異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
悪食
「よぉ……。さっきはよくも俺様に恥をかかせてくれたな」
シルバーランクのベテラン冒険者、ロビン・クルーガーは人目の付かない裏路地にいた。
先程の冒険者ギルドでの一件は、ロビンのプライドを傷つけるものであった。
このまま袖にされたまま引き下がるわけにはいかない――。
そう判断したロビンは仲間と共に、ベルゼバブのことを連れ出して、彼女を慰み者にしようと考えたのであった。
「言っておくけど、お前が悪いんだぜ? 大人しく俺のパーティーに入っていれば、せめてもの救いに気持ち良くはしてやったのによぉ」
ベルゼバブを前にしてロビンは下卑た笑みを浮かべる。
ロビンの悪行は、エクスペインの冒険者たちの間では広く知られていることであった。
自分のパーティーに入った女冒険者に対して、乱暴を働いたことは1度や2度ではない。
仲間と共に強姦に及んだ女冒険者は、魔物の群れに放り込み、口封じを行うというのが彼らの常套手段であった。
「えーっとー。もしかしてオジサンたち。これからアタシのことを乱暴なことをしようとしているんですかー?」
ベルゼバブは自らのスカートを捲りあげて、太股を見せながらも挑発的な笑みを零す。
ロビンの仲間たちは興奮で息遣いを荒くする。
「ハハッ。それだけで済むと思ったら大間違いだぜ! お前はこれから俺たちに犯されてから、魔物の餌になって、惨めに一生を終えるんだよ」
「あああっ。もう我慢できねえよ。ロビンさん! なあ、もう始めちまっていいだろう?」
「構わねえが、最初に楽しむのは俺だぜ? まずは手始めにバカみてえに短いスカートをひん剥いてやりな」
異変が起きたのは、ロビンの部下たちが、ベルゼバブに近づこうとした直後であった。
「……はい?」
何が起きているか分からずにロビンは間の抜けた声を上げる。
突如としてロビンの視界は、鮮やかな赤に染まった。
自分の周囲を覆う赤い液体が、部下たちの体から出た血飛沫であることに気付くまでにロビンは幾分の時間を要した。
「……ッ!?」
ロビンは腰に差した剣を抜き、周囲の様子を窺った。
が、上半身を丸々失った部下たちの死体以外に不審な点は何もない。
「あははー。どうしたんですか? アタシに乱暴なことをする予定じゃなかったんですかー?」
コツコツ、と。
学生靴で地面を叩く音を響かせながらも学生服の少女はロビンの元に歩み寄る。
「お前……一体何を……!?」
「残念でした。食べられちゃうのはオジサンたちの方でしたねー」
何か薄気味の悪い気配を覚えて、ロビンがふと視線を上げると、得体の知れない生物が、そこにいた。
「な、な……。何だ、この化物は……!?」
体長はおよそ2メートルくらい。
全身が黒色に塗り潰されたかのようなその生物は、人間とも魔物とも言い難い奇妙な形状をしていた。
上下の唇は縄のように太い糸で何重にも縫われており、口を開くことはできない。
替わりに、腹部には歯の付いた大きな口が存在している。
先程、部下たちを殺したのはこの化物なのだろう。
腹部に開かれた口内からは、ベットリとした赤黒い血が垣間見えた。
目の前の生物の正体が、ベルゼバブの所有するレアリティ、詳細不明の固有能力――。
《悪食》により召喚された魔神であることロビンは知る由もなかった。
「この野郎っ!」
ロビンは意を決して手にした剣で、目の前の魔神に切りかかる。
が、完全に捉えたはずの斬撃は、魔神の体をすり抜けて行くかのように虚しくも空を斬った。
(こいつ……っ!? 実体がないのか……!?)
死の間際にそんなことを思った、ロビンであったが、彼の推理は外れていた。
すり抜けたかのように見えたのは、単純に魔神のスピードが常軌を逸したものであったからである。
「ラヴ。そいつも食べちゃって」
ベルゼバブの言葉に反応した魔神は、腹から開いた大きな口を使ってロビンの体を丸のみにする。
それはおよそ勝負とは言い難い――呆気のない幕切れであった。
シルバーランクの冒険者、ロビン・クルーガーとその仲間たちは、何1つとして反撃する暇もないまま、魔神の餌となった。
「はぁ~。つまんないのぉー。ラヴ。クレープをちょーだい」
主人の命令を受けたラヴは、腹の中にある口内から、クリームのたっぷり入ったクレープを取り出して、ベルゼバブに手渡した。
ベルゼバブの《悪食》は、主人の『ワガママ』を何でも叶えてくれる魔神を召喚する、世にも珍しい効果を持った固有能力である。
叶えられる『ワガママ』については制限がない。
ラヴの口内は異空間と繋がっており、その中から主人が望むものを何でも取り出すことが可能である。
若干15歳にして、この少女が暴食の魔王の名を世襲することが出来たのは、魔族の歴史の中でも史上最強という評価を受けている《悪食》の固有能力の存在が大きかった。
「……と、いけない。アタシはこんなことをしている場合じゃないんだった!」
ベルゼバブは先程の悠斗とのやり取りを思い出し、思わず頬を緩ませる。
生まれながらにして規格外の固有能力を所持していたベルゼバブは、周囲の魔族から恐れられ、ひとりぼっちの生活を送っていた。
幼少の頃より友達と呼べる者はおらず、自らの固有能力で召喚したラヴだけが、彼女の話相手となっていた。
自らの胸が高鳴るを抑えることができない。
ベルゼバブにとって悠斗は、初めて自らのピンチに対して身を挺して庇ってくれた男性であったのだった。
「ふふふ。待っていて下さいね。ユートさま。アタシは必ず貴方のことをモノにしてみせますよ」
周囲に誰もいない街の裏路地にて。
ベルゼバブは1人、不敵な笑みを零すのであった。
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