異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

VS 竜王女2


 ぐわっ。
 間近で見ると、スゲー迫力だな。

 この威圧感は単純に体が大きさだけで出せるものではないだろう。

 クルルの全身からはステータスの数値に相応しい強者のオーラが滲み出ていた。


「ご主人さま! ここは私が引き受けます!」


 吸血鬼 等級S LV173

 生命力 1732
 筋力値 1240
 魔力値 1520 
 精神力 1428

 スキル
 火属性魔法(上級) 風属性魔法(上級) 水属性魔法(上級) 闇属性魔法(上級) 光属性魔法(中級)


 声のした方に目をやると、吸血鬼モードになったキャロライナが戦闘態勢を整えていた。

 改めてみると、キャロライナのステータスはやはり凄い。

 だがしかし。
 相手が相手だけに今日この瞬間だけは心もとなく見えてしまう。


「……グッ!」


 単純な近接戦闘では筋力値がものを言うのだろう。
 クルルの巨大な拳を受けたキャロライナは、そのまま体を大きく宙に浮かせることになる。


「ふふふ~。やはり来たわね~。キャロライナ~!」


 キャロライナに一撃を入れたクルルの表情は、歓喜の色に染まっていた。

 もしかしたらクルルはキャロライナとの戦闘を心待ちにしていたのだろうか?

 十分に考えられる。
 この場に到着するまでに戦闘になった魔物がサラマンダー1匹というのは少な過ぎると思っていたんだよな。


(……クルルの攻撃は暫く私が受け止めます。ご主人さまは隙を見て、ボールを当てて下さい)

(分かった!)


 ここまでは作戦通り。
 俺はコンタクトのスキルを利用してキャロライナと連絡を取りながらも、徐々にクルルの視界から遠ざかる。


「弱い! 弱くなったわね! キャロライナ……!」 


 やはりクルルの戦闘能力は規格外である。
 実際に自分の目で見るまでは信じられなかったのだが、クルルと交戦するキャロライナは完全に劣勢の模様を呈していた。


「300年前のアテクシは……アータに手も足も出なかった。しかし、今は違う! 人間たちの中に混じって弱体化したアータと、最後まで魔族としての誇りを捨てなかったアテクシ! 勝負の差はそこでついたわね!」

「……クッ」


 まずい! これ以上はキャロライナの体力がもたない!
 本当はもう少し注意を引き付けておくのがベストだったんだけどな。

 贅沢を言っていられる余裕はなさそうだ!


(いけぇぇぇえええええええええええええ!)


 意表を突くには絶好のタイミング。

 完全に四角から投げられたカプセルボールはそのままクルルの体に命中する――はずであった。


「なにっ!?」


 だがしかし。
 勝利を確信したその瞬間に驚くべきことが起こった。

 これは……風の鎧だろうか?

 クルルの体の周辺に吹き荒れる強風によって、俺のボールは無情にも弾き返されることになった。


「ふふふ。おバカさん! 貴方のボールに不思議な力が宿っていることは、部下から聞いているわよ! 後でキッチリとステファニーは返してもらいますからね!」

「…………ッ!」


 や、やられた!
 アジトの中にサラマンダーを配置していたのは俺の戦闘スタイルを見破る目的だったのか。

 考えろ。
 どうすればクルルにボールを当てることができる。

 見たところ……風の鎧はボールを弾いてからも常時発動しているように見える。
 つまりは意表を突いたところで突破できるような類のものではない。

 ……。
 …………。

 あれ……もしかしてこれ、詰んでいるじゃね?

 考えても……考えても……このピンチを打破する作戦が思い浮かばない。

 最初の……アフロディーテをゲットした時からそうだった。
 これまで俺のカプセルボールのスキルは意表を突いたからこそ格上の相手を倒す必殺技になることができた。

 だがしかし。
 このスキルは相手に特性を知られてしまうと容易に対策を立てられてしまうという欠点が存在するのである。

 カプセルボールの致命的な弱点に気付いた俺は絶望に暮れるのであった。


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