異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

王女の素顔


 それから翌日のこと。

 無事に屋敷に住み着いたモンスターを討伐した悠斗は王都エクスペインの中心部であり、象徴ともされているセントレア城を訪れていた。


「ふふふ。馬子にも衣装とはよく言ったものだな。その恰好、随分と似合っているではないか」

「ハハハ……。ラッセンさん。あまり、からかわないで下さいよ」


 その際、ラッセンに勧められた衣服を着用しておくことも忘れない。
 悠斗が身に着けたタキシードスーツは、ロードランド領で伝統的に用いられている正装である。

 王族との謁見を果たす場合、正装の着用がマナーとなっていた。


(うお……。これは凄いな……)


 王女の部屋に入るなり、悠斗の視界に飛び込んできたのは、古今東西、和洋折衷、様々な種類の人形である。

 今にして考えてみると、屋敷の中に置かれていた人形は、他でもない王女の趣味だったのだろう。

 たくさんの人形に囲まれたその部屋は、メルヘンチックな雰囲気を醸し出している。


(うーん。警備の人間が一杯で王女様の姿が見えないな……)


 階段を隔てた先にはピンク色のカーテンと屈強な兵士たちが立っていた。

 おそらくカーテン越しに見えるのが王女クルルその人なのだろう。


「王女殿下。冒険者、ラッセンと、冒険者ユートが参りました」


 階段の前に膝を突いたラッセンはプリプリのお尻を突き出して頭を下げる。悠斗もそれに倣う。


「頭を上げてください。貴方たちの活躍は聞いておりますわ」


 鈴を転がすような声音で王女クルルは言った。


(流石は王女さま。綺麗な声をしているよな~)


 悠斗は感動していた。
 未だかつて悠斗は、これほどまでに美しい女性の声を聴いたことがなかった。

 王女の姿は確認することができないが、カーテン越しからでも、上品でいて清らかなオーラが伝わってくるようであった。


「冒険者ユート。貴方の活躍はここセントレア城にも聞き届いています。此度の活躍、お見事でした。本当になんとお礼を申し上げれば良いのやら」

「いえいえ。お礼なんていりませんよ。ボクは当然のことをしただけですから」

「そういうわけにはいきませんわ! 今すぐに使いの者に報酬を用意させますから。ユートさんはわたくしの部屋でゆっくりしていってくださいまし」

「報酬? ふふふ。そんなもの、ボクはとっくに受け取っていますよ」


 キリッとした凛々しい顔つきで悠斗は言った。


「貴方のような美しい方とお知り合いになれた。ボクにとってはそれが最大の報酬です」

「…………!?」


 悠斗の言葉を受けた王女クルルは衝撃を受けていた。

 王族の家に生まれ、幼い頃より、蝶よ花よと育てられてきたクルルは、今まで同年代の男子と察する経験に恵まれてこなかった。

 現代日本では『いまいち』女性にもてなかった悠斗であったが、ここ異世界トライワイドでは、悠斗のような黒髪黒目の男は、女性たちから絶大な支持を受けている。

 悠斗のような美男子(異世界基準)に口説かれることは、クルルにとって堪らないものだったのである。


「ユートさま。わたくしはずっと、貴方様のような強い殿方を待ち焦がれていましたの!」


 悠斗の言葉に心を揺さぶられた王女は、薄ピンクのカーテンを開いて、その姿を露にする。


「…………んなっ!?」


 その直後、悠斗は困惑していた。

 何故ならば――。
初めて目の当たりにする王女の顔立ちは、ものすごく残念なものだったからである。 


(そうだよな。王女だからと言って、美人であるとは限らないよな……)


 どんなに声が美しいからといって、容姿まで美くしいとは限らない。
 クルルの容姿は、首から下までは絶世の美女と評することのできるクオリティを誇っていたが、残念ながらその顔立ちは、お世辞にも『美しい』と呼べるものではなかったのである。


『可愛い女の子には優しく、そうでない女子はまあそれなりに扱うこと』


 というのが幼少期の頃より、悠斗が近衛流の師範である祖父から教えられてきた言葉だった。

 総合的に考えて、クルルの容姿はどう控えめに見積もっても『まあそれなり』に分類されるタイプであった。


「ユートさま♡ ユートさま♡」


 困惑するユートとは対照的に情熱的なアプローチを続けるのはクルルである。

 本音を話して袖にすることは簡単だが、女性を傷つけるような言葉を吐くことは、悠斗にとっては有り得ない選択であった。


「ラ、ラッセンさん!?」

「ハハハ。良かったな。ユートくん。王女さまから気に入ってもらえて」


 子犬のような眼差しで助けを求める悠斗であったが、当のラッセンは『自業自得だ』と言わんばかりに全く助け舟を出そうとはしない。

 その後も、王女様から熱烈な好意をぶつけられ続けた悠斗は、複雑な気持ちを抱くのだった。

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