異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
夜の攻防
耳を澄ませば夜虫たちの演奏が聞こえてくる。
悠斗たち一向がサクラの住んでいるアパートに入った時には、すっかりと日が暮れて夜になっていた。
「……申しわけございません。このようなものしか用意ができなくて」
アパートのロビーの中に集まった3人は食事休憩を取ることにした。
その日の夕食は、乾パン、干し肉を浮かべたスープ、野菜の酢漬けと保存の利く食材をメインにしようして作られたメニューだった。
ルーメル政府の諜報員として働いているサクラが戻ってくることは珍しい。
このところのサクラは、自分のために料理をする機会がめっきりと減っていたのである。
「いや。俺は全く気にしないよ」
「……そうだな。私も先生と修行をしていた頃は、こういった食事ばかりだった気がするよ」
2人からのフォローを受けたサクラはホッと胸を撫で下ろす。
たまにはこういった質素な食事も悪くない。
元がメイドだったこともあり、料理の味に関しては文句の付けようのないものだったのである。
「お二人の部屋については別々に用意しておきましたので。交渉の準備が整うまでの間は、自分の家だと思ってゆっくりとくつろいで下さい」
ゆっくりと席を立ったサクラは、悠斗&シルフィアにアパートのカギを手渡した。
それぞれのカギに書かれた番号は、悠斗が101番、シルフィアが308番。アパートの中でも最も遠く離れた部屋同士だった。
(……サクラのやつ。この配置は明らかにわざとだよな)
2人の部屋の距離が遠いのは、シルフィアの身を守るためのサクラなりの配慮なのだろう。
今回の遠征においてサクラは何よりも悠斗の毒牙を警戒していたのである。
「む。どうした主君。考え事か?」
「……いや。何でもない。何でもないよ」
悠斗の視線を引き付けて離さないのが、たわわに実ったシルフィアの胸である。
サクラの用意した上品な部屋着に身を纏ったシルフィアの姿は、悠斗の中の劣情を煽るのに十分なものがあった。
(見ていろよ。今夜……今夜こそは……! あのおっぱいを揉んでやるからな!)
思い返してみると、このところサクラには煮え湯を飲まされっぱなしである。
サクラの妨害工作によって悠斗は随分と長い間、シルフィアのおっぱいを揉んでいなかった。
覚悟を決めた悠斗は瞳の奥にメラメラと闘志の炎を燃やすのだった。
~~~~~~~~~~~~
闇の密度が一層と増してくる深夜の時間。
満を持してベッドから起き上がった悠斗は、シルフィアの部屋を目指していた。
影縫@レア度 ☆☆☆☆☆☆
(影の中限定で高速移動を可能にする力)
その際に《影縫》のスキルを発動しておくことも忘れない。
昼時間は何かと不便な制約が付き纏う《影縫》のスキルであるが、夜の時間だけは使い放題になるのである。
(ククク。まさかサクラのやつも……俺が影の中に隠れているとは思うまい……!)
息継ぎのために影の中から顔を出した悠斗は、邪な笑みを浮かべていた。
このスキルの数少ない欠点の1つは、『影の中にいる間は呼吸ができなくなる』ということにあるのだが、周囲が暗ければ息継ぎのタイミングで誰かに発見される心配もないだろう。
影の中に潜って素早く3階まで移動した悠斗は、この時点で自らの勝利を確信していた。
(よし……。到着だ……!)
今現在、悠斗の目の前にはシルフィアが泊っていると思しき308号室の扉があった。
何時ものように水魔法で作成した即興のカギで扉を開こうとする悠斗であったが、そこで1つの違和感を覚える。
(あれ……。開いているのか……?)
警戒心が強いシルフィアが扉のカギを締め忘れるとは珍しい。
(もしかして……実はシルフィアも期待していてくれたのかな……?)
可能性としては十分に考えられる。
サクラと同行するようになってからというもの、夜の情事についてお預けをくらっていたのはシルフィアも同じだった。
真面目なようでいて性欲は人並み以上にあるシルフィアのことである。
おそらく今もベッドのシーツを濡らしながら、自分の到着を心待ちにしているのではないだろうか?
悠斗がそんな期待に胸を膨らませながらも扉を開けた直後であった。
「残念。ワタシでした」
悠斗の視界に飛び込んできたのは、手元にあるランプで自らの顔を照らすサクラの姿であった。
デジャブを覚える光景を目にした悠斗はガックリと肩を落とす。
「……どうしてここに?」
「ふふふ。実に簡単なトリックです。薄汚い発情豚の考えるようなことなどワタシにはお見通しなのですよ」
サクラにとって悠斗が夜這いに行くことは想定の範囲内であった。
相手の行動が分かれば後は簡単である。
悠斗が部屋の番号を記憶したところを見計らって、シルフィアの部屋を後から取り換えるだけである。
悠斗と同じ1階の部屋のカギを渡すとシルフィアは、上機嫌に相談に応じることになった。
「覚悟して下さい。二度とお嬢さまに不埒な真似を働けないよう――。今夜のたっぷりと可愛がってあげますから」
妖しく微笑んだサクラは、手元のスイッチを押して部屋の明かりを灯す。
その直後、悠斗の視界に飛び込んできたのは思わず目を覆いたくなるような衝撃の光景であった。
「んなっ――!?」
驚きのあまり開いた口が塞がらない。
鈴付きの首枷。トゲトゲのムチ。低温蝋燭。スパンキングラケット。ポール付きの口枷。……などなど。
部屋の中にあったのはサクラの保有する大量のSMグッズであった。
「安心して下さい。痛いのは最初だけですよ。きっと直ぐにワタシなしでは生きられない体になりますから」
優しく悠斗の耳元で囁いたサクラは、妖しく唇を舐めずりする。
何時の間にかサクラは身に着けていたメイド服を脱ぎ去り、黒色のボンデージスーツ姿を露にしていた。
(……これはまずいな)
全てはこの瞬間のため、何か仕掛けを打っていたのだろう。
慌てて引き返そうとする悠斗であったが、何時の間にか入口の扉のカギは固く閉ざされていた。
その時、悠斗は悟った。
おそらくこの先もサクラという壁を乗り越えない限りは、シルフィアには指一本触れることができないに違いない。
何故だろう。
悠斗の中には不思議とそんな確信があった。
(……仕方がない。やるしかないか)
女の子を無理やり襲うような真似は悠斗にとっても本意ではないのだが、手段を選んでいられるような状況でもなかった。
(ルード……!)
呪文を唱えたその直後、悠斗の両手からはモヤモヤとした黒色の物体が放出される。
対象の性的感度を上昇させる呪属性のルードは、悠斗が最も得意とする魔法の1つだった。
悠斗は勢い良くサクラの胸を鷲掴みにして、ルードの魔法を浴びせにかかる。
だがしかし、そこで予想外のことが起こった。
「……やれやれ。この期に及んで魔法頼みですか」
果たしてこんなことが許されても良いのだろうか。
ルードの魔法を受けているにもかかわらず、どういうわけかサクラは持ち前のポーカーフェイスを全く崩さなかったのである。
「な、なんだと……!?」
「残念でしたね。無能な発情豚が考えそうなことは全てお見通しなのですよ」
サクラがルードを受けても平然としていられたのは、幼い頃より彼女が鍛錬してきた暗殺術にあった。
暗殺者の世界では、捕虜となる人間を快楽攻めにして情報を吐かせる、というのは一般的な行為である。
暗殺者にとって依頼人の名前を口にすることは、何よりも恥ずべきことだった。
そういう事情もあってサクラは、幼い頃より快楽に対する耐性をつける訓練を積んできたのである。
「今度はこちらの番です!」
サクラは素早いタックルを繰り出して、悠斗の体を床の上に押し倒す。
次の瞬間、何を思ったのかサクラは自らの尻を使って悠斗の体をプレスしたのである。
「もがっ……! もがぁっ……!?」
細身の身体の割に尻のサイズは大きい。
スベスベとしていながらもモチモチとした極上の弾力を有している。
サクラの尻によって顔面を圧迫された悠斗は、これまでに経験したことのない感覚を味わっていた。
(……い、いかん。このままでは開けてはダメな扉を開けてしまいそうだ!)
男のプライドに賭けてもサクラの尻に敷かれ続けるわけにはいかない。
そう判断した悠斗はサクラの尻を鷲掴みにして、ルードの魔法を浴びせにかかる。
「懲りない人ですね。ワタシに魔法は効かないのですよ」
余裕の表情で溜息を吐くサクラであったが、そこで自らの体に異変が起きていることに気付く。
「な、なんですか。この魔法っ……!?」
体が熱い。
悠斗に触れられる度にビクビクと敏感になった体が痙攣してしまう。
「や、やめっ! この魔法……! ただのルードではありませんねっ!?」
サクラの予想は的中していた。
悠斗の使用したルードは、《魔力圧縮》のスキルによって威力を5倍に引き上げた『5倍ルード』だったのである。
魔力圧縮@レア度 ☆☆☆☆☆☆
(体内の魔力を圧縮するスキル)
悠斗の保有する《魔力圧縮》のスキルは燃費の悪化と引き換えにして、あらゆる魔法の効果を高めること可能にしている。
サクラの力では通常出力のルードに耐えることはできても、5倍の威力になったルードの快楽には打ち勝つことができなかったのである。
「んっ――」
サクラは咄嗟に歯を食いしばり、淫らな声が漏れそうになるのを堪えていた。
実のところ、悠斗にとって5倍ルードを試すのは初めての経験だった。
それというのもの通常のルードですらも、悠斗の周囲の女の子たちには刺激の強過ぎるものだったからである。
ただでさえ効果の強力なルードの魔法が、5倍の威力でかかっているのである。
今頃サクラの頭の中は真っ白になって、気持ち良くなりたいという以外の感情が全て消失しているに違いない。
「ふふふ。よくもまぁ、今日まで俺を散々とバカにしてくれたな……!」
己の経験を以てして悠斗は理解していた。
普段『攻める側』に立っている人間ほど、『攻められる側』に回ると脆いものなのである。
おそらく生まれついてのドSな性癖を持ったサクラは、男の側から攻められる経験が全くないのだろう。
「クッ……。ケ、ケダモノめっ! ワ、ワタシに何をするつもりですか……!?」
サクラの質問を受けても悠斗はあえて何も回答しない。
返事の代わりに悠斗は、自らの両手から無数の触手を生成する。
「ひっ……!?」
驚いたサクラは、床の上にペタンと尻餅を突いてしまう。
これまで数々の『快楽攻め』に耐える訓練を重ねてきたサクラであったが、流石に人間の体から『触手』が生えているのを見るのは初めてのことだったのである。
「クッ……! 殺してやる! 殺してやる!」
ルードの魔法によって既に感度が上がっているサクラを墜とすことは簡単であった。
濃密な殺気を悠斗に放ち続けるサクラであったが、触手の本数が増える度に淫らな姿を晒してしまう。
いかに優れた暗殺者であっても、悠斗の触手攻撃に耐えることのできる女の子は存在しない。
その日の夜は一晩中、サクラの乱れた声が部屋の中に響き渡るのだった。
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