異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

洞穴探索



「よし。この辺りのグールは一通りやっつけたかな」

 それから。
 悠斗のグール討伐任務は普段以上にハイペースで進んで行くことになる。

 それと言うのも今回の依頼はギルドから受けたものと違って討伐証明部位を剥ぎ取る必要がない。

 倒した魔物は放置して次の魔物と戦うことが出来るからである。

 1つ気になったのは、これだけ歩き回ってもルナの姿を何処にも見つけられなかったという点である。

 グールたちは生きた人間を巣に持ち帰る習性があるという情報も入ってきているので、ルナのことが心配である。


「ご主人さま! あの中から凄い数のグールの臭いがします!」

「……なんだって?」


 暫くグールを探していると、スピカは剥き出しになっている岩壁に出来た洞穴を指差しながらも声を上げる。

 その洞穴は直径およそ1メートルくらい。
 身を屈めれば何とか入ることが出来るかという小さなものであった。


「……なるほど。つまりはこの中がグールの巣ってわけか」


 中に入れば捕まった村人たちを助けることが出来るかもしれない。
 依頼を完遂するにあたりこの洞穴は、無視することが出来なそうである。


「主君! そこの木の枝を見てくれ!」


 シルフィアに指摘されて、視線を移すと、洞穴の近くの木に見覚えのある色合いの布が結び付けられていた。

「あれは……ルナさんが来ている服と同じものでしょうか。あの布からは少しだけルナさんの匂いがします」

「なるほど。つまりルナが洞穴に入る時に目印を作ったということか」

 洞穴の木に結び付けられた布は、ルナが着ている忍者装束と同じ色をしていた。

 このとき悠斗は知らないでいたのだが――。

 魔物の住んでいる洞窟を探索する際に匂いの染みついた衣服の一部を残しておくのは、冒険者が自らの生存率を上げるための手段の1つとして知られていた。


「よし。そうと決まったらさっそく中を探索しようか」


 ギルドから受け取った《初心者支援セット》には、暗闇を照らすことの出来る魔石が入れられていた。

 悠斗は魔法のバッグの中から魔石を取り出してスピカ&シルフィアに手渡すと、洞穴の中に入っいく。


 ~~~~~~~~~~~~


 グールの巣である洞穴の中は悠斗が想像していたよりも広く、入り組んでいたものであった。

 悠斗は足場の悪い道を降りて洞穴の奥に歩みを進める。

 先に入ったルナが討伐したのだろう。
 道中には時折、首を斬られたグールの死体が転がっていた。


 悠斗はそこで改めてステータスを確認する。


 近衛悠斗
 固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進 魔力精製
 魔法  : 火魔法 LV4(12/40)
       水魔法 LV6(10/60)
       風魔法 LV5(4/50)
       聖魔法 LV2(5/20)
       呪魔法 LV5(6/50)
 特性  : 火耐性 LV3(19/30)
       水耐性 LV3(0/30)
       風耐性 LV4(6/40)


 洞穴の中には住んでいたグールは思っていた以上に多く、悠斗の呪魔法は急速に成長していくことになった。


 呪魔法 LV5
 使用可能魔法 ルード ラクト レクト

 ルード
(対象の性的感度を上昇させる魔法)

 ラクト
(対象の重量を下げる魔法)

 レクト
(対象の重量を上げる魔法)


 呪魔法のレベルが上昇したことによって新しく使用できる魔法が追加されていた。

 対象の重量を上げるレクトの魔法は、以前に取得したラクトの魔法と正反対の性質を持っているらしい。

 ルードを始めとして、呪魔法には悠斗の気を引く種類のものが多い。

 屋敷に戻ったら直ぐにでもレクトの魔法の検証作業を始めたいところであった。


「ん。ここで行き止まりか」


 それから暫く歩くと、悠斗の目の前には高く聳え立つ壁が出現する。

 何処かでルートの選択を誤ったのだろうか?
 悠斗の眼にはこれ以上は先に進めないように見えた。

「いいえ。ご主人さま。どうやら壁を登れば道があるようです。上の方からルナさんの匂いがします」

「なるほど。上か」

 全ての格闘技の長所を相乗させることをコンセプトとした《近衛流體術》を習得した悠斗は、《ロッククライミング》の技術にも精通していた。

 幼くして《ロッククライミング》を極めた悠斗にとっては、この程度の高さの壁を登ることは造作もないことである。

「スピカ。シルフィア。お前たちが先に登ってみろよ。俺は後から付いていくからさ」

「ふむ。それは構わないが……意外だな。てっきり主君は何かに付けて先に進みたがるタイプだと思っていたのだが」

「まあな。普段ならそうなんだけど今回は別なんだよ。お前たちが落ちてケガをする可能性もあるだろう? 俺が後から行けば、二人が落ちた時に受け止めてやれると思うんだ」

 キリッとした凛々しい顔つきで悠斗は答える。


「ご、ご主人さま……。そこまで私たちのことを考えて……!?」

「恐れ入ったぞ。主君の持つ慈愛の心は、天上に住まう女神たちの域に達しているだろうな……」


 悠斗の言葉に感動を覚えたスピカ&シルフィアは、ジンと瞳を潤ませる。

「分かりました。それではこの不肖スピカ・ブルーネル! 先陣を切って登らせて頂きます!」

「ふむ。それではスピカ殿の後続は私が務めることにしよう」

「ああ。いってこい」

 自分の思い通りに事を運んだことを確認した悠斗は、二人の見えないところで黒い笑みを浮かべる。

 悠斗が二人を先に行かせた理由には、彼女たちの怪我を防ぎたいという目的とは別に隠された思惑が存在していた。


(おお。バッチリ見える!)


 悠斗が視線を上げると、先行して壁を登る二人のパンツを確認することが出来た。

 その気になれば何時でも二人から『下着を見せてもらう』よりも凄いことしてもらえる立場にあるのだが、悠斗にとってこういうシチュエーションは別腹であった。

 何故ならば――。
 見せてもらう、と、盗み見る、では嬉しさのベクトルが異なるからである。

 悠斗は岩壁を登ることに集中するあまり、無防備になった二人のスカートの中を眺めていた。

 けれども、その直後。
 悠斗にとって想定外の事態が起こった。


「……きゃっ」


 不運にも脆くなっていた岩壁が掴んでしまったスピカは、バランスを崩して落下してしまう。


「スピカ殿!」


 慌ててスピカを助けと手を伸ばしたシルフィアであったが、彼女の行為は余計に事態を悪化させてしまうものであった。

 足場が不安定な場所で人間の体重を支えることは容易ではなく――。

 仲間を助けようとしたシルフィアはスピカに巻き込まれるような形で落下してしまう。

 流石の悠斗でも足場が不安定な場所で、二人の体を抱きかかえるのは困難を極める。


(それなら!)


 次に悠斗が使用したのは、《風魔法》のウィンドと《呪魔法》のラクトを組み合わせることによって編み出した《飛行魔法》である。

 飛行魔法を使った悠斗は、落下する二人の体を素早くキャッチすることに成功する。

「ケガはないか? 二人とも」

「……す、すまない。恩に着るぞ。主君」

 不覚にも主人に助けられることになったシルフィアは、申し訳ない気持ちと照れくさい気持ちが入り混じった表情を浮かべる。

「……ご主人さま。そもそも飛ぶことが出来るのなら最初から壁を登る必要はなかったのでは?」

「…………」

 シルフィアに比べて勘の鋭いスピカは、ジト目でツッコミを入れるのであった。



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