異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

新しい狩場に行ってみよう



「おはようございます。ご主人さま」

「おはよう。スピカ」

 悠斗は軽く関節を伸ばして、体の調子を確かめることにした。
 魔法の訓練で消費した体力は1晩で全回復している。

 昨日までは足にあった違和感もスッキリと治っていた。

 今日からは討伐クエストを再開して行くことにしよう。
 そう判断した悠斗は、スピカと共に冒険者ギルドに向かうのであった。


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「おはようございます。ユウトさまのQRは5に昇格しています。本日から新たに受注が可能になったクエストをご覧になられますか?」

「はい。お願いします」

 悠斗が肯定するとエミリアは分厚い冊子を捲る。


☆討伐系クエスト


●シザークラブの討伐

 必要QR3
 成功条件:シザークラブを10匹討伐すること
 成功報酬:600リア&20QP
 繰り返し:可



●コボルトの討伐

 必要QR5
 成功条件:コボルトを10匹討伐すること
 成功報酬:800リア&30QP
 繰り返し:可


 QRが5に昇格したことにより報酬額の高い討伐クエストが増えていた。
 特にこのコボルトという魔物の成功報酬は魅力的である。

 初期のスライムと比べて報酬額は4倍にまで跳ね上がっていた。


(しかし、いきなりランク5のクエストに向かうのは考えものだな)


 ランク2のフェアリーとランク3のシザークラブの討伐クエストが終わっていないので、まずはそちらを済ませるのが先決だろう。
 難易度については段階を踏んでステップアップして行きたい。

 幸いなことにフェアリー・シザークラブ。
 そして未だに遭遇経験のなかったグリーンスライムは《オルレアンの森林》という地域に生息しているらしい。

 悠斗は地図を片手にオルレアンの森林(初級)に向かうのであった。


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 オルレアンの森林(初級)は、エクスペインの街から徒歩で60分ほどの距離に存在していた。
 傾斜がない分、ラグール山脈(初級)と比べて、移動時の体力的な負担は少なそうである。

「ご主人さま! さっそく何かの魔物の臭いがします。嗅いだことのない臭いなので流石に種類までは分かりませんが」

「……いや。十分過ぎる。偉いぞ。スピカ」

 木々に覆われたこの地域では、魔物を探すことには骨が折れる。
 スピカの嗅覚には、このエリアでも頼りにすることになりそうであった。


 フェアリー 脅威LV3


 シザークラブ 脅威LV4


 木々の間を掻い潜り視界が開けた場所に出る。

 直後。
 本日の目当ての魔物が2種類同時に現れた。

 フェアリーが3体。
 シザークラブが5体。

 なんとも幸先の良いスタートである。

「ご主人さま。気を付けて下さい。シザークラブは動きこそ速くはないですがそのハサミは、人間の手首くらい訳なく切断するほど強力なものらしいです」

「……ああ。あのハサミはいかにもヤバそうだな」

 シザークラブは体長60センチほどの蟹であった。
 そのハサミは右側の部分だけが異様に発達していた。

「フェアリーは直接的な戦闘能力こそ低いですが、後衛で魔物を回復させることがあるらしいです。近づくと逃げてしまうので遠くから弓で討伐するのが有効らしいです」

「……逃げる? そういうタイプの魔物もいるのか。スピカは物知りだな」

「いえ。全てこの冒険者ギルドで受け取った小冊子に書いてある情報なのですが……」

「…………」

「ご主人さま。もしかしてこれまでキチンと目を通さないで討伐を?」

 悠斗はどちらかと言うと説明書を読まないでゲームを進めるタイプの人間であった。

 付け加えて言うと――。
 スピカと一緒に冒険するようになってからの悠斗は、討伐クエストで苦労した経験がなかったので情報収集を行う必要がなかったのである。


「まあ、そんなことより今は目の前の敵に集中だ!」


 悠斗は露骨に話題を逸らしてお茶を濁すことにした。
 妖精と言えば聞こえが良いが、目の前の敵は断じてそんな可愛いものではない。

 フェアリーは人間の顔に蜂の体を足したかのような体長30センチほどの魔物であった。


(これまでは特に計画性なく戦ってきたが……今後は戦略的な立ち回りが要求されそうだな)


 RPGで培った経験から判断するに、こういう場合は後衛の回復役から叩くのがベストだろう。

 そう判断した悠斗は、鞘の中からロングソードを抜くとフェアリーに向けて走り出す。

 しかし、その直後。
 後衛のフェアリーたちを守るために悠斗の行く手を5匹のシザークラブが塞いだ。


「ぬお! 邪魔だ! コノヤロウ!」


 そんなことはお構いなしに悠斗はフェアリーに向けて突進する。
 悠斗は邪魔する敵をロングソードで薙ぎ払う。

 シザークラブたちは悠斗の一撃によって蹴散らされ――そのまま直線上に吹き飛んだ。

 勢い良く周囲の木に衝突したシザークラブはそのまま口から泡を吹いて倒れていた。
 一連の事態から絶望的な戦力差を悟ったフェアリーたちは、それぞれバラバラの方向に向けて逃げ始める。


「おら。待てよ! コラ!」


 悠斗は逃げるフェアリーを追って1匹目のフェアリーを背中から袈裟斬りにする。

 1匹目のフェアリーが息絶えた頃には――。
 既に2匹のフェアリーは悠斗との距離を20メートルほどは離していた。

 走って追いかけては、スピカのことを1人にしてしまうかもしれないと判断した悠斗は、手にしたロングソードを投擲。

 当然のことながらロングソードは投擲用に作られた武器ではない。

 けれども。
 精密機械のようなコントロールを有する悠斗の一投は、確かにフェアリーの背中を捉え、串刺しにすることに成功した。


「すまん。スピカ。せっかく見つけてくれたのに1匹逃しちまった」


 3匹目のフェアリーは既に悠斗たちの前からその姿を消していた。

「……い、いえ」

 スピカは理不尽過ぎる悠斗の強さを目の当たりにして呆然としていた。

 そもそもの前提からして。
 強靭な外殻を持ったシザークラブという魔物は、一撃で倒せるような魔物ではない。

 ギルドから受け取った小冊子には『シザークラブは斬撃耐性に優れているが、打撃耐性が低いため、鉄槌を持った前衛が2人以上で戦うことを推奨』との記述があるくらいである。

 それをまるで紙屑でも千切るが如き速度により、ロングソード1本で蹴散らして行く悠斗の戦闘能力は明らかに異常なものであった。

 更に言えば。

 フェアリーは人間のスピードでは絶対に追いつけないため。
 弓による遠距離からの討伐が推奨されている魔物であった。

 生身の状態で追いかけて背中を切り裂くなんて芸当ができるのは、悠斗くらいのものなのではないかとスピカは思う。


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「ご主人さまの戦い方は……何もかもが滅茶苦茶過ぎます……」

 本日の冒険を終えたスピカは思わずそんな台詞を口にする。
 その言葉は彼女の心からの本音であった。


 シザークラブ   ×31体
 フェアリー    ×15体
 グリーンスライム ×24体


 今日一日で倒した魔物の数である。

 このような経緯を経て。
 悠斗たちはこの日も大量に魔物を討伐することに成功する。

 能力略奪スキルテイカーによる成果が楽しみであった。




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