異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
ハウスキーパー
爽やかに輝く朝の日差しがテーブルクロスの上を照らしている。
その日、夜遅くまでサクラに絞られていた悠斗は、疲れ果てた面持ちで1階のリビングに向かっていた。
「おはよう。主君」
階段の踊り場で後から降りてきたシルフィアに声をかけられる。
疲労困憊の悠斗とは対照的に、ぐっすりと寝ることのできたシルフィアの肌はツヤツヤとしたものになっていた。
「ああ。おはよう。シルフィア」
「すまなかったな。その……昨日は私の当番だったはずなのに……。夜は気付くと眠ってしまっていたのだ」
言えない。
シルフィアの代わりに昨夜は、サクラに夜の相手を務めてもらっていたということは言えるはずがない。
当のサクラはというと誰よりも早くリビングに到着をして、呑気に朝のテータイムに入っている。
サクラの落ち着いた佇まいは、まるで居候という立場を感じさせない自然なものであった。
「……おい。ユート。何者なんだよ。あの鉄仮面は!?」
先に1階に降りて朝食の準備に取り掛かっていたリリナが呆れた様子で不満を漏らす。
今日から居候が1人追加されるということは聞いていたが、サクラの図太さまでは想定外だった。
勝手にキッチンに入ったサクラは、厚かましくも棚を開けて、お茶請けの菓子までも調達していたのである。
家事に対しては完璧主義を貫くリリナにとって、自身の『聖域』とも呼べるキッチンに侵入されることは我慢のできない事件であった。
「ああ。リリナには説明していなかったっけ。実はあの子、シルフィアの家に勤めていたメイドだったんだよ」
「メ、メイド!? あんなふてぶてしい態度のメイドがいるのかよ!?」
同じ家政婦という仕事を生業としている以上、リリナにも想うところがあるらしい。
サクラに対するリリナの眼差しは更に険しさを増して行く。
「なぁ。ユート。お前ちょっと、あの女に甘いんじゃないか? 自分を殺そうとしていた人間を居候として招き入れるなんて普通じゃないぞ!!」
「まぁ、それはそうなんだけどさ……」
リリナの主張は正論である。
たとえそれが敵対する存在であろうとも美少女には、とことん甘くなってしまうのが悠斗の弱点でもあった。
「もういい! 働かざるもの食うべからず! お前が言わないのなら、オレからアイツに文句を言ってきてやる!」
腕まくりをしたリリナは、今にも殴り込みに行きそうな勢いでサクラのもとに近づいていく。
「……この屋敷には既に優秀なハウスキーパーがいるようですからね。ワタシの出る幕はないと判断したのですよ」
呑気にお茶を飲みながらもサクラは、リリナに聞こえるように言葉を返す。
「はぁ? いきなり何を言っているんだ?」
「先日この家の屋根裏に忍び込んだ時に思いました。この家の家事を任されている人間は只者ではないと。
目の届かないところにまで一切の手を抜かない仕事振り……。同じ仕事をしている人間として嫉妬を覚えたくらいです」
不意に嬉しい言葉かけられたリリナはピタリと足を止める。
たとえそれが誰に気付かれるでもない場所であろうとも、常にピカピカの状態に掃除しておくことは、リリナが仕事をする上で外せない拘りのポイントだったのである。
「な、なんだよ……。もしかしてアイツ……結構良いやつなのかな……?」
同じ仕事をしている人間同士でも、これほどまでに性格に差が出るものなのだろうか。
扱いにく過ぎるサクラと扱いやす過ぎるリリナ。
2人のメイドを比較した悠斗は、複雑な想いを抱くのだった。
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