異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
VS 異世界人1
「お前か? 村長っていうのは」
現代日本から召喚された青年、田中和也はケットシーの村の長、オリヴィア・ライトウィンドの自宅に乗り込んでいた。
「……いかにも。私がこの村の村長だが」
オリヴィアは努めて平静を取り繕って返事をする。
和也を含めた7人の男たちがオリヴィアの周りを囲んでいた。
男たちは一様にして鋭利なナイフを装備している。
その双眸は欲望にまみれ、血走ったものであった。
「取引をしよう。この村はすでに俺の部下である30人の男たちが占領している。俺が欲しいのは、この村にある全ての資産と、魔物使いとしての適性を持った女だけだ。それさえ渡すっていうのなら、村人の命は助けてやらないこともない」
和也の提案を受けたオリヴィアは口を噤む。
取引に応じたとして、目の前の男たちが約束を守るとは到底思えなかった。
そして不幸なことにオリヴィアの予想は的中していた。
和也たち《緋色の歪》の男衆は、性奴隷になりそうな少女がいれば攫うし、邪魔するものが容赦なく斬り伏せる。
オリヴィアとの口約束など、最初から守るつもりはなかった。
「……悪いが、今直ぐに返事が出来ない。少し考える時間をくれないか?」
考えた末にオリヴィアが導き出した最善の行動は『返事を先延ばしにする』ということであった。
とにかく今は1秒でも長く和也をこの場に留めておくことが、結果的に村人たちの命を救うと判断したのである。
「なるほどな。頭の良い女は嫌いじゃないぜ」
オリヴィアの思惑に気付いた和也は下賤な笑みを浮かべる。
「いいだろう。俺たちの暇つぶしに付き合ってくれるっていうんなら、お前の要求を呑んでやろう」
「暇つぶし……だと……!?」
予想外の言葉を受けたオリヴィアは思わずその顔をしかめる。
「なあに。難しいことはない。ちょっとした余興だよ。お前は今から俺たちの前で1枚ずつ服を脱いで行くんだ。服を脱いでいる間は、お前の望んでいる考える時間ってやつをくれてやろう」
「…………ッ」
和也の提案はオリヴィアにとって当然、受け入れがたいものがあった。
けれども。
男たちの注意が自分に集めれば、それだけ村人たちが助かる可能性が高くなる。
「分かった。その要求を受け入れよう」
自分が肌を晒すことで1人でも多くの仲間の命を救うことに繋がるなら――。
そう判断したオリヴィアは、出来るだけ時間をかけながらも自らの上着を1枚、脱ぎ去った。
真紅の下着に包まれた乳房が露わになる。
瞬間、男たちの下卑た歓声が上がった。
「どうした。ほら。次だ」
和也に催促されたオリヴィアは自らのスカートに手をかける。
オリヴィアがスカートをずり下ろし、盗賊たちの視線が彼女の下半身に集中していたそのときであった。
バリバリバリッっと。
部屋の中にガラス窓の砕ける音が響き渡る。
突如として野球ボールサイズの氷の塊が、盗賊たちに向かって次々に強襲した。
「グハッ!」
「フギッ!」
「フゴッ!」
頭部に強い衝撃を受けた男たちは、鈍い叫喚を上げて意識を喪失する。
その場にいた誰よりも早く危機を察知した和也は、咄嗟に身を伏せて氷塊による攻撃を回避する。
けれども。
思い掛けない奇襲攻撃を受けた部下の盗賊たちは、完全に伸びていた。
「何もんだ!?」
和也が目をやると窓の外からは1人の少年の姿が見えた。
「良い女が人前で肌を晒すんじゃねーよ。そういうのは俺の処女厨センサーにビンビン引っかかるんだ」
「君は……!?」
オリヴィアは驚愕した。
そこにいたのは先日、ケットシーの村に来訪してきたばかりの幼い少年であったからだ。
田中和也
種族:ヒューマ
職業:盗賊頭
固有能力:獣化
獣化@レア度 ☆☆☆☆☆
(自身の身体の一部を獣に変化させる力。使用中は体力の消耗が増加する)
魔眼のスキルにより和也のステータス画面を確認した悠斗は、目の前の人間が冒険者ギルドで指名手配中の男であることを確認する。
「オッサン。ちょっくら俺とキャッチボールでもしようぜ」
悠斗は挑発的な笑みを浮かべた後、思い切り氷塊を投げつける。
スリークォーターのフォームから放たれた氷の塊は、150キロ近い速度により和也の顔面を強襲する。
けれども。
驚いたことに和也は、右腕1つで氷塊をガードする。
獣化の固有能力を使用した和也は、人間の限界を超えた反射神経を身に付けていた。
「……チッ。舐めやがって」
忌々しく呟く和也の全身は狼男、としか形容できないものに変貌していた。
その体躯は優に3メートルを超えているだろう。
赤褐色の体毛に覆われた和也の容貌は、人間とも魔物とも言えない、薄気味の悪いものであった。
(この男……獣化のスキルホルダーか……!?)
オリヴィアは外気に晒された乳房を両手で隠しながらも、突如として目の前に現れた狼男に対して恐怖を抱いていた。
けれども。
相手の変身を悠長に待っているほど悠斗は御人好しではない。
「……ウグッ」
悠斗は臆すことなく氷矢を投擲。
間髪入れずに放たれた氷矢は和也の右脚に命中する。
「ほら。かかってこいよ。田中のオッサン」
「コノヤロウ。ざけやがって……!」
この時点で既に和也は、怒りで我を失っていた。
下着姿の美女には目もくれず殺気の籠った眼光は、悠斗1人に向けられている。
背を向けて立ち去ろうとすると、和也は獣化の力によって脚力で悠斗の後を追いかける。
(……よし。ここまでは作戦通りだな)
首尾よく想い通りに事を運んだ悠斗は思わず笑みを浮かべる。
元より悠斗が望んでいたのは、和也との1対1の対話であった。
けれども。
日本人同士が互いのことを話すためには、人目の付かない場所に和也のことを誘導する必要があったのである。
「ユウト君。一体キミは……何者なんだ……?」
自らの胸の動悸を抑えることが出来ない。
絶体絶命の窮地を救ってくれた悠斗に対して、オリヴィアは熱っぽい眼差しを向けていた。
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