異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
出現! 偽悠斗!(後編)
「見損なったぞ! アタシは男を信用しない。けれど、キミだけは……世界で只一人キミだけは……信じられるような気がしていたのだぞ……」
知らなかった。
普段の辛辣な態度から誤解をしていた。
こんなことは初めてだった。
男勝りなラッセンは、普段絶対に人前で涙を見せたりしないのである。
ラッセンの目から零れ落ちる涙は、これまで2人の間で積み上げてきた信頼の証――。
それだけに悠斗は行き場のない憤りを感じていた。
「おや。もしかしてキミは……本物のユートくんなのか……?」
「……どういうことですか?」
ラッセンの言葉を聞いた悠斗は小首を傾げる。
本物も何も近衛悠斗という人間は世界に只一人だけである。
誰かが変装をしようにも、黒髪黒目という特殊な外見をした悠斗を真似るのは不可能に近い。
「……分からない。ただ、キミは先程アタシの体を触ってきたユートくんとは別人な気がするんだ」
ラッセンの言葉を聞いた悠斗は考えを改める。
たしかに現在起こっている不可思議な現象は、『もう1人の自分』が意図的に悪事を働いていると納得できる部分があった。
物理的な変装は不可能でも、特殊な《固有能力》を使用しているというケースも考えられる。
「ラッセンさん! 信じてくれるんですね! ようやくデレ期に入ったんですね!?」
嬉しかった。
詳細は分からないが、偽物の自分は相当精緻な変装を施している可能性が高い。
にもかかわらず一瞬で本物だと信じてくれたのは、偏に愛の賜物だと考えたのである。
「いや。それは違う。先程出会ったユートくんの左肩はアタシが銃で打ち抜いている。だからこそ、この短期間で傷口が治っているのが信じられないのだ」
いくら体を触ってきたからと言って相手に発砲したりするだろうか。
(ほ、本当にこの人は俺のことを信用していたのだろうか?)
一歩間違えていたら打ち抜かれていたのは自分だったかもしれない。
今後ラッセンには絶対にセクハラしないでおこうと悠斗は心に誓う。
「見つけたぞ! お前が偽物のオイラだな!」
黒宝の指輪@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆
(他人が所持する《魔眼》スキルの効果を無力化する)
聞き覚えのある声に反応して目を向けた悠斗は絶句した。
何故ならば――。
そこにいたのは自分と完全にウリ二つの――『もう1人の自分』としか形容できない人物だったからである。
「どういうことだ……? やはりユートくんが2人!? ユートくん。キミはどこかで分裂したとでもいうのか!?」
「違いますよ。見て下さい。アイツの肩からは血が出ています」
偽物の悠斗の肩からは出血の痕跡があった。
回復魔法で処置を施したのだろうが、着ている服にはベッタリと血液が付着していた。
「なるほどな。そういうわけか。『本物の』ユートくん。先程は唐突に殴ってしまい、すまかった。このことは1つ貸しにしておいてくれないだろうか」
「いえ。いいんです。ラッセンさんのおかげで偽物が判明したのは確かですから」
そうこうしている内に悠斗の背中を追ってきた住民たちが到着する。
「どういうことだ? 兄ちゃんが2人いるだと……!?」
「アドルフさん。違いますよ。あの肩に血が付着している俺は偽物の俺です! 今回の騒ぎは全てのアイツが起こしたものだったんですよ!」
「う~む。たしかにアイテムだけを見ると、こっちの兄ちゃんが本物に見える。本物の兄ちゃんが身に着けていたのは『黒宝の首飾り』だ。向こうの兄ちゃんが装備しているのは、『黒宝の指輪』だもんなぁ……」
希少価値が高く、個人情報を守るために重要な役割を果たす『黒宝装備』は、滅多なことでは手に入らないことで知られていた。
どうやら偽悠斗は、他の装備は真似できても『黒宝の首飾り』までは用意することができなかったみたいである。
「アドルフさん! 違いますよ! 本物のユートはオイラです! 偽物の言葉には惑わされないで下さい!」
「いい加減にしろよ偽物! そんなに言うなら証拠を見せてみろよ!」
「証拠……証拠ねぇ……。なら、これならどうです?」
不敵に笑う偽悠斗は懐の中から1枚のカードを取り出した。
「なっ……」
悠斗は絶句した。
何故ならば――。
偽悠斗の手に握られていたのは、先日悠斗が紛失したはずのギルドカードだったからである。
「なぁ。偽物さん? あんたが本物だって言うならよ。その証拠にギルドカードを見せてくれよ」
「グッ。そ、それは……」
悠斗のギルドカードは現在エミリアの元で再発行の手続き中である。
ギルドカードを奪われたのは痛かったが、今回の一件で悠斗は、偽悠斗の正体について目星をつけることができた。
昨日のことを思い返して考えてみる。
悠斗に接近してギルドカードを奪うことができた人物というと心当たりは1人しかいない。
「ラッセンさん。1つ聞いて良いでしょうか? ちなみにラッセンさんが触られたのは、体の何処ですか?」
「何故、そのようなことを聞くのだ?」
「いいから答えて下さい。偽悠斗の正体を知るために必要なことなんですっ!」
悠斗の真剣な表情に根負けしたラッセンは、恥ずかしそうに視線を泳がせながらも口を開く。
「尻……だが……」
これでハッキリした。
エナに続いて被害者の共通点が、『尻を触れられた』という部分にあることから偽悠斗の正体はまず《百面相ギリィ》と見て間違いないだろう。 
何故か?
普通の男ならば最初に目が行くのはラッセンの巨乳のはずである。
しかし、偽悠斗はあくまで尻に拘った。
この異様な言動は、執拗なまでにラッセンの尻に拘っていたギリィの性的趣向と一致する。
「――参ったな。身に着けている装備で考えると右側の兄ちゃんが本物だが、ギルドカードを持っているのは左側の兄ちゃんだ。これは本格的にどちらが本物か分からなくなってきたぞ……」
対照的に周囲に集まった人間たちは、どちらが本物の悠斗か見極めることが出来ずに困惑していた。
「本物を見極める方法が1つだけあるぜ」
「なにっ。それは本当か!?」
不敵な笑顔を零しながらも偽悠斗は言う。
「ああ。本物のコノエ・ユウトは冒険者として他の追随を許さない実力を持っている。だからオイラとお前、どちらかが強いかで決着を付ければいいんだよ」
「直接対決っていうなら話は早い。その提案、乗らせてもらうぜ」
「まぁ、そうせくなよ。せっかくだから《岩山の洞窟》でどっちが多くのオーガを倒せるかで競おうぜ。それなら冒険者ギルドに貢献もできて一石二鳥だろ」
「…………」
ここで偽悠斗の提案を無視して殴りかかるのは簡単である。
しかし、その場合、果たして周囲の人間たちは、自分が本物であると認めてくれるのだろうか?
最悪の場合、卑怯者と揶揄されて、周囲の反感を買う可能性もある。
「――分かった。その条件、呑んでやるよ」
これまでの悪評を完全に消し去るのは、相手の提示した条件で勝利する方が確実だろう。
そう判断した悠斗は、不本意ながらも偽悠斗の提案を受け入れるのであった。
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