異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

VS タナトス3



「フハハハ! 小僧! 先程までの威勢はどうした!?」

「…………」

 それから。
 なかなか反撃の糸口を掴むことができない悠斗は防戦を強いられていた。

 不死王タナトスは、トライワイドに召喚されてから悠斗がこれまで戦った相手の中でも過去最強と呼べる存在である。

 戦闘に適した固有能力である《魂創造》&《影縫》のコンボ攻撃には、悠斗に反撃の機会を与えない。


「ユートさん……!?」


 自身が生み出したグールごと切り裂く豪快な一撃は、ジリジリと悠斗のことを追い詰めていく。

 体に付けられた傷も1つや2ではない。

 ルナの目から見ると、悠斗が受けたダメージは既に立っていられるのが不思議なくらいのものであった。


「これで終わりじゃぁぁぁぁああああ!」


 自身の優勢を確認したタナトスは、手にした巨大鎌を大きく振って止めを刺しにいく。


「グッ……」


 辛くも攻撃を受け止めた悠斗であるが、既に鎌は悠斗の脇腹に深く食い込んでいた。

 どこか内臓を痛めたのだろうか?
 悠斗は喉から湧き上がる血をグッと飲み込んだ。

 だがしかし。
 ここまでは悠斗の計算通り。

 作戦が上手く行ったことを悟った悠斗は俯きながらも笑みを零す。


「……どうした? 苦痛で頭が狂ったか?」

「ハハッ。肉を斬らせて骨を断つって言うのは……まさにこのことだな」

「貴様……何を言って……」


 タナトスが悠斗の口にした言葉を理解したのは直後のことである。


「なっ……重……っ」


 先程までは振り回すことが出来ていたはずの鎌を持ち上げることが出来ない。

 それもそのはず――。
 悠斗は攻撃を受ける替わりに対象の重量を上げる――取得したばかりのレクトの魔法をタナトスの鎌に使用していたのであった。


 レクト
(対象の重量を上げる魔法)


 この隙を悠斗は見逃さない。


《破鬼》。


 鬼拳により身体能力を上げた状態で破拳を打つというこの技は、単純な威力だけで考えれば悠斗の所持する技のだけで最大と言っても過言ではないものである。

 振り下ろすように放たれた《破鬼》は、タナトスの体を深く地面にめり込ませる。


「ぐご! ぐごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 直後、タナトスの口から出たのは断末魔の悲鳴であった。
 破鬼による衝撃はタナトスの全身を駆け巡り、その肉体を粉々に砕いていく。



「まさか……このワシが! いずれ魔王として世界に名を馳せるはずだったワシが……こんなところで……!」


 今から約500年前――。
 1万を超えるグールを率いてトライワイドに君臨していたタナトスは、《七つの大罪》に肩を並べるほどの力を持っていた。

 かつて最強の座を恣にしていたタナトスの敗因は二つある。

 1つは500年越しの封印から目覚めたばかりのタナトスは、己の力を限界まで引き出せるほどのコンディションになかったこと。

 2つは魔族すら凌駕する戦闘能力を秘めた奇跡の少年と出会ってしまったことである。

 悠斗はそこで自らのステータスを確認する。


 近衛悠斗
 固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進 魔力精製 魂創造
 魔法  : 火魔法 LV4(12/40)
       水魔法 LV6(10/60)
       風魔法 LV5(4/50)
       聖魔法 LV2(5/20)
       呪魔法 LV6(3/60) 
 特性  : 火耐性 LV3(19/30)
       水耐性 LV3(0/30)
       風耐性 LV4(6/40)


 ステータスの固有能力の欄に新しく《魂創造》の項目が追加されていた。

 タナトスが倒れるのと同じタイミングで周囲にいたグールたちは魂を失いバタバタと地面に倒れて行くことになる。

 取得していたスキルに《影縫》の項目がなかったことから察するに、相手の固有能力が2つ以上保有していた場合――《能力略奪》で奪えるスキルは同時に1つまでであるらしい。


(ふぅ……。ようやく勝てたかぁ)


 悠斗としては最も勝てる可能性の高い作戦を選んだつもりだったのだが――。
 検証作業を済ませていない魔法を使用してしまった今回の戦闘は、あまり気持ちの良い勝ち方とは言えなかった。

 ドッと体に疲れを感じた悠斗は、回復魔法の《ヒール》を使用しながらも地面に片膝をつく。


(そういえばこの骸骨……一体何者だったのだろう??)


 既に粉々になってしまったタナトスの骨を見下ろしながらも、悠斗はそんなことを思うのであった。






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