皇女伝説

天月 ゆめの

夢の中で

フッと目を開けると周りは煌びやかな部屋だった。

「ここは...?私は寝てたはず...」
辺りを見渡すと美しい女性がいた。シンプルだが美しい刺繍がしてあるドレスを着ている。見るからに身分が高そうだ。

「セレーネ。わたくしの可愛い子。あなたは五大妖精王に愛される稀有な子。辛い思いをさせてしまうわね...ごめんなさい。」

そう言って女性は抱いている赤子を抱きしめ一筋の涙を流した。

「この女の人は誰なんだろう...赤ちゃんのお母さんなのかな...」

夢としてはリアル過ぎるなと思いながら静かに女性の様子を見ていた私はあれ?と思った。

「今、あの女の人赤ちゃんをセレーネって呼んでた...もしかして私?」

皇女として生まれたセレーネなら幼い頃にこんな部屋で過ごしていてもおかしくは無い。

「私...ってことはここは王宮?あの人はお母さん?」

確証はないのよ...と逸るはやる気持ちを抑えつつ、私は母娘を見守る。
女性が赤子をベットへ戻した時、扉を勢いよく開けて少年が入ってきた。まだ5歳程の幼い子だが、身に付けている服は豪華な服だ。

「あれは...シエル皇子様?小さいけど...」

シエル皇子の小さい頃なんて知らない。だが、顔が似ている。
もし、あの男の子がシエル皇子なら、これは夢じゃなくて過去の記憶?

「母上様!!敵国の刺客が潜入した様です。」
「陛下!!クリアーヌ帝国からの刺客が入り込んだ模様です。この部屋から出ないようお願い致します!」

シエル皇子に似た少年が、刺客が入ってきた事を女性に告げると同時に、鎧を着た騎士が部屋に慌てた様子で入ってきた。

「分かった。この部屋で2人を守ろう。そなたは持ち場に戻れ。」
「はっ!!」

陛下と呼ばれた女性は、騎士に向かい命じた。騎士が部屋から出ていくと女性はセレーネを抱き上げ

「シエル、よく報告してくれましたね。落ち着くまでここで母と一緒にいましょうね。」

と、先ほど騎士に命じた口調とは打って変わった優しい声で少年に話しかけた。

「シエルって言った!!やっぱりあの男の子はシエル皇子様で、あの赤ちゃんは私。そして、あの女の人はお母さん...」

初めて見た母の姿と、小さい頃に親からしっかり愛されていたという事実に安心し、私の目から涙が溢れた。

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