異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

エピローグ2 ~ 5人目の仲間 ~


 ルーメルに残した最後の用事、『墓参り』を済ませた悠斗は、アパートに戻って帰りの支度を整えていた。


「いよいよ。この街とも別れなのだな」

「まあ、帰りたくなったら何時でも戻ればいいさ。バイクがあれば移動も簡単にできるからな」

「いや。主君の心配には及ばないさ。私にとっての帰るべき家は、主君のところなのだからな」


 とても強がって言っているようには思えない。

 何時の間にかシルフィアの表情は、故郷に対する未練を微塵も感じさせないものになっていた。


「そういえば今朝からサクラの姿が見えないな」

「ふむ。言われてみると妙だな。何時もであれば、執拗なまでに私の近くにいるはずなのだが」


 何気なく周囲を見渡してみると、ガチャリとドアが開いて、探していた人物が顔を覗かせる。

 アパートから出てきたサクラは、どういうわけか唐草模様の大きな風呂敷を背負っていた。


「失礼いたしました。少々、準備に手間取っていたもので。それでは行きましょうか」

「えっ。行くってどこに?」

「決まっているでしょう。貴方の家ですよ」

「「えええええっ」」


 予想外に過ぎるサクラの発言を受けた悠斗&シルフィアは、同時に驚きの声を漏らすことになった。


「おいおい。まさかお前、このまま居候として俺のところに居座るつもりでいるんじゃないだろうな?」

「いいえ。付いていくからには覚悟はできています。ほら」


 何を思ったのかサクラは、自らの右手を悠斗の元に差し出した。


「早く呪印を施しなさい。お嬢さまから聞きましたよ。コノエ・ユート。どうやら貴方は《隷属契約》のスキルまで使えるらしいですね」

「ちょっと待て。それってもしかして……サクラが俺の奴隷になりたいっていう意味なのか?」

「無論、そのつもりでしたが?」

「簡単に言ってくれるなぁ……」


 悠斗は迷っていた。

 これまで悠斗が奴隷ハーレムとして仲間に加えてきたのは、スピカ、シルフィア、リリナ、サーニャと、それぞれ事情があって、1人で生きていくことが難しい女の子たちばかりだった。

 いくら本人が希望しているとは言っても、果たしてサクラのような自立している女の子を奴隷にして良いものなのだろうか?

 悠斗にとっても判断が難しいところだった。


「よもや貴方、ワタシにあんなことやこんなことをしておいて……。この場で見捨てて行くつもりだったのですか?」

「うっ……」


 痛いところを突かれた悠斗は言葉を詰まらせる。

 たしかに、たしかにだ。

 このところの悠斗は、旅先で女の子たちと肉体関係を持っても、奴隷として傍に置くことには慎重な姿勢を見せていた。

 それというのも女の子を奴隷にするという行為は、その子の人生に対して責任を持つということと同義であり、簡単に決めて良いものではないと考えていたからである。

 結果として、悠斗はいわゆる『現地妻』のような関係の女の子を多く持つようになっていた。


「いいのかよ。俺の奴隷になるっていうことは、それ相応の働きはしてもらうことになるんだぞ?」


 他の女性メンバーとは隷属契約を結んでいるのに、サクラにだけ特別な待遇を施すわけにはいかない。
 奴隷として正式に傍に置くからには、屋敷の家事はもちろん、性的な奉仕も任せていくことになるだろう。


「当然です。もっともワタシはたとえ発情豚の奴隷になってとしても、絶対に屈するつもりはありませんけどね」


 不敵な笑みを零しながらもサクラは言った。

 何故だろう。
 これから奴隷として働くことになるにもかかわらず、サクラの表情は心なしか活き活きとしているようだった。


「シルフィアもそれで良いのか?」

「ふふふ。愚問だな。私は自分よりも主君とサクラの気持ちを尊重したい。故に私に伺いを立てる必要はないぞ」


 2人の許可が出ているのであれば自粛する必要もないだろう。
 サクラが奴隷ハーレムに加入することになれば、夜の営みにもバリエーションが増していくことになりそうであった。


「それじゃ、契約をするぞ」


 親指の薄皮を噛み千切った悠斗は、サクラの手の甲に向かってそれを押し付ける。


 隷属契約@レア度 ☆☆☆
(手の甲に血液を垂らすことで対象を『奴隷』にする能力。奴隷になった者は、主人の命令に逆らうことが出来なくなる。契約を結んだ者同士は、互いの位置を把握することが可能になる)


 対象を奴隷にする《隷属契約》のスキルを発動するためには、スキルホルダーの新鮮な血液が必要であった。

 悠斗が血液を垂らした次の瞬間。

 サクラの右手は眩いばかりの光に包まれることになる。


「なるほど……。これが呪印ですか」


 暫くするとサクラの手の甲には、幾何学的な模様の《呪印》が浮かび上がっていた。


「それじゃ、改めて、これからよろしくな。サクラ」

「はあ。自ら希望したこととはいえ、よりもよって発情豚の奴隷になってしまうなんて。ワタシも墜ちたものですね」

「…………」


 どうやら奴隷と主人の関係になったところで、サクラの態度が変わるわけではないらしい。
 こうして悠斗はスピカ、シルフィア、サーニャ、リリナに続く、5人目の奴隷を獲得することに成功するのだった。 




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