異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~
大監獄
「刑が執行されるまでの間、この部屋で大人しくしているんだなっ!」
看守の男に蹴りだされて狭い部屋の中で尻餅をつく。
ガタンッ。カチリッ。
看守が扉を閉めると、部屋の中は急速に光を失っていく。
頭が痛い。
一時に比べるとマシになったが、未だに視界は霞んだままだった。
落ち着け。
ここに来るまでに状況を整理してみよう。
まず、俺が逮捕された理由に関しては割とハッキリとした。
監獄に連れてこられるまで間、馬車の中で男たちが話をしているのを聞くことが出来た。
――事の発端は 先日セイントベルの街で起きた『悪魔の使徒の襲撃事件』にあった。
上級の冒険者でも全く歯が立たない『悪魔の使徒』が大挙として押し寄せたことにより、セイントベルの街は甚大な被害を負うことになる。
ここで問題となるのは『誰が事件の責任を負うか?』ということである。
結論から言うと、そこで白羽の矢が立ったのは俺だった。
不運なことに俺は敵将の幹部、ルーミルと会話しているところを一部の住民に目撃されていたらしい。
更に身辺調査を重ねると、俺の周りには沢山の魔族の女の子たちが生活していることが判明した。
『今回の事件はカゼハヤ・ソータが魔族と結託して、政府転覆の目的を持って仕組んだものである』
政府は今回の事件の真相をそんな感じにでっち上げて、俺のことを監獄の中にぶち込んだというわけである。
「……我ながら絶望的な状況だな」
不思議な気分だった。
たしかに自分の身に起こった出来事なのに何処か他人事のようにも感じられる。
人間の心っていうのは案外『処理できない絶望』を受けると、他人事のように受け止めることでバランスを取っているのかもしれない。
「うおっと……」
部屋の様子を確認するために立ち上がろうとすると、足に力が入らずに転んでしまう。
改めて見ると酷い部屋だな。
小さな窓とトイレがそれぞれ1つずつ付いている以外は本当に何もない部屋であった。
ひとまず体調の悪化原因を探らならないと。
そう考えた俺は、すかさずそこでステータスを確認。
カゼハヤ・ソータ
職業 魔物使い
レベル 595
生命力 27(↓248)
筋力値 1(↓99)
魔力値 2(↓216)
精神力 3(↓3063)
状態
衰弱
加護
利用不可
スキル
利用不可
体に力が入らない原因がハッキリとした。
間違いない。
今回の異変は状態異常『衰弱』が引き起こしたものである。
泣き面に蜂とはこのことだな。
ただでさえ状況は絶望的なのにステータスを大幅に下げられ、スキルを封じられてしまったとなっては手足をもがれたのと同義である。
「クソッ……! どうしろって言うんだよ!」
途方に暮れた俺は力なく床を叩くことしか出来なかった。
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