異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

海水チャージ



 海行きを決めた後は誰がワイバーンに乗るかを決めるターンである。
 前回、俺の後ろに乗ったのは、アフロディーテだったので今回は他の3人から選ぶとしよう。


「よーし。誰がワイバーンに乗るか、3人でじゃんけんで決めようか」


 後になって気付いたのだが、こういうのは恣意的に選んでしまうと人間関係に亀裂が入ってしまうかもしれないよな。

 そういうわけで今回は完全に運任せにしようと思う。


「ちょっと待て。3人ということはボクも含まれているのか?」

「当然だろ。俺たちは……互いに互いを認め合った仲間じゃないか!」

「ふざけるな! 何が悲しくて男同士で乗らなくてはならないのだ! 当然、ボクは辞退させもらう!」

「……ほう。この期に及んで、ご主人さまの厚意を無碍にしますか」

「…………」


 威勢良く拒否するロストであったが、キャロライナの一言によってカチンコチンに硬直していくのが分かった。


「ふふふ。実を言うと以前からドラゴンに乗ってみたいとは思っていたんだ。当然、ボクは参加させてもらう!」


 掌返しが早すぎる!
 お前はもう少し男としてプライドを持って方がいいと思うぞ。


「よーし。いくぞー。じゃんけんぽん」


 結果発表。
 いや、まぁ途中からこうなるんじゃないかっていう気はしていたんだけどさ。

 どうしてロストはこういう余計なところで運を使っちまうんだうな。


「うぅぅ。残念。中々、自分の番が回ってこないッスね」

「…………」


 ロストがじゃんけんで勝ったことにより場の空気は途端に微妙なものになっていた。
 特にキャロライナがロストに向ける眼差しは一層険しさを増している。


「というわけで。今日はよろしくな。ロスト」

「……クソッ。何が悲しくてカゼハヤの後ろになんか乗らなければならないのだ」

「ロスト。ご主人さまに何か言いましたか?」

「ワーイ! やったぁぁぁ! 嬉しいぃぃぃ! 嬉しいぞ~~~~!」


 理不尽過ぎる展開に精神がやられたのだろうか?

 半ばヤケクソになったロストは、ハイテンションのままピョンピョンと地面を飛び回っていた。


 ~~~~~~~~~~~~


 ワイバーンに乗ること30分後。
 俺たちが向かったのは、前回のクラーケン討伐クエストの時に使ったビーチであった。

 この近辺なら一目もないし、思う存分に作業に没頭することができるだろう。


「召喚……クラーケン!」

「ふごおおおおぉぉぉ!」


 クラーケンを召喚して海の中に入れてやる。

 先程までの瀕死状態から一転。
 クラーケンは嬉しそうにして海の中を泳ぎ回っていた。


(そっちはまだ時間かかりそうか?)

(今全力で作業中ッス! あと2時間くらいはかかりそうですかね)


 現在ボールの中にいるメンバーたちは、海エリア設立に向けて全力で作業中である。

 ちなみにボールの中は、無数のブロックの集合体。
 分かりやすく言うとサンドボックス系のゲームのような構造になっているらしい。

 キャロライナが魔法を使って、ブロックを破壊して、ゴブリンナイトたちが瓦礫を運ぶ――。
 この一連の作業を繰り返すことによって、ボールの中に大きな穴を開けようという計画である。

 当然のことながらボールの中に入れない俺には作業を手伝うことはできない。

 向こうの準備が整うまでの間は、のんびり海でも眺めていることにしよう。


 ~~~~~~~~~~~~


 それから。
 どれくらいの間、海を眺めていただろうか?

 暫くボーッとしていると、波の中から小さな生物が現れるのを発見する。


 リトルタートル LV 1/5  等級G

 生命力 15
 筋力値 10
 魔力値 5
 精神力 5

 スキル
 水属性魔法(初級)


 ん? あいつはたしか……?

 思い出した!
 あいつは以前にバーサクシャークに襲われていた亀モンスターだ!

 俺の記憶が正しければステータスも一致しているので、別個体という可能性は低いだろう。


「キュー! キュー!」


 亀モンスターは俺の傍に近づくと、可愛い鳴き声を上げる。

 どうやら向こうに敵意はないらしい。

 仮に俺を油断させるためのワナだったとしても相手は所詮ランクGモンスター。
 特に警戒する必要はなさそうである。


「ん? 腹が減っているのか?」

「キュッ。キュッ」

「トイレに行きたいとか?」

「キュッ。キュッ」

「もしかして……付いて来いって言っているのか?」

「キュー! キュー!」


 当たりか。
 言葉は分からないが、なんとなくの仕草で分かる。

 亀モンスターは『先に行くぞ』と言わんばかりの勢いで海の中に入っていく。

 ちょうど暇を持て余していたところだし退屈しのぎには良いだろう。


(キャロ。前にかけてもらった潜水魔法をお願いできないか?)


 そう考えた俺はキャロライナにプルーフの魔法をかけてもらい、亀モンスターの後を追うのであった。


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