異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

痕跡



 オスワンから奪った地図を頼りにして悠斗が辿り着いた場所は、ラグール山脈(初級)だった。


『いいですかい。アニキ。エドワードの目的は洞窟の中で大量発生しているモンスターを使ってアニキの体力を削ることにあります。だから決して……モンスターと出会ってもまともに取り合わってはダメですぜ」


 悠斗はギリィから受けた言葉を思い出しながらも指定されたエリアに向かう。
 ターゲットとなる冒険者を魔物の巣に誘い出し、弱ったところを確実に仕留める、という作戦はエドワードに限らず多くの悪党にとっての常套手段でもあった。 


「あれ……。たしかここは……?」


 そこにあったのは見覚えのある洞窟であった。
 そこは以前、悠斗が《性別転換の実》を使用してスピカの冒険に同行した時に訪れたエリアであった。

 不思議に思いながらも洞窟の中に足を踏み入れる。


「なんだ……これ……?」


 洞窟に入って間もなくして悠斗は中の異変に気付く。

 いくらなんでも静か過ぎる。
 前回訪れた時は魔物の気配がそこらかしこにあったのだが、洞窟の中は不気味な静けさに満ちていた。


「……もしかしたら『先約』がいたのかな? だとしたらエドワードの作戦ってやつも台無しなわけだが」


 ジュエルウォーム 脅威LV11


 少し歩くと地面の上にジェエルウォームの死体が転がっているのを発見する。

 最初は何者かが『ウォームの宝石』を目当てにして洞窟の中を荒らしたのかとも考えたが、それにしては様子がおかしい。


 ウォームの宝石@レア度 ☆☆☆
(ウォームの体内から採れる綺麗な石。別名、山の真珠と呼ばれている)


 ジュエルウォームから採取できる『ウォームの宝石』は、全く手つかずの状態で放置されていたのである。


「討伐っていうより駆除を目的としていたんだろうな」


 おそらく死後1時間と経っていないのだろおう。
 ジュエルウォームの死体は未だに、熱を持ったままの状態であった。

 疑問を抱きながらも悠斗は洞窟の奥に歩みを進めていく。


「なるほど。こういうことだったのか」


 ジャイアントウォーム 脅威LV ???

 エラーメッセージ
(この魔物の情報を表示することができません)


 続いて悠斗の視界に飛び込んできたのは、ジュエルウォームの5倍ほどのサイズを持ったジャイアントウォームでの死骸だった。

 脅威LV ??? と表示されるモンスターは、ブレイクモンスターと呼ばれ、最近になって急増している謎の存在である。

 ジュエルウォームが大量発生していたのは、このブレイクモンスターが原因だったのだろう。

 こういうことは以前にもあった。
 悠斗が初めて遭遇したブレイクモンスター、ゴールデンオーガも悠斗が戦うことなく倒さていていたのである。


(となると問題は誰がこいつらを倒したかってことになるのだが……)


 今のところはハッキリとしたことが分からない。
 ただ1つ確実に言えることは、このまま洞窟の奥に進んでいけばブレイクモンスターを討伐した『誰か』に遭遇する可能性は高いということだった。


(誰か……来るな……)


 洞窟の中にコツコツと地面を叩く音が響き渡る。
 元来た道の――入口の方角から現れたのは、何時の日かあった長身痩躯の金髪男の姿であった。


「やぁやぁ。こうやって面と向かって喋るのは初めてになるね。ユートくん」


 薄ら笑いをしながら悠斗に近づいてくる男の名前はエドワード・ウィルソン。
 エクスペインの街に2人しかいないゴールドランク冒険者にして、オスワンと結託して悠斗を抹殺する計画を企てた男であった。

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