異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
弟子入り志願
「ここか……」
エルフの娘に教えられて向かった先にあったのは達筆な文字で『幻鋼流』と書かれた道場であった。
建物は古い。
おそらく築200年は超えているだろう。
歴史の古さという意味では《近衛流体術》を遥かに凌駕していることは、道場を見た瞬間に朧気ながらも理解することができた。
「なんだー! 貴様はぁっ……!」
ドードー・バルバイル
種族:ドワーフ
職業:武闘家
固有能力:なし
道場に到着するなり悠斗に声をかけてきたのは、ドワーフの中年男であった。
「あの……この道場にユナという方がいると聞いたのですが」
「いかにも。ユナ様はこの道場の師範だが?」
「会わせてくれませんか。どうやら俺は、ユナさんに会って幻鋼流を習わないといけないみたいなんです」
「…………」
話を聞いたドードーは、悠斗の体を上から下まで眺め回す。
「ダメだな」
「なっ。どうして!?」
「いいか。小僧。幻鋼流とは魔力で劣るが人間が、強大な魔族に打ち勝つために作られた特別な武術。貴様のような若造に会得ができるものではない。分かったら、帰った帰った」
「…………」
ドードーの言葉を聞いた悠斗は、益々と幻鋼流について興味を抱いていた。
『魔力で劣るが人間が、強大な魔族に打ち勝つために作られた特別な武術』
悠斗が求めていたのは、まさしくそういった類の技術だったのである。
「あの、参考までに聞いておきたいのですが、どうすれば魔力で劣る人間が魔族に打ち勝てるのでしょうか?」
「……チッ。仕方がない。特別に少しだけ教えてやるから、話を聞いたら帰るんだぞ」
ドードーは溜息を吐きながらも道着の袖を捲り始める。
強面な外見で初対面の人間には恐れられることが多いが、ドードーはこれでいて面倒見の良い人物だったのである。
「良いか。魔力というのは、魔法として対外に放出する他に、体の一部に集中させて肉体を強化することもできるのだ。ここまでは良いな?」
「はい。それはなんとなく分かります」
「簡単に言ってしまうと、幻鋼流とは少ない魔力を効率的に運用するための技術なのだ。こんな風にな……!」
「――――ッ!」
不敵に笑った次の瞬間。
ドードーの戦闘能力が飛躍的に上がっていくのが分かった
「魔力が……網目状に……!?」
「その通り。よく分かったな」
魔力は『網目状』に変化させることによって、その強度が飛躍的に上がる性質を持っていた。
その時、悠斗の脳裏に過ったのは、以前の武術トーナメントでサリーと戦った時の出来事である。
どういうわけかサリーは悠斗が度肝を抜くほどの肉体強度を誇っていた。
今にして思うと、あの強度は幻鋼流の技術を利用していたのだろう。
「ふふふ。どうやら貴様は筋が良いと見える。通常であれば魔力の流れを見極めるだけでも1年の修行が必要とされているのだぞ? よし。気が変わった。お前ならば特別にオレからユナさんに話をつけてやらんでもない」
「あ。もう幻鋼流については極めましたから説明はいいです。これまで修行に付き合ってくれて、ありがとうございました」
「……はい?」
ドードーは悠斗の言葉の意味を理解することができずにポカンと口を半開きにしていた。
「貴様、今なんと?」
「幻鋼流はもう極めました。俺の目的は達成されたので家に帰ることにします」
「…………」
そそくさと荷物をまとめて悠斗は帰りの支度を開始する。
その姿を目の当たりにしたドードーは、顔を赤くして怒り始める。
「貴様ァッ――! 幻鋼流を愚弄する気かァッ――!」
「いや。俺は別にウソを吐いているつもりはないんですけど……」
「ふざけるのも大概にしろ! いいか! 幻鋼流とは才能のある者でも基本的な技術を身に着けるのに10年はかかるとされている武術なのだぞ? あまり大人をからかうんじゃない――!」
「あ~。だったら一度試してみます?」
「なに……?」
「もしよければ全力のパンチを俺の体に打ち込んでくれませんか? 幻鋼流を極めた今の俺ならいい感じに攻撃を防げると思うんですよね」
「…………」
通常の状態であればドードーは、悠斗の挑発を『子供の戯言』と判断して無視していただろう。
だがしかし。
ドードーは怒っていた。
武術とは礼に始まり礼に始まる。
どうやら目の前の少年に見込みがあると感じたのは、とんだ見当違いだったらしい。
なんとしてもこの自信に満ち溢れた少年の鼻を明かしてやらなければ気が済まなかった。
「良いのだな……? 悪いがワシは手加減しないぞ」
「当然です。そうでなければ訓練になりませんから」
覚悟を決めたドードーは自らの右腕の拳に魔力を集中させて、圧縮。
網目状に形を作って肉体の強度を向上させる。
「面白い。ならばこの攻撃……受けきれるかぁぁぁ!」
この時点でドードーは自らの勝利を確信していた。
何故ならば――。
右手拳にのみ魔力を集中させれば良いドードーと違って、何処を殴られるか分からない悠斗は全身に魔力を行き渡らせる必要がある。
幻鋼流を極めているか否かは関係ない。
魔力の密度の問題により、最初から悠斗に勝ち筋など存在しなかったのである。
「うがああああああああああああああぁぁぁ! 手があああああぁぁぁ! 手があああああぁぁぁ!」
だがしかし。
驚くことに先に悲鳴を上げたのはドードーの方であった。
悠斗の体を殴ったドードーの拳は見るも無残に赤く腫れあがっていた。
「貴様……その魔力の編み込み方は……!?」
「ああ。はい。なんとなく普通に編むよりは、二重にした方が強そうだったので試してみました」
「バカなっ! バカな……バカな……バカな……!」
ドードーは戦慄していた。
悠斗の用いた二重に魔力を編み込む技術は、《ダブルグリップ》と呼ばれており、幻鋼流の継承者の中でも超一流の存在しか体得できないものであった。
つまり悠斗は、宣言通りにドードーの説明を聞いただけで幻鋼流を極めてしまったのである。
「な、何故だ!? どうしてこの一瞬で幻鋼流の技術を!?」
「一瞬ではないですよ。正確に言うと『これ』ができるようになるまでに10年以上はかかっていますし」
悠斗はこの超短期間で武術をマスターする技術を『引き算ラーニング』と名付けていた。
武術・スポーツというのは、それぞれ独立しているようでいて、実のところは多くの共通項目が存在している。
例を挙げると、サッカーで鍛えたキック力は空手に応用でき、空手で培ったパンチ力はボクシングに応用でき、ボクシングで磨かれたフットワークはレスリングに応用でき、レスリングで習得したタックルは相撲に応用できる……と言った具合である。
古今東西60種類以上の武術を極めてきた悠斗であれば、この共通項目も膨大な数に上ることになる。
悠斗はこの共通技術を『引き算』することで、あらゆる武術を一瞬にして極めることを可能としていたのである。
「そこまでだ。ドードー。後のことは私に任せて欲しい」
ユナ・クリスティ
種族:エルフ
職業:武闘家
固有能力:自然愛
自然愛@レア度 ☆☆☆☆☆
(植物の声を聞く力)
女性の声に釣られて振り返ると、そこにいたのは身長165センチくらいのエルフの女性であった。
胸はでかい。
悠斗の読みが正しければシルフィアと比較をしても何ら遜色のないサイズを誇っている。
だがしかし。
グラビアアイドルのような見た目に騙されてはならない。
彼女が持っている筋肉の質は完全に武闘家のものである。
ユナ・クリスティ。
彼女がアークの言っていた人物であることは直ぐに分かった。
「私の名前はユナ。ユナ・クリスティ。キミの名は?」
「近衛悠斗です」
「ユウトくん。キミが武闘家として尋常でない才能の持ち主であることは一目で分かったよ。どうやら幻鋼流の技術も説明を聞いただけで直ぐに習得してしまったみたいだね」
「え、ええ。そんな感じです」
思わず気のない返事をしてしまう。
それというのも悠斗は、エルフ族特有のユナのスレンダーな体に視線を釘付けにされていたからである。
もともとエルフには美しい女性が多かったが、その中でもユナは別格であった。
外見年齢は20代前半と言ったところだろうか。
悠斗の屋敷に住んでいる女性メンバーは10代が多かっただけに、ユナが持っている大人の色気は新鮮なものがあった。
「ユートくん。担当直入に言おう。どうだろう? 私の弟子になってみる気はないか?」
「分かりました」
「ふふふ。分かっている。これでも私はキミのような男は何度か見てきたんだ。こちらも相応の実力を見せろというのだろう?」
予想外の返事を受けたユナは、パチクリと瞬きをして状況を再確認する。
「すまない。もう1度言ってくれないだろうか?」
「是非ともお願いします! 俺、頑張りますから! 貴方の下でじっくりと武術を学ばせていただきたい!」
ユナのような綺麗な女性に武術を教えてもらうことができるのであれば、こんなに幸せなことはない。
最初の目的とは少し路線がズレてしまったものの――。
こうして悠斗はエルフの師匠の下に弟子入りを決めるのであった。
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