異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
VS 怠惰の魔王3
悠斗は破拳の反動によりダメージを負った右腕を聖属性のヒールで回復させながらも、昔のことを回想していた。
人間は自身の潜在能力を10パーセントも引き出せていない。
悠斗はとある少年漫画に書いてあったこの理論を、幼い頃より信じていた。
その漫画によれば、人間の脳というのは10パーセントしか使用していないために残りの9割を使うことが出来れば、人間の限界を超えた力を引き出すことが出来るらしいということであった。
けれども。
この説はフィクションの世界だからこそ成り立つ俗説であり、人間が100パーセントの脳を稼働させることなど不可能なことだろう。
ならば、どうすれば人間は眠っている潜在能力を引き出すことができるのか?
そこで悠斗が目を付けたのは、人間の体に刻まれた遺伝子であった。
日常生活の中で人間が『リミッター』を掛けているのは疑いようのない事実である。
人間は自身の『生きようとする本能』には逆らうことが出来ない。
たとえば、自殺志願者が死ぬまで走り続けようと決意をしても、何時か何処かで自分の意思とは無関係に足を止めてしまう。
理性では死にたいと願っていても、本能が生きたいと願ってしまうのである。
悠斗はそこで、人間の遺伝子に刻まれたリミッターである『生存本能』を意図的に解除出来ないかと考えた。
そのために悠斗は、祖父の保有する高層ビルの屋上で毎日『死』と向き合う訓練を行った。
高さ100メートル。
落ちれば間違いなく即死という状況下で悠斗は、毎日鉄棒にぶら下がって懸垂を行った。
1日16時間を懸垂に費やして、終われば死んだように眠る日々。
そんな生活を繰り返す内に何時の間にか悠斗は、次第に『死』を恐れないようになっていた。
極限まで時を圧縮したかようような過酷な訓練により、悠斗の中の生存本能は極限まで希薄なものになって行ったのである。
この訓練を行ってから暫く経った後。
悠斗は任意のタイミングで人間の潜在能力を100パーセントを引き出すことを可能としていた。
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以上が『遺伝子情報の人為的な書き換え』というテーマの小学5年生の夏休みに行った悠斗の自由研究である。
(なに……!? こいつ……いきなりプレッシャーが跳ね上がった……!)
ベルフェゴールは戦慄していた。
何故ならば――。
目の前の少年から放たれる威圧感は、明らかに人間の限界を超えたものであったからである。
《鬼拳》。
戦闘に不要な《生存本能》というリミッターを意図的に解除するこの技を悠斗はそう呼んでいた。
己の身体能力を格段に上昇させるこの技は、使い方を誤れば命を失いかねないキケンな技でもある。
「悪いが、一瞬で終わらせてもらう」
悠斗はそう告げると、ウッドパスカルの近くに接近。
近くにあった蔓の1つを手に取った。
「なっ。お前さん。一体何を……!?」
てっきり先程のように打撃攻撃で正面突破してくるものだとばかり考えていたベルフェゴールは困惑していた。
けれども、その直後。
ベルフェゴールの表情は途端に青ざめたものになる。
「おらあああっ!」
悠斗はウッドパスカルの巨体を力一杯、地面に向かって叩き付ける。
瞬間、轟音。
その一撃により地面はひび割れ大きなクレーターが出現する。
「なにぃぃぃ!?」
大きく地面が揺れてベルフェゴールが腰に巻き付けた酒瓶は落下。
パリンと音を立てて内容物をぶちまける。
「まだまだ!」
悠斗の猛攻は止まらない。
勢いに乗った悠斗は、同じ要領でウッドパスカルの巨体を幾度となく地面に叩き付ける。
通常の人間ならば、体長20メートルを超えるウッドパスカルの巨体を持ち上げるなど到底不可能だろう。
何故ならそれは人間の限界を明らかに超えた、人間の生存本能に逆らう行為だからである。
けれども。
鬼拳によって覚醒した悠斗の肉体は、不可能を可能にして見せていた。
「がっ、がああああっ!」
度重なる攻撃を受けたウッドパスカルは地鳴りのような断末魔を上げる。
しかし、その声も攻撃を繰り返すことで小さくなって行き――。
12回目の攻撃によりウッドパスカルはピクリとも動かなくなった。
すかさずステータス画面を確認。
近衛悠斗
固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進
魔法 : 火魔法 LV3(22/30)
水魔法 LV5(18/50)
風魔法 LV3(20/30)
聖魔法 LV2(5/20)
呪魔法 LV2(18/20)
特性 : 火耐性 LV3(1/30)
水耐性 LV3(0/30)
風耐性 LV4(6/40)
固有能力に《成長促進》が追加されていた。
即ちそれは目の前の敵が既に命を落としていることを意味していた。
「さぁ。雑魚は倒したぜ。次はお前が相手をしてくれるんだろう? ベルフェゴールさんよ」
悠斗が挑発をするとベルフェゴールは舌打ちをする。
「チッ。止めだ止め。今回のところは正直に負けを認めるよ。誰がお前さんみたいな面倒な相手と戦うものかね」
自信がないというわけではない。
が、七つの大罪の内《怠惰》を司るベルフェゴールは、進んで強敵と戦うような性格ではなかった。
「ところでお前さん。これはほんの好奇心なのだが……よければ名前を教えてはもらえないかね?」
「近衛悠斗だ」
「ふむ。コノエ・ユウトか……。500年振りくらいだろうか。久しぶりに面白い人間に出会えたような気がするよ」
ベルフェゴールは独り言のように呟いたの後。
「それではオレはこの辺りでお暇させて貰う。悪いが……これから昼寝の時間なんだわ」
欠伸をしながら悠斗の視界から消え去った。
指定したポイントに自在に移動できる《転移》の固有能力。
魔眼のスキルによりその効果を知っていた悠斗は、ベルフェゴールを追うようなことはしなかった。
「さぁ……。そろそろ俺もスピカたちの元に戻らないとな」
戦いが終わり鬼拳を解除したそのとき、体の節々に激痛が走る。
(少し……長く使い過ぎたか)
自らの生存本能を破壊することで身体能力を向上させる鬼拳という技は、長時間使用すれば命を落とす可能性もあるキケンな技でもある。
自らの体に後遺症を残さない範囲で維持できる時間はせいぜい3分が限度。
30秒程度でも全身が激しい筋肉痛に見舞われたような症状が起こる。
(この世界で生きて行くためには……もっと強くならなくちゃいけないな……)
今回の一件からそう心に決めた悠斗は、ヨロヨロとした覚束ない足取りでケットシーの村に戻るのであった。
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コメント
ばけねこ
こんな自由研究、先生困っただろうなぁ
理里璃々
前 世 で や れ
でもこういうぶっ飛んだ話は結構好き