落とされる。
『グガァァァァァァ』
という声が鳴り響く。
慌ててオーガが後ろを振り向く。オーガが振り向くとそこには、フレアと包帯の男、ルークがオーガに向け武器を突きたてようとしている。
剣を振り回そうとした時、
「おい」
そう言ってクロが尻尾を踏む。
オーガの苦悶の鳴き声が響く。うるさくて仕方ない。
オーガは後ろに倒れながらもナタをクロに向かって動かす。
しかし、その苦し紛れの攻撃はクロに掴まれる。その崩れた体勢に二人がジャンプする。
フレア・ルーク『はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
と気合の一閃を打ち込む。
剣が刺さる。が、それはフレアだけだった。
ルークは、剣が先に折れ、オーガは片足を後ろにし、踏ん張る。そして、お腹に刺さっている剣を持っているフレアとルークは青い顔をしている。
そして、オーガがニッと武器な顔で笑う。
青い顔をしていた二人にナタが飛んでくる。
「悪いが貰っていく」
そんな声が聞こえた時、オーガの硬い皮膚をいとも容易く、切り裂く。ナタを持っていた右手が宙を舞う。
オーガが叫ぶ。
エルザ「もうよい。…眠れ」
そう言ってエルザは躊躇なくその頭に槍を刺した。
ミッションクリアを知らすかのように門が開く。
そして、エルザは一人入ってきた扉の下まで足を進めこちらを振り返ると
エルザ「む?帰らぬのか?」
と言ってきた。それに従い階層を降りていく。この道が本来大変なはずなのだが、エルザが一人でどんどん殺していくため、比較的安全に帰ることができた。
クロ「そう言えばあのモンスターの死骸ってどうなるんだ?」
それにフレアは横に並ぶと
フレア「解体屋が回収にくるわ」
クロ「そうなのか。お!?出口に着いたぞ」
そうクロが言うと、出口の扉が開く。
その時、肩を掴まれ、後ろを向くとルークがこちらを見ていた。
ルーク「…これだけは答えろ!お前を信用していいのか?」
この答えは否だ。何せ自分はこのダンジョンの最終ボスなのだから。だからー。
クロ「お前じゃない。クロだ」
と答えた。
それにルークは、何も言わずに立ち去ろうとした時、
ゴルドフ「世話になった!お前さん達は、恩人だ。困った時は俺が手を貸す」
そう言って頭を下げた後、ルークと一緒に去って行った。
それを見送るクロの背を見ながらエルザは
エルザ「…変わらんな」
クロ「ん?何か言ったか?」
エルザ「ただの独り言だ」
そう言って後ろ手に去って行った。







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