異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
勝負の提案
すっかり海を満喫した悠斗は、ビーチパラソルの下に戻って体を休めることにした。
「いや~。今日はたくさん遊んだなぁ~」
心地の良い疲労感が悠斗の全身を駆け巡っている。
地平線の果てまで広がるエメラルドグリーンの海は、見ているだけで心が安らぐかのようであった。
(……海なんて滅多に見ることができないだろうし、スピカたちも連れてくれば良かったかな)
悠斗にとって心の残りだったのは、他の女の子たちに海を見せてやれなかったことだった。
物心付いた時から宿屋で住み込みの仕事をしていたスピカはもちろん、森の中で暮らしていたフォレスティ姉妹も海を見た経験はなかったのである。
『びえええええ! ご主人さま! 私、海なんて初めて見ました!』
『スゲー! これが海か!』
『ふにゅ~! パナイのです! 海、でかいのです!』
目を閉じれば、海を前にしてテンションを上げる水着姿の女の子たちの様子が瞼の裏に浮かぶようだった。
シャリシャリ。
シャリシャリシャリ。
悠斗が空想を膨らませいると、何処からともなく奇妙な音が聞こえてきた。
不思議に思って視線を移すと、そこにいたのは中腰の姿勢で浜辺の砂を掘り返すシルフィアの姿だった。
「ん? 何をやっているんだ。シルフィア」
「ああ。留守をしてくれている者たちのため、何か土産を用意しようと思ってな。綺麗な貝殻が落ちていないか探していたのだ」
そう言ってシルフィアは、目を皿にして浜辺の砂の中を探索していた。
中腰の姿勢になったシルフィアは女性らしい体のラインが強調されて、より色っぽいものになっていた。
(そうか……! お土産か……!)
瞬間、悠斗の脳裏にピコンと1つのアイデアが浮かび上がる。
悠斗には綺麗な貝殻を集めるような可愛らしい趣味はなかったが、海で入手できるお土産は貝殻だけには留まらない。
魚の1匹でも釣って持ち帰ってやれば、スピカたちも喜んでくれるだろう。
「なぁ。シルフィア。この辺に釣りの道具を売っている店は知らないか?」
「む。どうしたのだ。急に」
「せっかくだから俺もスピカたちにお土産を渡そうかなって。魔法のバッグの中に入れておけば魚だって、鮮度もそのままで持ち帰れるだろうし」
異世界に召喚されてからというもの悠斗は、これまであまり海の魚を食べる機会はあまりなかった。
それというのも王都エクスペインは港町からは遠く離れた内陸に位置しており、海の魚が貴重品として扱われていたからである。
この機会に魚介系の食材のストックを多く獲得しておけば、食卓のレパートリーが飛躍的に増えることに違いない。
「――話は聞かせてもらいました」
黒色の水着が濡れているところを見るに、ここに来る前まで海で泳いでいたのだろう。
話の内容を聞いていたサクラが2人の前に現れる。
「釣りに必要な道具はこちらで用意します。既にナルビアの街にはロクな釣り具店が残っていませんからね」
「おお! それは助かるぞ! サクラ!」
「ただし条件があります。コノエ・ユート。ワタシと釣りで勝負しなさい」
「……はい?」
突如としてサクラから謎の提案を受けた悠斗は、頭の上に疑問符を浮かべていた。
「ワタシが勝利した場合、お嬢さまに二度と不埒な真似を働かないこと。その代わり、貴方が勝利した場合、今後は二度とお嬢さまとの付き合いに関して何も言いません」
悠斗は戸惑っていた。
近いうちにサクラから何かしらの形で再戦の申し込みがあるだろうということは考えていたが、流石に釣り対決というテーマは想定の範囲外だった。
「どうですか? 今なら特別に勝利条件として、貴方の言うことを何でも1つ聞きましょう。これなら文句はないですよね?」
ここまで言うからには、おそらくサクラの方には何か今回の勝負に並々ならない自信があるに違いない。
安易に勝負を引き受けるのは危険ではあるが、果たして『断る』という選択肢が許されるかも疑問である。
「な、何を言っているんだ! サクラ! バカな真似はよせ!」
「いや。いいんだよ。シルフィア」
右腕を伸ばした悠斗は、慌てて仲裁に入ろうとするシルフィアの動きを静止する。
「いいぜ。そのバトル……受けてやるよ」
釣り対決、というテーマこそ予想外であったが、悠斗にとってサクラの提案は好ましいものであった。
そろそろサクラとのバトルに決着を付けたいと考えていたのも悠斗の方も同じである。
勝敗を決めるのに『暴力』以外の選択肢があるのならば有難い。
悠斗にとって美少女を傷つけるような行為は、たとえ仲間のためとは言っても、可能な限り避けたかったのである。
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