失恋物語《ストラテジー》

美浜

第6話  面倒くさい新聞部員

 急ぎ足で学校まで来た俺たちは、校門を通ると無言でお互いの教室へと向かった。

 靴を履き替え廊下を歩いていると、ちょっと後ろの方から声をかけられる。


「おーい、加賀見かがみー」

 無視した。

 今は一人でいたい気分なので、タイミングが悪い時に話しかけてきたのが悪い。


「ちょ、無視かよ。なんだ? 彼女となんかあったのか?」


 図星を突かれた。

 だけど、ここで動じてはならない。
 
 動揺した素振りを見せると、新聞部である彼は、根掘り葉掘り聞いてきて、とてもめんどくさい。(体験談)

 どうやって質問攻めを回避するか······。

 逃げたところで同じクラスだから先延ばしにしかならないし万事休すか、と思ったけど、俺のクラスの扉から見知らぬ女性······いや、よく見るとこいつは······。


「あれ? 優人君?」


 ちょうどこちらの存在に気付いたのか、俺と目が合うといつもの笑みでこちらに向かってくる。
 だけど、その歩みは途中で遮られた。


西園寺さいおんじ先生。次の場所に行きましょう」


 全校集会などでよく見かける教頭先生が彼女を呼ぶ。
 すると彼女は歩みを止め、教頭先生の方に体を向ける。


「あ、はい。すぐ行きます」


 慌てて返事をすると一旦こちらに顔だけを向けた。


「ちょっとごめんね。今、忙しくて」


 そう言ってそそくさと教頭先生の元へ向かう。


「次会ったらまたお話しようね」


 彼女の誘いに俺は無視するという形で返事をした。

 今日の俺は一人でいたかったのに加えて、彼女に出会ってしまったことでさらに憂鬱な気分となった。


「おいおいなんだ加賀見。お前彼女がいるのに他の女にも手を出したのか?」

「······」


 俺が無言で睨み付けると新聞部員はおずおずと下がっていく。


「おい、なんか顔が怖いぞ」


 知らず知らずの内に顔が強張っていたらしい。
 
(はぁ、朝からこんな調子だと気が重いな。それに、なんであいつがここに居たんだ?)


 俺の疑問は遂には晴れることがなかった。






 


 
 


 

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